自粛?経済再開?インフルより怖くない?

緊急事態宣言延長に際して、再度お伝えしたいと思い一部編集しました。

医師・看護師・患者・妊婦・高齢者・芸能人・経営者・経済学者・文化人…色々な目線があるのは重々承知しております。

しかしながら、こんな状況下でも、医師というのは訴訟の観点、また元々半端に勉強ができ安定思考な人種なので、明言は避けたがります。

また日本人特有の、どうせ話してもわかってもらえない、またはいつか話さなくてもわかってくれるだろ、という甘えの部分もあります。

少なくとも、多くの見識のある(内科、救急の)現場医師が自粛を求めるのは何故なのか。

それは経済への影響、自殺者の増加を無視しているわけではないんです。

今の十分でない状況で自粛をとくのは医療にも経済にとっても危険だと考えるからです。

若手の医師に過ぎない私ですが、わかる範囲で専門でない方にも考えを理解していただきたく投稿しました。

①未だにコロナを疑う症状の患者を迅速かつ安全に診れる場所の確保が十分でない。

これが我々が感染拡大を恐れる最大の要因です。

マスク、ガウンの普及は徐々に改善されつつあるものの、未だに患者は繋がらない保健所へ電話をかけるしかなく、それが結果的に症状を隠した受診にも繋がっています。

自粛延長自体は行政の責任とは言い切れませんが、私が以前から述べてきた、院外の早急な診療場所の確保を急げなかったことは行政の大きな責任かと思います。

このような環境が続くことは、重症化率は低いとはいえ医師や看護師の感染により就業が難しくなることで、本来死ぬはずではなかった若者の虫垂炎や婦人科疾患、また治療可能なはずだった癌患者の治療を遅らせてしまうことになります。

インフルエンザの死者数、自殺者の増加に比べたらコロナなんて…と言うのは上辺だけの数字であって、実際に医療従事者が脅かされない状況下ではコロナ自体よりも他の病気への皺寄せによる被害は甚大です。

すでに一部の病院では移植治療をすべて断念していたりするんです。

医療従事者の感染リスクをおさえたインフラが整備されない限りこの状況は打破できず、これより先に経済再開を急ぐことは結果的に大きな損害を生みます。

(低リスク患者の発症期には、多くの場合血液検査やCT検査といった高度な検査治療は必須ではないので)場所さえ確保できれば、各病院からの派遣に加え、患者が減った開業医の先生や歯科医師の協力を仰ぎながら(問診、PCR検査、内服処方を中心とした)風邪外来を行うことは可能なのです。

それならとっとと整備しろよと、そう思われるでしょうがそれが遅いのが我が国であって我々現場も憤るところなのです。

②肺炎やインフルエンザでもっと亡くなってるんでは?

これに関しては、死亡診断書の病名には色々な事情がありまして…

高齢者の「肺炎」は便宜上の記載に近い症例も多く、中身は老衰による多臓器不全のような状態のことが多いです。

インフルエンザの一部も然りです。

少なくともこれまでの細菌性肺炎やインフルエンザで中年層以下で酸素投与を要する症例というのは非常に稀であり、だからこそ我々医師や看護師は日々怯えながら治療にあたっているのです。

匿名の3次救急の現場の先生も、

「この病気はやばい。」

という表現をあえて使っておられましたが、ほんとうにその通りです。

また、新型コロナウイルスにおいていくら死亡者数が少ないといっても、現状所謂中等症以上に相当する、酸素投与を要する症例の数は病床数管理の上で無視できません。

大阪では専門病院を指定する流れがありますが、今後このような対応は全国的に行うことが他の病気の診療を守る意味で重要なのです。

③ワクチンは?治療薬は?アビガンはよ投与しろ!

ワクチンに関しては多くの有効性は5-6割とも言われており、重症化率を一定で下げる効果は期待できますがこれができたからといって今まで通りの医療を提供するのは難しいです。

よって治療薬ができない限りは前述のような対応が不可欠となります。

アビガンは?レムデシビルは?

これに関しては報告が出てはきていますが、一部の専門家の先生も警鐘されているように、

そもそも試験管レベルですら効果は抜群ではない

(アビガンに至っては試験管レベルでも効果は芳しくない)

人対象の臨床試験でも、私が読み解く限りでは芳しい結果は出ておらず、いずれにせよ劇的な効果は期待できない

のが現状です。

また作用機序から副作用も多く、今後問題となるかと思います。

実際にアメリカがポジティブに報告したレムデシビルの結果でも(実はこの研究の要点は、結局5日間投与でも10日間投与でも結果は変わらなかったよ、だから5日間でいいんじゃないの、使わなかった場合に比べて効いたのかは、、というものに過ぎないのですが)、かなりの数の患者が副作用で途中離脱しています。

また救命率に関しても、諸外国は日本のように国民皆保険や生活保護により国民全体に医療が行き届いているわけではないので、そもそもの死亡率が高すぎて何とも言えないのも一つです。

その他の既存薬や新たな治療薬の開発も進んではいますが(一部期待を持てそうな薬はあるのですが)、2020年5月4日時点で人体において有効性が確実な薬の証明はないのが真の現状です。

日本産なのに、芸能人は使ってるのに、もっとアビガン早く!

というのは、以上の事情からやめていただきたいのです。医学論文をまともに読める医師であればアビガンとレムデシビルには懐疑的になるのではないかと思います(逆に、2020年5月4日現在これを否定しない医師は論文が正しく読めていないか読んでいないか、他のもっとまずい事情がおありかのいずれかではないかと思います)。


以上が少なくとも一内科医師として自粛を続けてほしい、経済再開を早めるのは危ないと考えてきた理由です。

国に早急に求めていくべきは、

「自粛もういいだろ」

ではなく、

「とっとと環境整備(医療従事者も安全で患者はすぐに駆け込める場所を提供)しろよ」

ということなのではないかと、

そして、コロナに限らず今後の日本経済を明るくしていくためには

「生活力の低下した高齢者への過剰医療の見直し」

「各企業のIT化対応への保障」

ではないかと私は思っています。

1個人の意見をここまで読んでくださりありがとうございました。

私自身、医師でなければ自粛なんてやってられるか論者だったと思います。

少しでも医師の考えの理解に繋げていただければ幸いです。






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