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【管理職昇進試験】インバスケット演習とは?解き方および回答の書き方のコツとともに紹介

管理職の昇進試験では、多くの企業がインバスケット演習を課しています。このインバスケット演習は、今まで受けてきた試験とは違う形式なので、どのような試験なのかを事前に学んでおくことは昇進試験に合格するために必須事項です。

この記事では、インバスケット演習がどのような試験なのかを解説し、回答の仕方や高評価を得る回答を書くコツについて、解説していきます。

インバスケット演習とは

最初にそもそもインバスケット演習とは、どんな試験なのか、何を評価するのかを解説いたします。

インバスケットはそもそもどういう意味?

今は電子決裁が増えていることから、なじみがない方もおられますが、紙に印鑑を押して回覧する習慣がある会社では、偉い人の机の前に未決箱と決裁箱が用意されていました。インバスケットはこのうち、決裁がされていない書類が収められた未決箱のことを意味します。たとえとして少し的外れ化もしませんがが、電子メールソフトでいえば、未決箱は未読メールばかりの受信ボックスと思っていただければよいです。

インバスケット演習の内容

インバスケット演習は、管理職になりきってインバスケット(=未決箱)の中にあるどう処理するか判断されていない多くの書類を処理する試験です。ビジネスロールプレイングゲームと呼ぶ方もいらっしゃいます。

どんな試験なのか、簡単に解説します。解説は筆記試験の場合ですが、Web試験もおおよそのイメージは同じです。

まず、試験開始前に封筒が忘れ、以下の書類が渡されます。

  • 状況説明シート

  • 案件シート

  • 解答用紙

  • 回答方法の説明書

このうち、状況説明シートは、以下の内容が書かれています。

  • あなたが演じる役割及びその人物の説明

  • 会社に関する説明(歴史、理念など)

  • 会社の組織図

  • あなたが率いることとなる組織のメンバーの説明

案件シートは、大学入試などに当てはめれば、問題用紙のことです。案件シートは、上司や部下、取引先の担当者などからあなた宛てに指示や要望、報告書、クレームなどがかかれたメールや手紙、メモです。案件シートは、試験によって異なりますが、2時間程度の試験時間のものであれば20~25件が与えられます。なお、慣れにもよりますが、まったくインバスケット試験の対策をしていない方は、おそらく全部処理できません。私も初めて実施したときは6割程度しか回答できませんでした。

なお、人材アセスメントの一科目として実施される場合は、インバスケット試験の合間に面接演習が組み込まれます。面接演習が何かを知りたい方は以下を参考にしてください。

インバスケット演習で何を評価されるのか

インバスケット演習は、あなたが回答した内容をもとにあなたのビジネススキルを評価します。多くの企業では、管理職などの昇進試験の一環で行っているのは、一つの上の職に就いたときの仕事の進め方や行動、判断基準を客観的に数値として評価できるからです。

評価内容ですが、人材アセスメント試験の中の一科目として行うことが多く、その場合は人材アセスメント試験の評価項目に準じて各企業が重視する能力をもとに定められます。なお、インバスケット試験を単独で行う場合も各企業が評価項目を決めている点は同じです。

ですから、一般的な評価内容とはならず、企業の特色が出てきますので、試験対策する際は今まで受験した方にどんな評価科目だったかを聞くことをおすすめします。なお、各企業の特色で定めるといっても、大まかの評価内容は似てきます。以下で評価する項目をまとめていますので、参考にしてください。

  1. 情報把握能力:多くの情報から必要な情報を選び出して活用する

  2. 問題発見力:何が問題なのかを見つけるあるいは根本的な問題が発見する

  3. 判断力:案件を適切に判断し、その判断を論理的に説明する

  4. 創造力:慣習などに縛られずに新しいアイディアを生み出す

  5. マネージメントコントロール:方針や規則、決定事項に従って、組織を動かす

  6. コミュニケーション能力:自身の考え方を伝える。相手の立場に配慮する

  7. 計画組織力:経営資源を活用し、組織を効率的に運営する

  8. 実行計画力:組織の計画を作成する。案件の優先順位を適切に設定する

  9. バイタリティ:自身が主体となって行動する(当事者意識を持つ)

