見出し画像

目的地となるレストラン【2】〜景色を価値化し、そこで生活するシェフの生き方そのものも地元の魅力になる時代・七尾/Villa della Pace〜

さて、目的地となるレストランですが、北陸で多数集積が進んできていることを先日書きました。ただその時に訪問できなかった注目七尾湾の元海水浴場脇にあるオーベルジュを先日訪ねてきました。

そもそもとして、素晴らしい湾の景色というのは、もちろん全国各地に存在しています。

素晴らしい景色は感動的であり、人の記憶に残るものでは有るのですが、ただ単に形式をみせるだけでは地域が持続するのに必要な経済にはなかなか繋がりません。そもそも自然観光、歴史観光といったものは、本当にただで終わってしまうものも少なくない割に、多くの人が集まるので地域負荷がかかるだけ、という問題を抱えることになったりします。つまり大した金額もとれない観光拠点施設整備とかはあまり時代にそぐわず、もともとある環境や景観を破壊することすらあるので要注意というところでもあります。

しかしながら、素晴らしい景色を生かした、過ごし方を提案するレストランやオーベルジュが作られていくことによって、環境などへの負荷も大きくなく、しかしながら具体的な価値として顧客に提供し、地域外からの富を流入させることが可能になるモデルも有りえます。そのような小規模なものが集積することのほうが多様な価値観に基づき、持続可能な地域経済を作り出すことにも繋がります。

○ 飲食店がまちなかから離れていく時代に

自然がただそこにあるだけではなく、適切にそれを価値に変えることが重要なわけですが、もともとはそんなこといっても不便な場所で商売をやるということに、関心がある人はあまりいませんでした。

自動車もない時代は、公共交通機関を利用したり、徒歩や自転車で人は移動したわけなので、その結束点となるエリアに商業立地は限られました。しかしながら自動車社会が到来したことによって(その良し悪しはあるのですが...)、道路さえあれば人は目的をもった場所に訪ねていくようになります。まぁレストランガイドであるミシュランガイドとかも、もともとがタイヤメーカーのミシュランが作っているのも、自動車社会が到来して「そもそもそんなに急いで遠くまでなにしにいくのよ」という疑問に答えたもの、というお話があるくらいですから、自動車社会がなければ、不利な立地みたいなところにいい店が出来ていくというのは現代的変化でもあります。

でもって日本においても近年地方で実感するのは、いい店ほどまちなかから抜けていく、という現象です。これは2つあります。

ここから先は

3,448字 / 28画像
この記事のみ ¥ 800

サポートいただければ、さらに地域での取り組みを加速させ、各地の情報をアップできるようになります! よろしくお願いいたします。