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松本紹圭の方丈庵

このnoteマガジンは、僧侶 松本紹圭が開くお寺のような場所。私たちはいかにしてよりよき祖先になれるか。ここ方丈庵をベースキャンプに、ひじり仲間と対話と巡礼の旅に出ませんか? … もっと読む
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#グッドアンセスター

ダボスから、ローマンに会いにイギリスへ

ダボスでの会合を終え、スイスのチューリッヒから、イギリスはロンドンへ。二度目のイギリス。二度目というだけで、土地や駅の名に馴染みを感じ、心持ちは違う。 ロンドン・ヒースロー空港から向かう先は、『グッド・アンセスター』の著書、ローマンの暮らすオックスフォードだ。 空港から乗ったタクシーの運転手は、ちょっと感じが悪かった。「Credit Available(クレジットカード払いOK)」の表示していながら、現金での支払いを求められ、こちらがカードしか手持ちがないことを伝えると「

グッド・アンセスター・ダイアローグ「人間は生きものであり、生きものは続いていくもの」中村桂子さん

今、呼吸する生命の背景に広がる38億年の歴史を探り、その物語を誌する「生命誌(=Biohistory)」。この言葉の創出者であり理学博士の中村桂子先生に、翻訳書『グッド・アンセスター』の書評(*)をいただけたことは、本当に有り難く光栄なことだった。本来、意図するまでもなく、当たり前に生命が携えているはずの「長期思考」を、現代社会を生きる僕らはどのように取り戻し、実践していけるのか。生命科学の視点から、科学の力や人間の手では決して掴み取ることのできない、種を超え、時空を超えた連

グッド・アンセスター・ダイアローグ 「森に溶けゆく命、溶けゆく経済」(財)ハヤチネンダ 今井隆さん・航大朗さん

岩手県遠野の土地に、そして時にオンラインで、互いの死生観をおおらかに語り合える仲間が集う。遠野の山々に連なる大地に身を置く時間を共にしながら、動植物たちといのちを耕す、財団法人ハヤチネンダ。里での暮らしを終えて、いずれ山へとかえってゆくという生命観は、僕が関心を寄せる「ヒューマン・コンポスティング」(遺体を堆肥化する葬送法)に親しみを感じる人々の精神性にも通じている。宗教でもなく、利潤を追い求める経済活動でもない。設立者の今井隆さんと、後継者で現代表理事の今井航大朗さんは、東

翻訳は、スタートライン。とある読書会より。

翻訳は、スタートライン。 「わたしたちは「よき祖先」になれるか?」 『グッド・アンセスター』が読者に投げかけるこの問いに、先祖供養の根付く文化においてこそ、広がりをもった議論で応答できるだろう。過去を振り返る営みにあってこそ、自らの存在もまた、いずれ振り返られるものとして捉えられるからだ。僕自身は、問いの答えをもっていない。ローマンが世に放ったものを、どう読み、受容し、応答していくかが僕が受け取っている縁なのだろう。 出版から3ヶ月あまり。想像以上に、「よき祖先」を巡る対

櫻井義秀先生と語る「日本仏教の「よき祖先」」

今年も、札幌で櫻井義秀先生(北海道大学教授、ご専門は宗教社会学)と対談する機会をいただいた。北海道内の寺院関係者が集う研修会。前回に続き、アレンジをしてくれた玉置真依さんに感謝です。 櫻井先生は最近、日蓮宗で得度されたそうだ。学者から宗教者になられた背景には、自ら実践者となるほかなかった日本仏教への思いがあったのだろう。お忙しいなか、さっそく『グッド・アンセスター』をお読み下さったそうで、今回は「日本仏教の「よき祖先」」をめぐる対談となった。 櫻井先生だけではない。私自身

グッド・アンセスター・ダイアローグ「医療、芸術、教育という3つの道を混ぜ合わせる。」稲葉俊郎さん

医師という立場にありながら、幅広い眼差しで医療を捉え、「職業」を超えて広く世に関わり、発信を続ける稲葉俊郎さん。生物の長い歴史と共に、今あるわたしたちの「あり方」をみるロングタームの視点や、先人たちの人生を受け継ぐように自らを生きる姿は、僕らをディープ・タイム(長期的時間軸)へと誘う。親しい友人でもあり、僕にとって生けるグッド・アンセスターでもある稲葉さんに、第一回目のゲストにお越しいただいた。 人間の身体には、地球誕生からの壮大な時間軸が入っている 松本 今日は「グッド

宗祖法要のアップデート報告

先日、横浜戸塚・妙法寺の御会式にて、久住住職との掛け合いをさせていただく機会を得た。 発想としては、伝統仏教各宗派でなされている毎年の宗祖法要を、「誰もが誰をも弔える世界」への入り口として位置づけることができないか、というものだ。 もちろん、もっといいのは「誰もが誰をも”いつでも”弔える世界」であり、その日取りを報恩講(浄土真宗)や御会式(日蓮宗)という機会に限定する必要はないのだが、まだそうした文化が存在しない中で、いきなり先走ってメッセージを発してしまうと、根付く前に

Life is good. And we become better ancestors.

『グッド・アンセスター』の出版記念イベントをオンラインで開催したところ、60名を超える方にご参加いただけて、とても嬉しく。半分以上は色々なつながりからの友人たちであり、そしてこれをご縁に新たにつながった方々も多くいらした。 途中、zoomのブレイクアウトルームで少人数での対話の時間も設けたが、各部屋で深い対話がなされたであろうことは、顔ぶれだけ見ても想像ができた。「自分が先人から受け取った”恵み”について話してください」というお題を出したけれど、自分にとっては、人のつながり

方丈庵 Latest News|2021.10.14

◉ 「グッド・アンセスターマガジン」を開設しました。 『グッド・アンセスター』の発売から一ヶ月、少しずつ読者の方から反響をいただくようになりました。そこで、松本紹圭のnoteマガジン内に新たに「グッド・アンセスターマガジン」を設け、みなさんの「#グッドアンセスター」を集めていこうと思います! 第一号は、僕も信頼を寄せる長年の友人でライターの杉本恭子さんのグッドアンセスター。本マガジンは、みんなでつくるマガジンです。ぜひ、読者のみなさんもご自身のnoteやSNSから「#グッド

結婚、おめでとう。

光明寺の長女、桜子ちゃんの結婚式。僕が23歳で弟子入りして住み込みを始めたとき、桜子ちゃんは10歳くらいだったわけで、時の流れを感じる。お相手は、お坊さんではなくて、ビジネスマン。なんの因果か、僕に披露宴での主賓スピーチ(新郎側・新婦側、各一名のみ)の大役が回ってきたので、ずいぶん頭を悩ませた。 人前で話すことは慣れているとはいえ、お坊さんだけに、おめでたい席は不慣れだ。しかも「5分以内で」との厳命もあり(実際、聴衆も長い話は嫌だろう)、なおかつ、お寺の看板にふさわしいおよ