  10. リーダーシップ:組織が進むべき方向性を定めて導く

インバスケット演習の解き方の流れ

ここまでインバスケットの概要を解説してきました。次は、実際のインバスケット演習をどのように回答していくのかを解説していきましょう。

最初に配られた案件をすべて読む

インバスケット演習が始まって最初にすることは、配られた問題を一気に全部、読むことです。1件の案件を読んですぐに回答してはいけません。

これは、次の二つの理由があるからです。一つ目は、案件内に重要なものからどうでもよいものまで混ざっており、重要なものを優先して処理しなければならないこと、二つ目は、相互に関係しているものがあるので、関連性を把握するためには先に全部読む必要があるからです。

案件を読む際は、案件の重要な個所をマーキングしたり、気を付けるべきことを要約したり、何が問題となっているかなどをメモ書きするなどしたりすると、あとで回答を書くときに楽になります。

なお、案件の数は多いので、すべての案件を読むためには時間がかかります。回答を書く時間を少しでも多く残すほうが有利になりますので、いかにこの案件を読む時間を短縮できるかがインバスケット演習の攻略のカギです。事前に問題集などで訓練を重ねるときにどうすれば読む時間を短縮できるかを考えて対策を講じましょう。

関連した案件を探す

次に行うことというよりも、全案件を読んでいる最中に合わせて行っていただきたいのですが、案件間で相互に関連したものがないかを探しましょう。関連した案件を見つけたら、その案件の回答に、関連している案件を指摘することで評価が高くなります。

また、インバスケット演習では、必ずしも案件ごとに回答していく必要はなく、複数の案件をまとめて一気に回答することも可能です。もし複数の案件をまとめて回答することができれば、その分、回答時間が短縮できますので、関連した案件を見つけたらまとめて回答できないか検討してみましょう。

なお、まとめて回答する場合は、あなたが受験するインバスケット演習の運営会社がその回答方法を認めているかは必ず確認してください。

優先順位をつける

インバスケット演習では、処理する案件が多いために演習時にあなたに与えられた経営資源ではすべての仕事に手を付けることはできません。そのために、限られた経営資源をどこに振り分けるかを決めるために優先順位付けが重要になってきます。

優先順位付けは、各案件について、重要度と緊急度を評価し、以下で示す時間管理マトリックスに書き込むことによって行います。

案件の緊急度を判定する基準は、締め切りがいつかです。締め切りが早いものほど、緊急度が高いと判断されます。重要度は案件が抱えているリスクや問題となったときの影響度で評価し、リスクや影響度が大きいものほど、重要度が高くなります。

また、インバスケット演習でよく出る問題については、以下のマトリックスで記載されている内容をもとにどこに入るかを判断してもよいです。

各案件の重要度と緊急度を評価し、時間管理マトリックスに書き込んだ後は優先順位付けを行います。このマトリックスは重要度と緊急度の二つの軸により以下の4つに区切られます。

  • 第1象限:重要度高い、緊急度高い

  • 第2象限:重要度高い、緊急度低い

  • 第3象限:重要度低い、緊急度高い

  • 第4象限:重要度低い、緊急度低い

通常、人は重要度が低くても緊急度が高いものから処理したくなりますが、管理職の場合、目先の問題にとらわれず、いずれリスクが表面化する可能性がある重要度が高くて、緊急度が低いものから処理することが求められた職務です。そのため、重要度を優先して優先順位をつけることとなり、第1象限、第2象限、第3象限、第4象限の順でつけます。

もし優先順位の付け方をもっと知りたいという方は以下でより詳しく解説しているので、そちらを参照してください。

回答を書く

優先順位をつけ終わったら、回答に移りましょう。普段の仕事では簡単な仕事から処理して重要なものを後回しにしてじっくり検討するタイプの方もおられるかと思いますが、インバスケット演習では、さきほどつけた優先順位に従い、その順番で回答はしていってください

