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連載/デザインの根っこVol.22_唐沢 洋介

 建築家やインテリアデザイナーにインタビューを行い、衝撃を受けた作品などのインプットについて語っていただく連載「デザインの根っこ 」。今回は「商店建築」2020年3月号掲載、唐沢洋介さんの回を公開します。

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カルチャーに触れ、空気感をつくる

 僕はあまり趣味がないのですが、これまでを振り返ると、熱中したものが二つだけあります。ひとつはスケートボードで、小学校低学年の頃、親からプレゼントでスケートボードをもらったことがきっかけでした。すっかりハマって、ビデオを買って技を覚えては練習して、友達にも声を掛けてずっと滑っていました。どのスポーツでもそうだと思うのですが、練習して、技が決まった瞬間がとても気持ち良い。負けず嫌いなこともあり友達とみんなで練習して解散した後も1人で練習していました。

 その時は、スケートボードを通してストリートカルチャーと近いところにいた感覚があって、古着を着たり、音楽もHIP HOPなど、ショップやパークで流れているものを好んで聴いていましたね。大会にも出場しましたし、チームをつくって名前までつけたりしたのですが、高校3年生になる頃、進路を考えるタイミングであまり触らなくなっていきました。一時はプロになりたいとも考えていたんですけどね。それからもたまに滑ったりしたのですが、やっぱり練習をしないとどんどんできなくなっていく。そのうち怪我をするなと思って、ますます遠のきました。とは言っても、ボード自体は今の家にも置いています。

 もうひとつ熱中したのは、デザイン。小さい頃から工作や美術が好きだった延長で、高校受験の頃には建築の道に進むと決めていました。スケートボードと並べると、全然違うジャンルではありますが、勉強して練習して、できなかったことができるようになった達成感には近いものがあるかな、と思っています。アシスタントとしてデザイン事務所に入社してからも負けず嫌いな性格が出て、終電まで仕事をした後、遅くまで開いている本屋に通ってデザイン本を読むのが日課になっていました。努力という感覚ではなくて、夢中になったと言った方が近いかもしれません。

スケートボードに興じる幼少時代の唐沢氏(画像提供/唐沢洋介)

つくり込まれた空気感

 以上の二つとは少し違った視点で「衝撃を受けたもの」について考えると、専門学校に通っていた2000年、幕張メッセで観たバンド「アンダーワールド」のステージに圧倒されました。映像やレーザーなど空間と音と光が一体となって、雰囲気というか、空気感からとてもつくり込まれていたのです。アンダーワールドも所属している「トマト」というデザイン集団が手掛けたもので、音楽単体だけではなく、空間をつくっているように感じました。好きな建築は何かと聞かれると答えに迷ってしまうのですが、あの時の空間はまだ覚えています。今、自分がつくりたいと思うものとも共通しているかもしれません。もちろんレーザーが飛び交っている空間という意味ではありませんが。

アンダーワールドのライブ

色を付けるのではなく、色が付く

 僕は常々「空気感」をつくりたいと考えています。極端な話、そのためならデザインは何でも良いとさえ言えます。これまでのデザインに共通しているのは、自分が行きたいと思うお店しかつくらないということ。そのために色々な業態に挑戦していますし、食わず嫌いせず、何でも経験してみることを大事にしています。またデザインの好みはありますが、設計したお店がビジネスとして成功することが第一です。クライアントの立場ならどうか、ということを重視しているのです。一度要望を全て受け止めて、センス良く整える。その過程を経て生まれるデザインは、自分の色になっているはずです。
〈談/文責編集部〉

からさわ・ようすけ/1980年群馬県生まれ。専門学校卒業後、清野燿聖事務所、Yoなどを経て2018年唐沢洋介デザインオフィスを設立。最近の仕事に「Restaurant&Bar AJO」(19年9月号)や「変なホテル 浜松町/mobility lounge “MUGI”」(18年12月号)など。飲食店やホテル、ブライダルなど幅広いデザインを手掛ける。
※内容は商店建築2020年3月号発売当時のものです。

紹介作品一覧

1.スケートボードに興じる幼少時代の唐沢氏
(画像提供/唐沢洋介)
2.アンダーワールドのライブ

掲載号の「商店建築」2020年3月号はこちらから!


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