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小学生に「人権と福祉」を教える難しさ

 このたび、小学生を対象に「じんけん」について教えるという、ステキな、そして私にとってはチャレンジングな機会をいただいた。これまでこのテーマでワークショップをしてきたのは、大学生がメインで、若くても高校生だったので、私にとっては嬉しいチャンスをいただき、同時に、小学生にいかにわかりやすく「じんけん」「ふくし」を教えるか、楽しみながら試行錯誤を重ねる時間となった。高校教師時代の教え子で、愛知県大府市で「マナビのWA」という企画を主催している矢野良太氏からの依頼で実現した。昨日のワークショップで使用したパワポレジュメの一部を使って、内容を説明する。小学生向けなので、ひらがなが多いのはご容赦いただきたい。

1.「じんけん」ってなんだろう?

 「じんけん」ということば、きいたことはありますか? あなたもわたしも、おとなもこどもも、世界中のだれもが「ひとりのたいせつな人間」として、うまれたときからずっともっているのが「人権(じんけん)」です。    
 わたしたちはだれでもみんな、ひとりの人間として、いのちがまもられ、社会のルールの中で、あかるくたのしい生活をおくる権利(けんり)をもっています。それが「人権(じんけん)」です。

2.「じんけん」が守られていないってどんなこと?

 みなさんは、あなた自身が何をされたらイヤな気持ちになりますか? 
 たとえば、もしもあなたがだれかから「いじめ」をうけていたら、どんなきもちになるでしょうか。ちっともたのしくなくて、かなしくてつらい生活になってしまいますよね。こころやからだをきずつけ、つらいきもちにさせる、この「いじめ」は、その子の人権(じんけん)をきずつけるとても大きな問題です。

3.世界には「じんけん」が守られていない子どもたちがたくさんいます。知っていますか?

 ① たとえば、ロシアという国がウクライナという国にたくさんの爆弾  
 (ばくだん)を落とし、子どもたちが死んだり、ケガをしたり、家がなく
 なったり、家族をなくしたり、家族とひきはなされてロシアに連れていか
 れたりしています。みなさんが同じことをされたら、イヤな気持ちになり
 ますよね。そうなんです。ウクライナのたくさんの子どもたちの「人権 
 (じんけん)」が守られていないのです。

 ② たとえば、カンボジアという国(くに)は日本と同じで、子どもを小
  学校に6年、中学校に3年通わせることが親の義務(ぎむ)になってい
  ます。 日本の子どもは100%小学校・中学校を卒業(そつぎょう)
  できます。でも、カンボジアの子どもは40%くらいしか中学校を卒業
  することができません。
   カンボジアでは、子どもは家の仕事を手伝わなければならなかった
  り、近くに学校がなかったり、幼い弟や妹の世話をしなければならなか
  ったりして、学校に通うことができないのです。「学校に通えないこ
  と」で、どんな悪いことがその子どもに起こると思いますか。

   学校に通えないと、「読み書きができない」「収入の安定した仕事が  
  できない」「収入が少なく食料が買えない」「十分な栄養が取れず病気
  になる」「仕事ができなくなり、その子どもが親の代わりに仕事を手伝
  わなければならない」「その子どもも学校に通えない」というマイナス
  の連鎖(れんさ)がおこります。学校に通えないと読み書きができませ
  ん。次の質問に答えてください。

   「あなたのおかあさんが高熱を出して苦しんでいます。 でも近くに病  
  院はなく、医者のいる町へ出るには山道を1日歩いた上にバスに7時間も
  乗らなければなりません。 いつもは先生が薬を出してくれますが、先生
  は町に出かけて留守です。 いつも先生が“薬”を取り出している棚には、
  3つのコップが並んでいます。さぁ、3つの中から“薬”を選びだすこと
  はできますか?」

