涙鉛筆(毎週ショートショート作品)
最近では仕事も出会いも芸術も、なんでもかんでもデジタル化だ。
カミさえ居れば、現実に出てくる事もできる。
最近知ったが、自分がデジタル化されたものが普及しているようで、この世の中にはもう自分しか居ないようだ。
独りぼっちになっても、自分のできる事はその身を削る事でしか力を発揮しない。
ただ削られ消えていくのを待つだけが僕の人生だ。
抗えない運命と孤独感の波にさらわれてしまう前に、いっそのこと早々と消えて無くなってしまいたい。
「…きっとこの鉛筆はそんなこと言ってたと思うんですよ。なんだか、寂しそうで、涙を流しているようでした。だから僕は、この時代もう使わない鉛筆で"鉛筆"を描きました。この子の最後の役目は、自己表現の為に使ってあげたかったんです。その方がなんか報われるかなって」
「鉛筆の思いがとても絵に現れていると思います。それでは最後にこの絵のタイトルを教えて下さい」
記者の最後の質問で緊張が走る。
「はい。この絵のタイトルは"涙鉛筆"です。」
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