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リモートユーザーテストのやり方 #後編


同時に書いた"前編"では、リモートユーザーテストをするための事前準備や記録方法について紹介してまいりました。
後編ではより実際にリモートで実査、分析をどのように進めればいいのか、まとめております。


実際にテストしてみよう

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実際にテストを行うときに、気をつけたポイントを紹介します。
"前編"の「利用するツール・環境とは」の章で紹介した、セットアップ方法やアプリ通知の切り方のガイドも、すぐに説明できるように用意を忘れないでください。

1.すべてのユーザーテストで共通して気をつけたポイント
2.ユーザービリティテストだからこそ気をつけたポイント


1.すべてのユーザーテストで共通して気をつけたポイント


■斜めに着座する

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普段対面でテストを実施するときは圧迫感を緩和するために、真正面をさけて斜め(くの字)や横並びで座るように心がけています。私はリモート実施のときも同じように、被験者が映るデバイスを少し斜めに配置し、正面に記録用PCを置いていました。

今ではリモート会議にだいぶ慣れてきました。しかし、初めの頃はPC画面をみながら話している最中に相手の視線を追ってみると、こっちを見ているようで目が合わないので不気味でした。リモートテストでも同じような印象を被験者に与えないようにしていました。

複数デバイスがない人やモニターのみの人は、しっかりとカメラに向かって質問や受け答えをするだけではなく、常に見られていると被験者に圧迫感を与えるので、適当なタイミングであえて目線を外す意識もしてみてください。


■アイスブレイクをいつもよりも長めに

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対面で実施するとき以上に、相手の表情・テンション・会話の間といった情報を時間をかけてつかむことで、その後の進行もスムーズになります。

相手が話そうとしたタイミング自分が何度も被せてしまったということは、オンライン会議をしたことがある人は一度は経験したことがあるかと思います。特に被験者の会話の間を知ることは、インタビューをスムーズに進行する上でとても大切でした。


■声を大きく

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耳をたてないと聞こえない、部分的にしか聞こえない状況は被験者にとってもストレスです。また聞き直すことが増えるとインタビューの流れも止まってしまいます。アイスブレイクでどれくらいの声量が聞きやすいか、相手と自分のマイク音量は適切か確認しておきましょう。 


  ■反応をちょっと大きめに

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「オンライン会議だと相手が聞いているのか、聞いていないのかわからない」、「なんだか寂しい」といった思いをしたことはないでしょうか?
画面越しですと自分の身振りも見えにくいので、いつもよりも大きく相槌をうつことで被験者も「話を聞いてもらえている」と思って、安心してくれます。
もちろん意見や価値観を方向付けにつながる、過度な反応にならないように注意してください。


■同席者や情報の取り扱いはしっかり説明する

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オンラインでの実施では被験者が直感的に「顔がどこかのメディアにでてしまうのではないか」、「不特定多数に配信されていないだろうか」、「自分のスマホの中の情報が流出しないか」と思うことも考えられます。

一切録画記録しない場合でもしっかりその旨を説明しましょう。
むろん記録するときには何が記録されるのか(インタビューの会議風景、スマホ画面など)、どのような用途で利用されるのか丁寧に説明しましょう。
これを実践するだけで、被験者も気が緩み安心して話してもらえました。

また同席者がいる場合は、どのような目的で同席しているのか踏まえて、最初に紹介しておくことで違和感を与えることなく進行できます。
リモート実施の副次的な効果としてプロジェクトメンバーのユーザーテスト参加への心理的なハードルも下がります。なのであらかじめ同席人数を制限するなど、蓋を開けてみたら大人数が参加していた....とならにように気をつけたいです。 


  ■こちらの状況を伝える

'リモートでのインタビューでは、「こちらはインタビュアーと記録係の二人がいます。PCでメモを取るのでちょっとタイピング音が聞こえてしまうかもしれません。」ということを事前に伝えると良いです。'

出典:リモートワーク・テレワークでのユーザーインタビュー・ユーザビリティテスト実践方法  | Goodpatch Blog

コロナの影響で在宅でインタビューを実施させていただいてることだけではなく、被験者を不快にさせないためにタイピングの音や生活音が聞こえるかもしれないことを事前にお伝えすることも大切です。(自分にこの観点はなかったので自戒をこめて転載…)


