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お寺は「修養」の道場

友人の大澤絢子さんの新著『「修養」の日本近代〜自分磨きの150年をたどる〜』(NHK出版)は、ぜひ多くの人に読んでほしい力作だ。

サミュエル・スマイルズ『Self-help』以降、近代に至るまで、日本社会においてどのように「修養」の考え方と実践が展開してきたのか、系譜を辿るのにとても役立つ。特に、僧侶の立場から読めば、大澤さんのいう「宗教(っぽいもの)」と「修養」の関係性が、興味深い。現代では「自己啓発」へと連なる系譜の中で、仏教の僧侶はそれなりの存在感を持って活動してきた。

この「修養」テーマに興味を持って調べてみると、今度は、西平直先生の講演動画に行き当たり、面白くて何度も見てしまった。オススメ。

▼ 講演会「稽古・修養・養生―日本のself-cultivationの原風景」西平 直(教育学研究科 教授)2021年5月15日


さて、これまで僕は「日本のお寺は二階建て」論を語ってきた。日本のお寺は「仏教」という大きな看板を掲げながら、その中身は一階が「先祖教」であり、二階が「仏道」であるという論だ。一階はすでに、「先祖教」から「祖先教」へ、という方向へリフォームが済んでいる。けれど、ここへきて二階も少しだけリフォームしたくなった。それは、「仏道」から「修養」へのリフォームだ。

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このnoteマガジンは、僧侶 松本紹圭が開くお寺のような場所。私たちはいかにしてよりよき祖先になれるか。ここ方丈庵をベースキャンプに、ひじ…

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