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折りたたみ傘

 小2くらいの時に親に買ってもらった折りたたみ傘。親に買い与えてもらった多くのものの一つにすぎない。

 小学校の時は、ランドセルの軽量化のため基本持ち歩かず、遠足用のリュックに眠らせていた。
 中学、高校では自転車通学のため使うのはカッパ。やはりこの時も旅行用のバックで眠らせることとなった。
 大学生になると、通学やバイトへの通勤、必要となる荷物が減った。もちろん指定のバックもない。そこで私は折りたたみ傘をバックに忍ばせるようになる。小2で買ってもらった、『あの』折りたたみ傘だ。
 大学3年生の春の日、お昼から雨が降った。私はアプリで天気を確認していたので、予め長傘を持って登校した。最近の天気予報は良く当たる。お昼から雨が降ったのだ。お昼に帰らないといけなかった私は、長傘を揚々とさして帰路につく。ふと、目の前には傘を忘れたのであろう、手傘で雨をしのぐ学生が一人。

『私は、キャンバストートから“例の”折りたたみ傘を取り出すと、「よければ、これ使ってください。」とスマートに人助け。』がしたかったのである。あわよくば、友達なりたかったのである。しかし、勇気が出ず。結局その人は、違う道に行ってしまった。これは春の苦い思い出。次こそは、この鞘に収まった折りたたみ傘で明るい思い出を、“斬り”開きたいものだ。

※小2からずっと使っている傘。当時からさっきまで、親に買い与えてもらったものの一つにすぎないと思っていた。しかし、ここまで長く使っていることを意識した時、自分との歴史もある気がして、古くからの味方のような気がして、途端に今までより愛着が湧いた。このように何か特別じゃなくても、日常に温かい気持ちになるものを提供できたら素敵なんじゃないかと思う。

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