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番外編:スーパーカセットビジョン

本noteでの文章は私がディープな昭和-平成時代を連想しながら初めて書いている小説的な連載です。内容は全てフィクションであり、実在の人物や団体・店名などとは関係ありません。
"番外編"では本編と関係ない昭和・平成当時の思い出をノンフィクションも交えて更新しています。

ゲーム機の登場

今ではPS5やNintendo Switch、スマホのゲームなど、高画質で映画を見ているようなゲームが当然のように存在しているが、幼少期に僕が初めて遊んだゲーム機と呼ばれるものは友人が持っていたドンキーコングのゲームウォッチ。

我が家では金銭的事情なのか「ゲームをさせない」という親の意向なのかは分からないが、ゲームウォッチの代わりに僕が与えられたのは"ウォーターゲーム"というアナログな輪投げの玩具。

ファミコンの登場

チープな玩具で満足できない僕は友人の家に通い、ドンキーコングを楽しむ日々を送っていたが、徐々にファミコンが普及し始めると裕福な家庭や兄や姉を持つ家庭から順にファミコンが存在する家庭が増えてきた。

最先端のものを持っていることは、今も昔もヒーローのように扱われる。しかし、あまりに普及してくると"持っていない=貧乏"というレッテルを貼られてしまうのが残酷であり"楽しみたい"という純粋な気持ちもあるが、学校内での"ポジション争い"のためにも、ファミコンを持っていることは重要なことなのである。

当時はマリオブラザーズやアイスクライマー・バンゲリングベイなど、そんなゲームを友人の家で楽しんでいたと思うが、何か北野武のゲームでコントローラーのマイクに向かって叫んでいたゲームもあったように思う。
僕も当然ファミコンが欲しくなるため「持っていないと仲間はずれにされる」だの「宿題をするから買って欲しい」などと、適当な理由を見つけて親に買ってもらおう試行錯誤する。

僕の家庭は倹約家なのか貧乏だったのかは、正直子供の頃だったので分からなかったが、今思えば明らかに貧しかった。
恐らく当時は父親も若かったため、収入がそんなに高くなかったのだろう…
だから親も適当な理由をつけて買わせないようにするわけで、恐らく僕は買ってくれないことに対して涙したこともある気がする。

そんなある日、ファミコンをねだり始めてどの程度の期間が経ったのかは覚えていないが、父親が百貨店の丁寧な梱包に包まれた大きな箱を持って帰った。

これじゃない!

どういうシチュエーションでその箱を手にしたのかは覚えていないが、ファミコンの箱は友人の家でも見たことがある。
僕が親から手渡された箱は、どうも少し印象が違う。

それでも「ファミコンだと信じたい」と、僕は少し嫌な予感を持ちながら丁寧に梱包されたデパートの名前が書かれた花柄の紙袋を開けていく。
そして中から登場したのは"スーパーカセットビジョン"という表示のある家庭用ゲーム機と聞いたことのないカセット(ソフト)。

スーパーカセットビジョン:Wikipediaより

「なんかダサい」僕はそんな第一印象を持った。

けれど、親が僕に対するサプライズの気持ちを持って買ってきたことは、幼少期の僕にも十分伝わる。
だから「これじゃない!」などと突っ込む勇気は僕にはないが、友人にも言えない。

「変なのを買った」なんて言われるのは、いじめられてしまうリスクを孕んでいるため、口が裂けても言えないのだ。

買うなら一緒に行って「これで間違い無いか?」と聞けばいいものを、下手にサプライズなんて考えるからこういうことになるのだと今では思う訳だが、当時の僕は「なぜ我が家はスーパーカセットビジョンが来たのか」全く理解ができなかった。
だけど親の愛情というのは痛いほど伝わるが故に、僕は渋々誰も持っていなかったテレビゲームで、少し喜んでいることを演出しながらゲームを楽しむ。

いざゲームをスタートすると結局は面白いもので、自宅でひとり楽しむ分には気にならないのだが…

改めてファミコンの登場

結局は発売されるカセットの数や中古ソフトやに並ぶ数と、圧倒的にファミコンが優位となり、我が家もかなり遅れてファミコンが到着。
ようやく最先端を行く同級生の仲間入りを果たし、ゲームを満喫する時間を手にいれる。

今でも印象深いゲームソフトはコナミの"月風魔伝"というもので、僕は人生で初めて徹夜をしてまでクリアしたソフトだ。
そして最近になってSwitchで新しくなった"月風魔伝"が楽しめることを知り、Switchを購入し懐かしい思い出を振り返った。

僕の親は少しずれているところがある。
ファミコンが欲しいとねだっているのに、スーパーカセットビジョンを買ってきた親だが、僕はそれを責めることができずに"楽しい芝居"を打ちながら初めてのゲームの時間を堪能した。

意外と子供は考えることが大人なのであり、親の愛情も子供ながらに理解しているものなのだ。

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