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布施明 シングルミニレビュー〜70年代後半編PART2

引き続き布施明のシングルレビューです。PART1はこちら

最近、当時の映像なんかをYouTubeあたりで見たりして気付いたんだけど、これから紹介する70年代後半の曲が今ひとつパッとしなかったのは、ひとえに‘歌う時のビジュアル’が原因だったのではないかと。
例えばジュリーやヒデキ、ヒロミは、派手なアクションや振り付けを取り入れて‘TV映え’するパフォーマンスを見せてたけど、布施さんや野口五郎なんかは基本、直立不動でハンドマイク。なんか古い感じがしてもしょうがない。

でも、ギターを持てばそうじゃない。やっぱり弾き語りはカッコいいからね。ゴローだって、ギターを持って歌った「真夏の夜の夢」はヒットしたじゃない。

そんな観点からも、後半のレビュースタート。

旅愁-斑鳩にて

旅愁-斑鳩にて-
1977年リリース。
最初ラジオで聴いたとき、正直ヘンな曲だと思った。なんかビミョー。
歌謡曲なのかフォークなのかニューミュージックなのか。
でも聴いてるうちにだんだん好きになってきて。
なんと言っても作詞が松本隆。上手いです。情景描写とか時間の流れとか。でも正直、誰をターゲットにしてるのかがよくわからない。そういう意味では、布施明にしか歌えない曲。
ちなみにB面の「水彩画のような人」も、いいのか悪いのかなんか妙なメロディー。
でも、やはり松本隆の手による歌詞が素晴らしい。後の「ルビーの指輪」にも通じる、映画のラストシーンのような見事な手管。いろいろと勉強になります。

今夜は気取って

今夜は気取って
出ました。隠れた名曲。カッコいいんだってば。でもジャンルは謎。敢えて言えばAORな歌謡曲。何せ作曲は外人ですからね。で、詩は布施さんご自身。良いです。女性観とか恋愛感とか、ちゃんと首尾一貫してます。アレンジは駆け出しの頃の林哲司。出世作だとか。いい仕事してます。
でもこの曲、テレビで歌ってるの、見たことがないんですね。で、最近になってYouTubeで当時の映像を見たら、ハンドマイクで歌ってた。ダメだって、エレキギターを持つか、せめてスタンドマイクじゃないと。
B面がまた、ね。女心を歌ったドラマティックないい曲なんだ。これも詩は布施さん。作曲は宮川泰先生。スタンダードな香りがします。
で、この時発売されたアルバム「今夜は気取ってみたらいい」が、これまたAOR歌謡曲の名盤なんだ。CD化を熱烈希望。
あ、ジャケットもめちゃくちゃカッコいい。ぜひこれはヒットしてほしかった。

君の歌がきこえる

君の歌がきこえる/負けちゃいけないよ
前作での編曲の仕事ぶりが認められて、両面とも作曲・編曲に林哲司がクレジット。作詞は布施さん。まさに「布施明によってしか成立しない」世界。
ちょっと大人の女性がターゲットで、男にとっても共感できるところがあって、非常に質の高いカップリングのシングルだと思う。もっと売れてほしかったけど、今から思えば、「布施明」というブランドコンセプトへの詰めが、まだまだ甘かったのかもしれないですね。

めぐり逢い紡いで

めぐり逢い紡いで
前2曲が成功しなかったせいか、いきなりの路線変更。作詞作曲は大塚博堂。
正直、この曲は好きじゃない。なんか演歌っぽいやん。当時かなりがっかりして、シングルを買おうかどうか随分迷ったけど、買って良かった。B面の「かもめよ」が素晴らしい。作詞作曲は布施明。ちょっとジャジーで、かつフレンチっぽくもある、オシャレな名曲。これこそが、布施明ですよ。B面ばっかり聴いてたなあ。
そんなんで、ほとんどA面は聴いてないんだけど、最近久しぶりに聞いて、布施さんの歌唱テクニックに随分驚かされた。なるほど、布施さんがこの曲をよく取り上げて歌う理由がわかる気がした。

君は薔薇より美しい

君は薔薇より美しい
1979年リリース。
僕が言うのも変だけど、この曲のプロデューサーには感謝の言葉も無い。
化粧品のCMソングという、究極のオシャレ最先端なプロジェクトに、前作であんな野暮ったい歌を歌ってた布施さんをよく起用したなあと。そして、よくゴダイゴとコラボをさせたなあと。
確かにこれだけ難しい曲を歌える人を、布施明以外で見つけるのは困難だけどね。
そしてもうひとつ、この曲が大ヒットした要因は、布施さんがエレキギターを持ってこの曲を歌ったこと。当時中学生だった僕の同級生まで、テレビでこの曲を歌う布施さんがカッコいいと言ってこのシングルを買ってたからね。
この曲で「ザ・ベストテン」に初登場したときの感激は一生忘れないし、今もなお、この曲がCMに使われて色褪せないのも嬉しい。布施明が、そこいらの昭和の熱唱系歌手ではなく、ジャズも歌える粋でモダンなシンガーだと多くの人にわかってもらえたのも嬉しい。

恋のサバイバル

恋のサバイバル
まさかの洋楽カバー。しかもディスコ。狙いはどこにあったのか。
でも、この曲をスタンドマイクで歌う姿はなかなか良かった。ただ個人的には、もうちょっと‘エレキギターを弾きながら歌う’路線でいってほしかった。

305の招待席

305の招待席
非常にナゾな曲。歌詞はものすごくオトナ。ちょっと親と一緒には聴けない。悪い曲とは思わないけど、売れるとも思えないんだけどな。
B面「ホテル・プルメリア」は、前作の流れを汲むディスコナンバー。作詞作曲は布施さん。素直にこっちがA面でよかったように思う。ちなみにアルバムバージョンとは歌詞とアレンジがちょっと違ってて、僕はアルバムの方が好きだな。

カルチェラタンの雪

カルチェラタンの雪
まさに布施明にしか歌えないバラードの難曲。名曲です。このクオリティーなら、売れなくても構わない。いや、売れてほしかったけど。
ジャケットがめちゃくちゃカッコいい。



こうして見ると、「君バラ」がイレギュラーなのであって、70年代後半は、基本はずっと「オトナの歌謡ポップス歌手」というスタイルを作ろうとしてたのだと思う。
しかしできればゴダイゴのように、当時の気鋭の若手ニューミュージックアーティストと積極的にコラボを組んで、‘現役感を出して’チャート入りを目指してほしかったというのは、ファンとしての正直な気持ち。

この頃(70年代後半)の布施明の曲が好きだという方、できれば一報下さい。語り合いましょうよ。


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