見出し画像

看護系学校進学対策⑥(進学資金対策「奨学金と教育ローン」)

進学資金は借りられる
 私は、全国の高校や進学イベントで進路選択について相談に乗ってきましたが、中には「本当は看護師になりたいけれど、経済的な理由で夢を断念せざるを得ない」と漏らしてくる高校生が何人かいました。そうしたときは、必ず「保護者だけに頼らなくても、進学資金は調達できるよ」と言って勇気づけています。
 日本には、進学資金を借りられるさまざまな制度があるにもかかわらず、意外と利用されていないのが現状です。具体的には、奨学金と教育ローンです。簡単に両者の違いを説明すると、こうなります。
・奨学金は、入学後から学生が月々借りて将来的に自分で月々返すもの。
・教育ローンは、保護者が一括で借りて保護者が分割で返すもの。
 違いは三つあります。第一の違いは、借りて返す人です。奨学金は、学校に進学する人、つまり学生が借りて、働くようになったら自分で返すことになります。なお、奨学金の中には、ある条件を満たせば、返さなくてもよいものもあります。この種の奨学金は、後に詳しく説明します。これに対して、教育ローンは、保護者が借りて保護者が返すことになります。
第二の違いは、借りる方法です。奨学金は、学生の口座に月々決められた額が振り込まれます。ただし、条件を満たさなくなったりすると、在学中に月々の振り込みを止められてしまうこともあります。一方、教育ローンは、保護者の口座に借りる金額、例えば二〇〇万円が一括で振り込まれます。返済するのは保護者で、もちろん一括ではなく分割で返すことが可能です。
 第三の違いは、借りられる時期です。奨学金は基本的に看護系の学校に進学した後に支払われます。最も活用されている独立行政法人日本学生支援機構(かつての日本育英会)の奨学金は、早くても入学した後の5月から支払われます。したがって入学前に支払わなければならない入学金や前期授業料に充てることはできません。
 これに対して、教育ローンは入学前にも借りられます。とくに入試が多様化し、早めに合格が決まる総合型選抜(かつてのAO入試)や学校推薦型選抜(かつての推薦入試)では、入学金の支払いに教育ローンを充てることができます。ただし、教育ローンには2~3週間程度の「審査期間」がありますので、もし総合型・学校推薦型選抜(かつてのAO・推薦入試)での合格の後に入学金に充てようとしていたら、入学金の支払い期限には資金が入っているようなスケジュールで申し込みをする必要があります。
 もっともポピュラーな教育ローンは、国民政策金融公庫が扱う「国の教育ローン」です。他のローンに比べ、金利が二パーセント未満ですのでかなり低くてお得です。詳細は、webサイトでお調べください。「国の教育ローン」で検索すると、国民政策金融公庫の窓口が探せますが、URLも示しておきます。
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/ippan.html

5つの奨学金制度
 奨学金と教育ローンの違いは、わかりましたか。では、さまざまな奨学金制度について、詳しく説明します。看護系の学校に進学するために活用できる奨学金制度は、大きく分けると5種類あります。
①日本学生支援機構の奨学金
②地方自治体の奨学金
③民間団体の奨学金
④病院の奨学金
⑤学校の奨学金
 まず、日本学生支援機構の奨学金ですが、これはかつての「日本育英会」の奨学金制度です。利子のかからない「第一種」と利子のかかる「第二種」、さらに返済の義務がない「給付型」の3種類があります。日本の4年制大学の3割~4割の学生が借りています。次に、地方自治体の奨学金は、都道府県や市区町村が貸与するものです。そして、民間団体の奨学金とは、民間企業(株式会社)や公益団体(社団法人、財団法人など)が貸主となる奨学金です。
 さらに、看護師を目指す学生さんには病院からも奨学金が貸与されます。借り方、返し方などは、さまざまですので、後に詳しく述べます。また、大学・短大や専門学校でも所属する学生を対象とした奨学金制度を整備しています。

日本学生支援機構・地方自治体・民間団体の奨学金
 最も利用されている奨学金制度を運営しているのは、日本学生支援機構です。平成30年からは、従来の「貸与型」のみでなく、本格的に「給付型」の奨学金制度も開始されています。「給付型」は、条件が厳しいので、今回は、従来の貸与型(第一種、第二種)についてのみ説明します。
 まず、第一種(無利子)と第二種(有利子)の違いについて。第一種の方が申し込むのにハードルが高くなります。つまり、「保護者の所得が少なく、生徒の成績もよい」といった条件が第二種よりも厳しいのです。具体的な基準は、日本学生支援機構の公式サイトでご確認ください。
 次に申込ですが、高校3年生の春の申込と進学後の申込があります。具体的な手順についても、公式サイトに詳しく示されてありますので、そちらをご覧ください。
 さらに、借りられる金額ですが、第一種の場合「自宅通学か否か」「国公立か否か」といった条件によって異なります。「自宅通学の方が借りられる金額が低く、国公立の方が低い」といった違いがあります。第二種は、月額3万円から12万円まで、さまざまな金額が借りられます。
 最後に、返済方式ですが、こちらもさまざまなパターンが用意されています。月々に支払う金額を高めに設定すれば、短期間で返済できますし、低めに設定すれば長い期間をかけて返すことになります。これらも、次の公式サイトで詳細な金額や回数の違いがわかりますので、ご参照ください。
http://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/index.html


