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卒業ソング&旅立ちの歌に見る昭和世代の恋と青春の物語

桜の開花とともに訪れる別れの季節。3月の最終週となる30日放送回のテーマは、惜別のシーンを感動的に彩る『別れと旅立ちの名曲特集』。ユーミンの『卒業写真』や海援隊の『贈る言葉』、
中島みゆきの『時代』など、昭和世代には定番の卒業ソングを始め、聴けばあの日の記憶が一瞬にして蘇る青春のベストテンが選ばれました。

   恋の終わりは新たな人生の始まり
別れの歌は数々あれど今回のベストテンには、古い恋を捨てて心機一転、新天地へと旅立つ若者を描いた歌が2曲ランクインしました。

その1つが、今回三山ひろしさんが歌った堺正章さんの『さらば恋人』。
ベッドの中でまだ眠る恋人に書き置きを残し、夜明けに汽車で町を出た主人公。
別れの歌でありながら湿っぽくならず、心地よい風のような爽やかさを感じるのは、軽やかなメロディの妙もさることながら、過去との訣別を誓った歌詞にありました。
「ふるさとへ帰る地図は 涙の海に 捨てて行こう」(『さらば恋人』北山修作詞) 
彼の人生の第二章は、新天地から始まることを暗示しているように思われます。

そしてもう1曲が、丘みどりさんが歌ったペドロ&カプリシャスの『ジョニイへの伝言』。
そこに描かれているのは、踊り子として働く1人の女性がバスで町を後にするという、まるで海外のロードムービーのようなワンシーン。
大切な人との最後の別れをきちんと果たせぬまま、彼女は行き先未定の旅に出ます。

歌詞の中で別れの経緯は全く語られていませんが、作詞した阿久悠さんは、寂しさや不安を心に封じ、逞しく明日へと向かおうとする健気な女性の生き様を数少ない行数で見事に描き切っています。
「サイは投げられた もう出かけるわ わたしはわたしの道を行く」
彼女も新天地でまた誰かと出会い、新しい人生を謳歌することになるのでしょう。
エンディングではなく、物語の始まりにふさわしい旅立ちの歌です。
(『ジョニイへの伝言』阿久悠作詞)

  『酒よ』に隠された旅立ちのストーリー
そして、今回のテーマとしてはちょっと意外なランクインだったのが、吉幾三さんの『酒よ』。一般的には酒呑みの歌として知られていますが、実はこれ、吉さん自身の半生を綴った歌。
全31番、総尺26分からなる超長編作「酒よ…我が人生」が元になっており、その9番と10番に別れのシーンが登場します。

「雪の降る遅い春 出発(たびだ)つ朝に ひとりして泣いていた 父が居た
 居たいけど 居られない 未来と夢あった」

「ふるさとの駅からは 恩師と友が 青森の駅からは 母ひとり
 泣きながら追いかける 着物の母が居た」
(『酒よ…我が人生』吉幾三作詞)

将来に大きな夢を抱いて故郷から上京する青年と、それを涙で見送る父と母の姿。
上京組なら誰もが共感するそんな『惜別』の思い出は、昭和世代にとって、輝いていた若かりしあの日への『惜春』の情でもありましょう。

   卒業式の日に起きたまさかの悲劇
今回のスタジオトークでは、ゲストの丘みどりさん、三山ひろしさん、おかゆさんが貴重な卒業写真を大公開!
卒業式の朝に見舞われた悲劇のアクシデントや、片思いの人の第二ボタンにまつわるエピソードなど、しょっぱくて甘酸っぱい思い出トークも披露してくれました。

詳しくは3月30日(木)よる9時『別れと旅立ちの名曲特集』にて。どんなランキングになるかもどうぞお楽しみに!

ゲスト: 丘みどり 三山ひろし おかゆ

構成作家 工藤ひろこ

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