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家康、江戸を建てる(ネタバレなし感想)

そもそも何を持ってネタバレとするのか曖昧なジャンルの小説ですが、第155回直木賞受賞作でドラマ化もされた歴史小説「家康、江戸を建てる」門井慶喜著の感想を書いていこうと思います。


この作品を読んだきっかけは、audibleで作品を物色していたときに見かけて「江戸時代の歴史小説はあまり読んだことがないな」と思ったのがきっかけでした。

個人的にaudibleは小説と相性がそこまで良くないと思っていますが、この作品に関しては違和感なく聞くこととができました。

作品のあらすじは、豊臣秀吉による小田原征伐の後、関東に国替えになった家康が(というより家康の家臣たちが)江戸の町を築いていく物語です。

描かれている歴史的事実は学校で習っていたり、遺構が残っていたりするものばかりで、ともすればただの仕事小説のようになりかねないテーマですが、ある事実がこの作品と作品が描いている時代に別の視点を与えています。

豊臣家の存在です。

家康が江戸に入ったのが西暦1590年。
最終的に豊臣家が大坂夏の陣で滅びるのが西暦1615年です。

そして、その間に西暦1600年の関ヶ原の戦いもあります。

家康が江戸に入ってから豊臣家が滅び、名実共に家康が天下人となるまでの25年間も江戸の整備は進められていました。当然、その中には大阪に対抗する通貨制度の整備、全国の大名を動員した江戸城の天下普請も含まれています。豊臣家の目を気にしながら数々の事業を進めるバランスが作品に独特の雰囲気を与えていました。

この時代を語る上で欠かすことのできない、関ヶ原の戦い、大坂冬の陣、大坂夏の陣は作中で直接的に描かれることはありませんが、「家康、江戸を建てる」を読むことでこれらの戦いを別の視点で見ることができるようにはなると思います。

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