映画『PERFECT DAYS』を観た
2024/2/21
(※一部ネタバレあり)
日記として良かった作品を記録しておきたいのだが、不特定多数が見れる場に書き込んでいるため、ネタバレの注意喚起をしておきたい。
まず、感想を簡潔にまとめるならば『面白かったとか感動した、そんな言葉しか出せない自分の語彙力をなさにもどかしさを感じた』というべきだと思う。
確かに面白かったし、感動もしたのだが、本作はそういった言葉とは少し違う感情を抱いた。
内容を簡潔に述べるならば、おじさんの日常を10日間ほどを切り取っただけの話だった。ド派手な演出も、伏線回収も、爆笑や号泣する要素も持ち合わせていない。
しかし、これはストーリーではなく、キャラクターに強烈にスポットを当てた作品だと私は感じた。
演出、構成、シーン、カット、演技、音。
全ての要素が、キャラクターを深ぼりするためだけに存在する。
特に惹かれたのが、会話が少なく、キャラクターの過去や背景を一切描かないことだった。
話させないし、描かないのに、そのキャラクターの背景や人物像、考え方が映画を観ているうちに徐々にわかっていくのだ。
ちなみに私はすでに2回観たのだが、そういう作品だと思いながらもう一度観ると、本当に細部の演出にまでキャラクター像が投影されていることがわかる。
それを補強するかのように、主人公を演じる役所広司の表情や所作の演技が素晴らしい。同じ「笑う」でも数種類あり、それぞれに対して別々の感情を抱いていることがしっかりと伝わってくる。
総じて、この作品は1人の人間の日常からその人物をかなり『リアル』に描いていた。
透明人間にでもなって、その人の生活を横からずっと見ていたように感じるほどのリアルさ。
しかも、たった2時間程度で長年付き添っていたかと錯覚させるほど、その人のことが良くわかる構成になっている。
こういうことを好んで、こういうことを嫌う人なんだというのが徐々にわかっていく感覚は、本当に人と出会ってその人と接していくことで見えてくるものと同じだった。
一言で、そのキャラクターを言い表せないことが何よりのリアルさだと思う。
ストーリー重視の作品ははっきりと「このキャラターはこう!」という見え方をするものだが、本作ではぼやっと「このキャラターはこんな感じかな?」と感じさせられる。
生きていて、人と接して感じるのはまさにこの感覚で、人なんて白か黒どっちかではないし1か100ではない。甘いものは嫌いだけどアイスは好きだったり、普段怒らないのによくわからないところでキレたり、好きでもない飲み会に参加してみたり。
こういう人間っぽさがリアルで、本作ではそういった人物像が見えてきたのだ。
キャラクターのためにあるストーリー。
あまりこういった類の作品を見かけないのは、多分は作るのが難しいのだろう。数時間の中に、ここまでのリアリティを持ち込むためには『無駄そうなものは入れないといけないのに、無駄なものは一切あってはならない』。
さらに言うなら、映画を観る側の感覚に合わせなければならないわけで、無駄の感覚は人それぞれだ。だから、一定のラインを引くこともできない。
あくまでも私視点ではあるが、それが完璧だった。
これほどまでに完成度が高い作品を他にも観たいと、2、3日は囚われる程度には完璧だったと言いたい。
正直、これを書いている今でも、この程度のことしか述べられない自分の言語化能力のなさが恨めしい。
でも、だからこそ面白かったのだとあえて言いたい。
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