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良いインフレと悪いインフレについて考える

「良いインフレ」「悪いインフレ」とは?

財政政策の話を聞くと、よく「良いインフレ」「悪いインフレ」と言う用語を耳にする。
具体的には、
「インフレが行き過ぎると悪いインフレになってしまう」
「年2%程度のインフレは良いインフレだ」
といった感じで使われる。

しかし、その際に何が「良いインフレ」で何が「悪いインフレ」なのかと言う議論はされないことが多い。なのでここでは「良いインフレ」と「悪いインフレ」の違いについて考えようと思う。

整理の観点としては「規模」と「質」を用いる。
規模はインフレ率の大きさ、質は物価上昇の原因について考える。

インフレの規模

政府日銀はインフレの目標を2%に掲げている。つまり、1年で2%物の値段が上がることを目指していると言うことである。
2%の物価上昇がどのくらいかというと、消費税が上がる時は2または3%の幅で上げていたので想像しやすいと思う。2~3%程度の値上がりであれば、たとえ一夜にして物価上昇が起きても大きな影響がないことは証明済である。給与も連動して上がることが見込めるなら消費税よりも混乱は少ない。
これで、諸外国とのインフレ差が縮まって購買力が高まるのだとしたら、確かに2~3%程度のインフレは良いインフレであると言えるだろう。

同じように、消費税で上がったらと考えるとどのあたりから悪いインフレになるのかが体感として分かってくると思う。ジンバブエやベネズエラのような数千%は論外として、例えば1年で消費税が6%上がったとしたら僕自身の場合だと抜本的に支出を考え直すと思う。例え給与も6%上がる見通しがあったとしても貯金との相談になってくると思う。
そうすると、物価は上がっているのに物は売れない。つまり不景気下でのインフレであるスタグフレーションが発生するのではないかと思う。
体感的な意味でも、MMTなどで主張するインフレ率のラインは妥当なのではないかと思う。

インフレの質

次にインフレの質について考えていく。
ここで考えるのは給料が上がるインフレかどうかである。給料が上がるインフレが「良いインフレ」で給料が上がらないインフレが「悪いインフレ」と考える。
例えば、インフレが起きていても値上がり分が国外に流失してしまえば国内で給与を引き上げる原資がなくなり昇給なき物価上昇になってしまう。そうすれば残るのは高くなった品物と買えなくなった消費者だけである。

具体例を挙げると現在の原油高である。
確かに、原油高によってガソリンをはじめとした物価は高騰しているが上昇分は全て産油国に渡ってしまい日本国内には残らない。これではどこも給料を上げることは出来ず、購買力はどんどん下がってしまう。

これは妄想の域を出ないが、本稿執筆時点で国会で議論されているガソリン税の引き下げに関する議論で与党が引き下げを渋っているのはガソリン価格の値上がりによってインフレ目標を達成しようと考えている人たちがいるからではないかと思ってしまっている。

しかし、論じたように値上がり分が全て外国に流出してしまうインフレは購買力の減少を招く悪いインフレである。政府にはインフレ率だけに注目するのではなく、どれだけ国内で富が循環しているかに着目してもらいたいと思っている。

良いインフレを起こすには

では、何をすれば良いインフレを引き起こせるのだろうか?
上記の議論に従うと、国内で富が循環するような経済活動によってインフレ率2~3%を目指せば良いことになる。

具体的には土地という制約によって国内で富が循環しやすい

  • 観光業

  • 農業

や、日本語によって市場的に国内で保護されている

  • 出版

  • 教育

などの産業を政府が育成していくことが考えられる。
他にも探せば様々な産業が当てはまるだろう。

消費者としても、国内で富を循環させることを意識して消費を行うことで巡り巡って自分達の生活を豊かにすることができると思う。
例えば、国産品と外国産で迷った時に国産品を買ってみるであったり、牛丼屋でトッピングを一つ増やしてみたり。

あと、労働分配率や、価格に占める国内外への分配率を株主の外国籍比率も踏まえて算出したリストなどがあれば消費をする上での参考になって面白そうだなと思う。(他力本願)

最後に

最後に、インフレ全体に対する見解を述べてみる。
ときどき、「400円程度で美味しい牛丼が食べれて治安が良い日本は素晴らしいのだから低インフレでも良いじゃないか」という意見を耳にする。
確かに、それらが1生活者として素晴らしい環境であることは否定しない。しかし、物価の低い状況に甘んじれば外国産の物の値段が相対的に高くなり、食料品を含む多くのものを外国からの輸入に頼っている日本はどんどん貧しくなってしまう。
最近、iPhoneの価格が平均月収の何%に当たるかという記事が日経新聞に載っていたように、外国のものが高すぎるという状況は既に始まっている。
インフレはいつか達成すれば良い目標ではなく、今すぐ達成しなくてはいけない課題なのだと思っている。


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