 意外と活用されていないのが、都道府県や市町村など地方自治体が貸与している奨学金です。利用されない大きな理由の一つは、個々の自治体によって制度が異なっているため、調べにくいことでしょう。自治体によっては、「4年間奨学金を支給するが、地元に戻ってきて同じ年数(4年間)看護師として働けば返済しなくてもよい」といった制度を整えているのですが、あまり利用されていなかったりするのです。調べるには、住んでいる自治体のホームページを開いて「奨学金」などのキーワードで検索してみるとよいでしょう。
 また、遺児を対象とした「あしなが育英会」など、民間団体の奨学金制度もあります。これは、専攻する学問や住んでいる地域などによって奨学金を給付または貸与するさまざまな団体がありますので、こまめに調べるしかありません。次の日本学生支援機構の検索サイトを活用すると、民間団体の奨学金についての情報が得られます。
http://www.jasso.go.jp/about/statistics/shogaku_dantaiseido/

病院と進学先の学校が支給する奨学金
 多くの病院が、看護師を目指す人を対象とした奨学金制度を整えています。金額も方式(「貸与か給付か」など)もさまざまです。多くの病院の奨学金制度は、「学校に通った年数をその病院で勤務すると、返済が免除される」といった制度になっています。
例えば、4年生の大学に入学したときから卒業するまで、毎月A病院から奨学金を支給されました。そして、みごと卒業時に国家試験にも合格し、その病院に入職しました。さらに満4年間勤務しました。こうした条件が整えば、返済する義務はなくなるということです。
 こうした制度に対して、「将来の就職先を狭めるよ」と心配する方もいますが、奨学金は基本的には返済するものですので、学生時代に別の医療機関に就職したくなったら、就職して、返済していけばよいのです。誰も働く場を強制的に決めることはできません。
 ただし、入学前にその病院のことをよく知って、「ここを将来の職場としたい」と納得できれば、こうした奨学金制度は積極的に活用してもいいでしょう。
 また、他の学校に比べると看護系の大学・短大・専門学校では、学校自体が入学者に対する奨学金制度を備えているケースが多いです。成績などの条件がありますので、当然学業を疎かにすれば奨学金の支給が停止してしまうこともありますが、「奨学金を受けているからしっかり勉強しなきゃ」と自らを戒めるきっかけにもなります。
 なお、どの学校が奨学金制度を備えているかについては、個々の学校を調べるとわかりますが、民間団体の奨学金制度と同じく日本学生支援機構の検索サイトでも調べられます。
http://www.jasso.go.jp/about/statistics/shogaku_dantaiseido/

ヘルメスゼミ® クロイワ正一

ヘルメスゼミ®

 20年以上看護学校(大学・短大・専門学校)への進学を支援しているオンライン指導専門塾。とくに志望理由書や小論文の書き方指導、面接指導には定評があり、看護の現場を熟知した指導者が、受験生を的確に志望校合格に導いている。『ULTRA小論文(基礎編、看護系実践編)』『AO・推薦入試ULTRA攻略法(志望理由書対策、面接試験対策)』などの、映像教材によって「いつでもどこでも」学べる態勢を準備している。

クロイワ正一

 ヘルメスゼミ®代表。LEC東京リーガルマインド大学総合キャリア学部客員教授、川崎市立看護短期大学(現・川崎市立看護大学)講師、太田医療技術専門学校看護学科講師などを歴任。国家資格キャリアコンサルタント(Career Development Adviser)として、日本看護協会や各都道府県の看護協会、病院にて看護職のキャリア開発を支援する。また、27年にわたり看護職を目指す受験生の進学支援にも携わっており、志望理由書・小論文の書き方、面接対策などを全国の高校、予備校・塾などで指導している。『看護医療系小論文!超ULTRA攻略法』『看護医療職への進学&就職ガイド』(KKロングセラーズ)、『志望理由書の模範的書き方』『面接試験での模範的答え方』(ライオン社)、『電光石火 AO・推薦入試』(ブックマン社)、『看護業務「考え方」「書き方」「話し方」100のコツ』『ファースト・セカンドレベル 短時間!ULTRA®方式 合格レポート わかりやすく効率的な書き方』(日総研出版)など、著書は多数。

ヘルメスゼミ®の看護系進学指導コースについては下記公式ページをクリックしご参照ください。

https://kangoschool.com/


サポートしてくださると嬉しいです。さらにあなたのお役に立つ情報を発信することに投資していきます。