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松本紹圭の方丈庵

このnoteマガジンは、僧侶 松本紹圭が開くお寺のような場所。私たちはいかにしてよりよき祖先になれるか。ここ方丈庵をベースキャンプに、ひじり仲間と対話と巡礼の旅に出ませんか? … もっと読む
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#これからの時代

ローマン・クルツナリック『グッド・アンセスター:わたしたちは「よき祖先」になれるか』を翻訳して

「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」 このゴーギャンの有名な作品と同じ問いを、幼少期より抱いて生きてきました。社会の仕組みから一定の距離をおき、寺を持たない僧侶の道を自ら選んで20年、自らに問い続けて今日に至ります。 2020年秋、イギリスの文化思想家ローマン・クルツナリック氏と対談をするにあたって彼の著書を読み終えた時、知り合って間もない彼に「あなたの本を私に翻訳させて欲しい」と頼んでいました。「私たちは、よき祖先になれるだろうか」という本書の

方丈庵 Latest News|2021.9.1

◉ 『VISUAL SHIFT』対談記事掲載のお知らせ (株)アマナのクリエイティブサイエンティスト 山根尭さんと、対談させていただきました。 『VISUAL SHIFT』  未来に資するクリエイションの在り方  https://visual-shift.jp/22108/  https://visual-shift.jp/ ◉ 『WEB サンガ・ジャパン』連載のお知らせ 雑誌 『サンガ・ジャパン』に連載していた、松本紹圭がホストをつとめる「Post-religion

死者の民主化

「喪失そのものが不確実で、失ったかどうかがはっきりしない喪失」は、あいまいな喪失、と呼ばれる。 コロナのような感染症が蔓延すると、あいまいな喪失が増える。僕の身近でも、コロナで親戚が亡くなったけれど、通常の葬儀をあげることが叶わず、家族ですら遺体に面会することが困難で、そうしたあいまいな喪失体験が心に影を落としているという話を聞いた。 しかし、この傾向は、実はコロナに始まったことではない。もう何年も前から、新聞のお悔やみ欄には「家族葬」「密葬」「会葬お断り」「遺族だけで執

「先祖から祖先へ」の転換と、新しい日本的コモンズ

ヒューマン・コンポスティングというテーマがなぜこんなにも自分の心を捉えたのか。よくよく考えてみると、それは「コモンズ」に関する問題意識につながることが、段々と見えてきた。 近年、「コモンズ」という言葉を見かけることが増えている。コモンズとは、一言でいえば、共有財だ。ある財が共有されるということは、その財が「私の財」でも「あなたの財」でもなく、「私たちの財」として成立しているということだ。そこで出てくる問題は、「私たち」とは誰か、ということ。コモンズに関する世界的な議論で、よ