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業務の属人化って、そんなに悪いことですか?

今職でも前職でも、業務の属人化は課題として取り上げられ、解決策が考えられていました(そしてなかなか解決できません)。そして最近は「そもそも属人化ってそんなに悪いことなのだろうか?」と考えています。


そもそも属人化とは何か?

そもそも属人化とは何か。以下は実用日本語表辞典の抜粋です。

属人化とは、ある事柄や業務が特定の個人に依存し、その個人の能力や経験によって成り立っている状態を指す。

実用日本語表現辞典

業務において、属人化はなぜ問題となるのか。そのデメリットは「その人が急にいなくなった時に、代わりがいないことが困る」ということになるでしょう。

また、属人化を廃するという事は、上記のデメリットを解決できるだけでなく「誰がやっても同じ成果が得られる」状態を作ることができる、と言えます。これは、特殊な経験や技能を持った人を雇用しなくても会社が回ることを示しています。ビジネスとして、これは一つの理想の形と言えるでしょう。誰を雇ってもビジネスが成立して利益が出るのであれば、企業としては最高の状態と言えます。

それって、属人化の解消で解決すべきことなの?

しかし、属人化を問題視して解決しようとする働きには、それはそれで問題があるように思います。

まず、「その人が急にいなくなった時に、代わりがいないことが困る」と言う点について。

もしその人の転職を気にしているのであれば、転職しないように待遇を上げれば済む話です。また、やんごとなき事情や不慮の事故でその人がいなくなったとしても、代わりの人材を探せばいいだけではないでしょうか。

芸術面であればいざ知らず、ビジネスやエンジニアリングの領域で本当に代わりの効かない人材は、ほんの一握りでしかありません。むしろそれらの知識や技術は、再現性があるからこそ重宝されているのであり、だからこそ、世の中で代わりがないと言うことはそうそうないと思います。

定年退職であればなおのこと、その人がいなくなることはわかっているのだから、属人化を前提としてしまえば、対策も取れるように思います(誰でもできるようにしようとするから、対策が難しくなる)。

もちろん、社内での経験は他の企業では得難いものであり、代替できる人間はいません。であれば、その人の経験が社内に蓄積されており、後から来た同等の能力を持った人がその蓄積を見て同じことができる、と言う状態であることは重要であるように思います。

属人化の解消によって失われるもの

加えて、属人化の解消は究極的に「誰がやっても同じ成果が得られる」ことにつながると書きましたが、ここには別の視点で問題があります。その状態は企業にとっては理想的でありながらも、働く人間にとっては必ずしも理想的ではない、と言う問題です。

誰でも同じ成果が得られるようになる、ということは、決して難しい技量を必要としない仕事の積み重ねで業務が成立する、ということでもあります。果たして、そのような職場は、働いている人間にとって成長が期待できる場所でしょうか?ラクして稼ぎたい人にとっては都合がいいかもしれませんが、少なくとも自身の成長を望む人にとっては、あまり魅力的な職場にはなり得ません。つまり、そういった意欲のある人間が組織からいなくなってしまうことになるでしょう。

ラクして稼ぎたいという思考自体は、人それぞれだし悪いことではないと思います。それができれば誰でも幸せです。しかし、そういった人々が集まった職場は、咄嗟のトラブルや急激な環境の変化には対応できません。変化に対応できない企業が消えてしまうことは、歴史が証明しているように思います。

このように考えると、属人化を排するのではなく、適度なバランスで残しておくことが企業にとってはいいように思います。

属人化を問題視しているのはもしかして日本だけ?

しかし、少なくとも私は今まで「属人化は問題」という言葉を多く聞いてきました。最近は、もしかしたら日本に特有の考え方なのかもしれない、と思っています。それは、日本の企業の特色の多くが属人化と相性が悪いためです。

基本的に日本の企業は企業寿命が長く、会社が長く続くことが良しとされています。その中で人の入れ替わりが発生するのは自然な現象であるため、属人的な仕事の仕方は企業の存続にとってリスクとなります。

一方で転職が少ないという点も、知識や経験を持った人材を外部から採用しにくくしています。キーマンがいなくなったときに代わりの人間を雇う、という解決策を取りにくくしており、むしろその発想自体が浮かばないのかもしれません。

また、年功序列という給与形態も、「必要な人間の待遇をあげる」といった格差をつけにくくする要因となるのではないでしょうか。

欧米の企業は、日本と比べると企業寿命も短く、転職による人材の流動性も活発である、とはよく聞くところです。優秀な人間は、まるでスポーツ選手のように好条件で会社に迎え入れられることもあるそう。欧米で業務の属人化がどのように見られているのかをもっと知ることができれば、仮説を検証できそうなのですが、いかがでしょうか?

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