   文字を読むことができないと、“薬”を選ぶことはとても難しいと思い
  ます。ちなみに正解は、一番右側が薬です。カンボジア語(クメール
  語)で 左から「水」、「毒」、「薬」と書かれています。 もし文
  字が分からず薬だと思って、毒を選んでしまうと大変なことになりま
  す。このように、文字を読めないと命にも関わってきます。文字を読ん
  だり、書いたり することは、私たちにとって“あたりまえ”なことかも
  しれませんが、世界 には、それが“あたりまえではない”人々がたくさ
  んいるということを知っておいてください。みなさんは学校で「まなぶ
  こと」ができるから幸せですね。

 ③ みなさんは、トイレの水を飲むことができますか? トイレの便器
  (べんき)の中の水ではありませんよ。トイレで手を洗う水道の水のこ
  とです。飲めますか? 日本多くの子どもたちは「飲めない」と言いま
  す。でも、世界にはきれいな水を手に入れることのできない子どもたち
  がたくさんいます。
   カンボジアの田舎で暮らす子どもたちが飲んでいるのは、牛が飲むの
  と同じため池の「泥水」です。もし日本人がその水を飲んだら、おなか
  がいたくなって、すぐに病院にいかなければなりません。
   ルワンダの子どもたちは、飲み水を手に入れるために、毎日家族のた
  めに片道(かたみち)30分以上歩いて、20リットルの水をはこんで
  います。

 ④ みなさんは、1日3食ごはんを食べています。また、赤ちゃんの頃か
  ら病気にかからないように予防接種(よぼうせっしゅ)を受けていま
  す。でも、アフリカ大陸などの貧しい国では、1日に1食も食べること
  ができず、お医者(いしゃ)さんにもみてもらうことができず、予防接
  種もうけることができず、5秒に1人の割合で子どもが命を失っていま
  す。

4.みなさんの「じんけん」は守られていますか。クラスの友だちの「じん
 けん」は守られていますか。日本や世界のこどもたちの「じんけん」は守    
 られていますか。
  
  すべての人の「人権(じんけん)」を守るしくみのことを「福祉(ふく
 し)」と言います。むずかしいことばですが、「福祉(ふくし)」って何
 かときかれたら、小学生には「ふだんの くらしの しあわせ」と教えて
 います。
  「福祉」という漢字の「福」には「幸い(さいわい)」という意味があ
 り、「祉」には「祉い(さいわい)」という意味があります。「祉」と 
 いう漢字には「神・祭り・運」などの意味があり、「ネ」と「止まる」と
 いう字の合体で「神がとどまる=幸福」という意味の漢字です。神様とい 
 えば「自然の恵み」「社会全体」のようにもとらえらるので、「祉」とい
 う字は個人的レベルの幸福ではなく、「みんなの幸福」を表わす言葉で
 す。「福」は個人的な幸せを、「祉」は社会全体の幸せを指す言葉なんで
 すよ。 

  私たち一人ひとりには「その人がその人らしく幸せに生きる権利(=幸
 福を求める権利=人権)」があります。
  そして、「福祉」、つまり「一人ひとりの幸せとみんなの幸せ」は「毎
 日の私たちの暮らしの中にあるもの」なのです。
  
5.いろいろな「福祉」のありかた
   児童福祉(じどうふくし) = こどもを幸せに!
   高齢者福祉(こうれいしゃふくし)= おじいさん、おばあさんを幸
    せに!
   障がい者福祉(しょうがいしゃふくし)= 障がいのある人を幸せ
    に!
   医療福祉(いりょうふくし)= 病気やケガの人を幸せに!

 小学生の子どもたちに質問をしながら、ざっくりと、以上のような話をさせていただきました。あらためて「人権」と「福祉」を小学生に教えるのって難しいなと感じました。しかしながら、「人権」と「福祉」をいかにかみ砕いて教えるのかを考える素敵なチャンスをいただいたと感じています。主催者の矢野さんはじめ、集まっていただいたすべての皆様に心から感謝申し上げます。

私の記事を読んでくださり、心から感謝申し上げます。とても励みになります。いただいたサポートは私の創作活動の一助として大切に使わせていただくつもりです。 これからも応援よろしくお願いいたします。