2.ユーザービリティテストだからこそ気をつけたポイント

■思考発話を促す

思考発話

プロトタイプを用いたテストでは被験者の操作(タップ、スクロールなど)の観察が必要です。ただ問題としてはミラーリングした画面の共有ではタップした箇所をすべて把握するのは難しいことです。

・どこを、どのように操作しようとおもったのか
・どうして操作しようとおもったのか

上記2つを知るためにユーザービリティテスト時は、被験者に思考発話をお願いしました。思考発話とは頭に浮かんでいることをそのまま「独り言」のように発してもらうことです。

「他に(このアプリで)なにできるんだろ」「ここひらいたら(ハンバーガーメニュー内)わかりそう」といったように被験者の発話から、観察できなかった操作やその背景にあった思考を一定カバーできます。

ただ思考発話することに被験者の意識が向きすぎると、タスクに集中できずに正確にテストができないので、喋らせすぎないように注意してください。

このように思考発話は被験者に負担がかかるので、事前準備でプロトタイプのリンクをできる限りつないでおくことでできる限りタップした箇所がわかるようにしておくことも忘れないでください。



リモートでも一緒に分析しよう

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対面実施であれば、リサーチルームのバックヤードでテストで得られた気づきをポスト・イットに書いて簡易的なブリーフィングをし、テスト終了後に詳細分析をすることもかんたんです。また、価値観や利用実態を知るためのデプスインタビューであればKA法や上位下位関係分析のように、みんなでホワイトボードやポストイットを利用して分析することがあるでしょう。

今回の私が実施したリモートテストはユーザービリティー調査や感性評価がメインだったので、分析はエクセルで上で行いましたが、以前実施した調査ではFigmaを用いた遠隔での上位下位分析を行いました。

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そこではFigma上で発言をひたすら書き出し、その発言の想い・心理、さらにそれらの想い・心理や共通した考え方や価値観で分類しました。Figmaはリアルタイムで共同編集できるので非常にオススメです。

また、オンラインで利用できるホワイトボードサービスであるmiroも、分析に使えるテンプレートが充実しているので使ってもみてもいいかもしれません。



課題と今後の展望

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様々なツールを使うことでリモートでのテスト・インタビュー調査が実施できるようになりました。いままでの対面実施と比べると、もちろんセットアップの手間は増えましたが、被験者が自宅から参加できるため会場へ移動する必要がないことを考えると、トントンなのかもしれません。

これから被験者のスクリーングをするときには、必ずしもお住まいを制限とせずに、適切な人に対してリモート実施と対面実施を柔軟に使い分けてもよいかもしれません。

ただリモート実施にも課題は残っています。

■被験者の表情の変化・身体的動きがわかりにくい
インタビュー調査では言語情報以外の情報も欠かせませんが、対面実施と比べてオンラインではより注意深く観察しないと十分な情報は得られません。


■スマホ画面の共有・操作した箇所の認識が難しい
先程もふれましたが、ユーザービリティテストにおいて被験者がタップやスクロールした箇所のトラックできません。サンプルを増やして、精度を担保するのが現実的な解決策なのかもしれません。


■ITリテラシーを考慮した対応が必要になる
今回ご協力いただいた被験者さんはITリテラシーが高く、セットアップもスムーズに終えることができました。ITリテラシーによって分かりやすく丁寧にガイドしてあげることが必要ですが、募集したい被験者のITリテラシーが低い場合はそもそも実施が難しい可能性もあります。


さいごに

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コロナの影響でテレワーク・リモートワークに切り替わった方々は、その変化に適応するのも一苦労かと思います。

私自身もその一人でした。
ユーザーテストを控えた前日の夕方、

「明日から在宅勤務に完全に切り替えるので、ユーザーテストもリモートで実施を」とのメッセージ。

正直、とても慌てました。

そのときは、「ユーザーテストなしにUXなし」とよく分からない言葉で、自分を奮い立たせ必死で準備しましたが、今後はみなさんと知恵を出し合いユーザー調査の引き出しを増やして、一人でも多くの方がより素敵なリモート調査ライフを送れることを願っております。



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