これは、単純に全部の案件を処理する時間が不足する可能性があることから、得点が高い案件から処理するほうが安定して高得点が取れることになるからです。

インバスケット演習で高評価を得るコツ

おそらく、この記事を読んでいる方が最も知りたいことは、同回答すれば、高得点をとれるかではないでしょうか。ここでは、高評価を得るためのコツを4つ、紹介します。

どう判断したのかは必ず書く

最初にあげる高評価を得るコツですが、与えられた案件シートに対して、あなたがどう判断したのかを書くことです。いうまでもなく、「判断」はその案件シートへの回答の中核なのですが、意外に何を判断したのかを回答シートに書くことを忘れます。なので、回答シートの冒頭に何を判断したのかを必ず書く癖をつけましょう。

判断は、以下の7つに分類されますので、これを覚えておき、どれに当てはまるかを念頭に回答していきましょう。

  1. 承認:案件シートの書かれた提案をそのまま承認する

  2. 否認:案件シートの書かれた提案を却下する

  3. 条件付き承認:条件をつけたうえで承認する。情報収集やテータ分析などの指示した行動を条件として定めます

  4. 保留:現時点では判断せずにあとで判断する

  5. 延期:イベントなどを延期する判断をする

  6. 部下に一任:その案件を部下に対応を任せる。

  7. 上司の指示を仰ぐ:上司にその案件をどう処理するかを尋ねる

全案件に回答する

ある意味当たり前の話ですが、インバスケット演習ではすべての案件に回答したほうが高い評価を得ることができます。これはすべての案件を回答したということはそれだけ手数が多いため、手数の分だけ評価されるということです。

なお、インバスケット演習は先ほど説明したとおり、すべての案件を処理できないような量を受験者に与えられます。

回答に多くの指示や行動を詰め込む

インバスケット演習を回答するときに意識していただきたいことは、回答内にできるだけたくさんの指示や行動を詰め込むことです。これも先のすべての案件に回答してほしいということと共通することになりますが、インバスケット演習では、回答に書かれた判断や指示が評価対象となっているため、回答に多くの行動や指示を記載することで、評価されるポイントが増えると同義です。

なお、インバスケット演習で評価される指示や行動は、以下のものがあります。

  • 判断すること(部下から出された提案の承認や否決など)

  • アイディアの立案や代替案の提示すること

  • 情報収集を指示すること

  • 利害関係者に報連相を行うこと

  • 事後報告を指示すること(メール連絡を求めることや打ち合わせの設定など)

  • 部下への配慮すること(ねぎらいの言葉など)

  • 他案件との関連性を指摘すること

  • トラブルの原因調査やトラブルの再発を防ぐ指示

  • その他の指示(部下に報連相の相手を増やすなど)

組織が持つ根本の問題に目を向ける

インバスケット演習では、案件の中にわかりやすい表面的な問題が書かれているケースがあります。この場合、表面的な問題を解決するのではなく、根本的な問題を探し出して解決のための行動を指示することが必要です。

たとえば、あなたがメーカーの製造部の課長だとして、最近、工場で働く部下の残業時間が最近、多くなっているという問題があったとします。この問題に対して、部下の負担を減らすために人員を増やすという回答で問題はないのですが、さらにこの問題を深堀すると、なぜ残業が増えているのかという点に着目してほしいです。

インバスケット演習ではこのような場合、ほかの案件にヒントが隠されているケースが多くあります。今回の例でいれば、ほかの案件の中に部下に対する労働環境(パワハラなど)が悪化していて人が多く辞めているとか、装置が劣化していてトラブルが増えたためとか、いかにも残業が増えた原因と判断できる問題が見つかることがあります。この場合、人を増やすという対応は根本的な解決策ではないため、最も適切した回答ではありません。

なお、ほかの案件の中に残業代が増えた理由が見つからなくても、なぜ残業が増えたのか根本的な理由の調査を指示すべきでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。この記事では、インバスケット演習がどのような試験なのか、試験の回答はどのように解いていけばいいかを解説していきました。

本記事で、試験の概要や評価されるポイントは理解できたと思いますので、試験対策に活かしてください。

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