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今そこにある危機

 ハリソン・フォードが出演した映画のタイトルにも同名のものがあったが、私が今回取り上げたい「今そこにある危機」は異常気象や気候変動の問題だ。<字数:1,660文字>

 気候変動の原因や影響は科学的に分析され、世界で共有されるようになった。地球の危機にまつわる、今知っておきたい重要な数字や指標を紹介する。 

“異常気象がニューノーマルになりつつある事態に社会が適応できるよう、私たちは取り組みを強化しなければならない”

世界気象機関(WMO)のペッテリ・ターラス事務局長

 上記は世界気象機関(WMO)のペッテリ・ターラス事務局長が昨年7月に出した声明だ。昨年6月の世界平均気温は史上最も高く、7月に入っても熱波が続く一方、極端な降雨が各地で頻発していることを受けて、「ますます頻発する異常気象は、人間の健康、生態系、経済、農業、エネルギー、水の供給に大きな影響を及ぼしている」と語った。

1⃣ 2100年までに気温は最大4.4°C上昇
 
1850~1900年を基準にした、2100年までの世界平均気温の変化予測によると、石油や石炭などの化石燃料に彼存した発展を進め、気候政策を導入しない場合(最大排出量シナリオ)、今世紀末までに3.3~5.7Cの昇温を予測。4.4°Cは最も可能性の高い数字だ。気温上昇に伴う熱帯病の製延といった新たなリスクも懸念される。未来の日本の夏は、5月下旬には連日の猛暑日に、7月から8月の最高気温は全国各地で45℃を確実に超えるだろう。

2⃣ 10年に1度の大雨は1.5°C上昇で1.5倍に増加
 気候に対する人間の影響がわずかだった1850~1900年に、平均して10年に1回発生するような大雨が、平均気温の上昇によってどのくらい上昇するかを示した数字だ。雨の強度も10.5%増加すると予測されている。2°C上昇した場合は頻度が1.7倍、強度は14%増加する。4°C上昇した場合は頻度が2.7倍、強度は30.2%増加するという。ゲリラ豪雨が「ゲリラ」でなく、一般的な雨だと認識される日が来るのだろうか。

3⃣ 世界の平均海面水位は20センチ上昇
 1901~2018年の間に上昇した世界の平均海面水位だ。モルジブなど標高の低い島国は、海面上昇により国そのものの消滅の危機に陥っている。
さらに、2100年までの世界平均海面水位上昇量は、1995~2014年と比べて、28~101センチ上昇すると予測されている。低い数字は気温上昇を1.5°C以下に抑えた場合、高い数字は気候政策を導入しなかった場合。島嶼国や海抜の低い海沿いのエリアは大きな影響を受ける。

4⃣ CO₂排出量を45%削減する必要がある
 2021年の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)で採択された「グラスゴー気候合意」において、2030年までに2010年比で二酸化炭素(CO₂)排出量を45%削減し、2050年までに実質ゼロにする目標が掲げられた。気温上昇を1.5°C以下に抑えることの必要性があらためて確認され、それを達成するための目標だ。この目標はなんとしてでも達成しないと私たちは未来の子どもたちに「(かなり傷ついてしまってはいるが)美しいままの地球」を渡すことができなくなる。

5⃣ 33〜36億人が気候変動に対して非常に脆弱
 約33~36億人が、気候変動に非常に脆弱な状況下で生活している。脱弱な状況が特に多く発生しているのは西・中央・東アフリカ、南アジア、中南米、小島嶼開発途上国、北極圏。2010~2020年、脆弱性が高い地域においては洪水や干ばつなどに起因する人間の死亡率が、脆弱性が非常に低い地域と比べて15倍高かった。

6⃣ 経済損失は4兆3,000億ドル
 1970年から2021年の間に報告された、異常気象をはじめとする気候や水に関連する災害は1万1,778件に上り、200万人強の死者と4兆3,000億ドルの経済的損失が発生した*。特に発展が遅れた途上国や島嶼国は経済規模に対する損害額が大きく、また世界で報告された死者の90%以上は途上国で発生したという。

 1⃣~6⃣までの世界気象機関(WMO)が出したデータは、昨年7月のものである。今年の夏はどうだろう。昨年の夏とは比べ物にならないほど暑くないだろうか。日本の夏も半袖では過ごせない時が来るのではないかと思うぐらい太陽光にさらされた腕がじりじりと焼けているような気がする。人間が「ゆでガエル」となって気づかないまま死んでいるなんてことになってしまうのではないだろうか。

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