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連載/デザインの根っこVol.21_佐野 文彦

商店建築社

建築家やインテリアデザイナーにインタビューを行い、衝撃を受けた作品などのインプットについて語っていただく連載「デザインの根っこ 」。今回は「商店建築」2020年2月号掲載、佐野文彦さんの回を公開します。

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形に意味が宿る。
ものを何に見立てるか

 ヨーロッパを2カ月周った時に出会った、リチャード・セラの作品が強く印象に残っています。イタリアやパリの街中、グッゲンハイム・ビルバオで見たのですが、曲がった鉄板が2枚立っているだけなのに、間に挟まれると空間を感じる。シンプルな構造体だけですごいと感銘を受けた記憶があります。

 帰国後、設計事務所での勤務を経て自身の事務所を立ち上げたのですが、所員時代も終わり際になると「コンセントの位置をデザインしたいわけじゃない」と考えることが多くなりました。もちろん、設計において不可欠なことではあるのですが、機能的な要求を満たすことだけが設計ではありません。そう考えた背景には、セラの作品を体験したことがあったのだと思います。

 その思いもあって、独立してからは空間設計だけではなく、展示のためのアート作品もつくっています。それぞれ頭の使い方から分けていて、空間設計時はまずコンセプトから平面を考えて、構成要素を置き換えていくようなつくり方をしています。レイアウトありきで、その中にどんな表現を取り込めるかを考え、互いにバランスを取りながら並走するイメージです。一方作品づくりはもっとピュアです。コンセプチュアルに何を見せるのか、自分らしい手法とはどんなものかを突き詰めて考え、場所やものが持っているコンテクストを形にしていきます。

あるはずのないものがあるという状況

 とは言え、与件によって考え方は変わります。「BizReach 新南口オフィス」(19年10月号)のような事例では、用途が限られるような特殊な設えはあまり求められませんでした。必要な機能は満たしつつ、いかに他のものに置き換えられるかという点で、「見立て」と「もの派」的なアプローチを意識しました。例えば受付にある、タブレットを置いた台。四角いテーブルでも、1トンの石でも、丸太でも構わないわけです。待合スペースにしても、ベンチでなくても岩や切り株でも良い。前述のオフィスでは、大きな階段を置きましたが、特に使い方を決めていません。設計時だけではなくて、使い方も自由に見立てて良いのです。いくつか置いた木も同様で、具体的な機能はありませんが、花が咲いたり花粉が出たり、屋内では通常存在しない、屋外の要素が現れます。オフィスにこもっていると自然を感じることも減りますが、それらの木々を通して自然を見ることができます。最近、材料をそのまま見せたりしているのは、あるはずがないものがある、そこに置かれるまでと、その先にある状況に関心があるからです。

現象をつくる

 関連して、デンマークの美術館で見たオラファー・エリアソンの作品も印象的でした。トンネル状の空間が濃いスモークで満たされていて、光が拡散しているのですが、歩いているといつの間にか光の色が変わっていく。現象を人工的につくる姿勢に共感していて、少し前までつけていた「studio PHENOMENON」という事務所名も、現象をつくりたいという思いを込めたものです。

 デザインする時に意識しているのは、形よりもコンセプトの方が大事だということ。出来上がったものがきれいなのは当たり前ですが、良い感じのものをつくるためにデザインするわけではありません。美しい木目を持つ木は、人に美しいと思って欲しくて育ってきたのではないのです。       〈談/文責編集部〉

さの・ふみひこ/1981年奈良県生まれ。京都、中村外二工務店にて数寄屋大工として弟子入りした後、設計事務所勤務を経て2011年佐野文彦studio PHENOMENONを設立。空間デザインやインスタレーションを手掛ける。最近の仕事に「BizReach 新南口オフィス」や「Sushi Hibiki」(2020年2月号)など。

紹介作品一覧

1.The Matter of Time
リチャード・セラ
2.Din blinde passenger
オラファー・エリアソン
3.磐座
佐野文彦

掲載号の「商店建築」2020年2月号はこちらから!


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