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GAFAというマイルドカルト

NetflixのThe Social Dilemmaというドキュメンタリー作品を見た。

ドキュメンタリーとドラマを織り交ぜて、自身が開発したテクノロジーに警鐘を鳴らす専門家らとともに、SNSが人間にどれほど危険な影響を及ぼすのかを検証する。

要は、SNSを中心とする現代のインターネット技術が「監視資本主義」ともいうべき昨今の状態を作り出しているのかを、Netflix渾身のドキュメンタリーとして描き出したものだ。

現在、GoogleやFacebookやTwitterなど巨大なテック企業が提供するサービスは、利用者がものすごい依存度で利用するにも関わらず、「無料」だ。なぜ無料なのか。それは素朴にいえば、広告が入るからだ。しかし、もう一歩考えてみると、事態はもっと複雑だ。広告出稿者にとって、なぜお金を払って広告を出すかといえば、自社の商品を買って欲しいから。とすると、自社の商品が売れさえすれば、手段は従来のわかりやすい「広告」でなくとも良い。さらにいえば、広告出稿者も様々な形態の人格がありうる。目に見えてわかりやすい商品を売る企業ばかりではない。目に見えない商品を売る企業もあるし、たとえば選挙ビジネスを手がけるような「世論」を動かすことを商品とする企業だってある。つまるところ、クライアントの望むように人間の行動を誘導することができれば、それでいい。

GoogleやFacebookやTwitterのビジネスモデルは、基本的にはそのようなものになっている。ドキュメンタリー中に出てくる「顧客を”ユーザー”と呼ぶのは、麻薬ビジネスかSNSビジネスだけだ」といったメッセージが示唆するように、GAFAにとってユーザーは実は顧客ではない。お金を出してくれる顧客は、企業だ。GAFAにとってユーザーとは、商品そのもの。ユーザーという商品を知り尽くし、ユーザーの行動を意のままに操ることで、利益を生む。もはや従来の広告ビジネスが素朴に感じられるところに、GAFAのあり方は来てしまっている。

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