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スマートシティ先進国デンマークの「コペンヒル」のスマートさが素晴らしい!

 スマートシティ先進国として名高いデンマークは、幸福度ランキングでも常に上位を誇る。

 デンマークにはロラン島という素敵な島がある。一度は訪れてみたい島だが、こんなに円が弱くてはおいそれと海外旅行に行くことはしばらくは難しそうだ。ロラン島の魅力は、ひらけた大地にそよぐ麦の穂、牧草地でのんびり草を食む牛たち、吹き抜ける風を受けて回るたくさんの風力発電の風車。開放感に満ちたロラン島の景色は、見飽きることがないと聴く。

 ロラン島は、自然エネルギーをしっかりと活用している。風の吹き具合も良く、日照時間も長いロラン島では、たくさんの風力発電機と太陽光発電機が設置され、年間約200万メガワット時の電気をつくっている。風力発電機の約半数は、農家や市民グループが所有する「マイ風車」だ。エネルギーは国や電力会社がつくるのが日本では当たり前だと思っていたので、個人がエネルギー設備を運営しているのは目からウロコの衝撃だった。

 あちこちの畑に積み上げられたわらの塊はバイオマスエネルギーの原料になっており、藁を燃やして出た灰は畑の肥料になるという。ムダのない暮らし方で持続可能な社会に寄与していることに感銘を受けた。現在、ロラン島の電力自給率はなんと800%。余利電力は首都コペンハーゲンなどに売電しているという。

 首都コペンハーゲンは、国内はもちろん世界でも「スマートシティ」の最先端だと言われている。2025年に世界初のカーボンニュートラルな首都になることを目指して、さまざまな先進的な取り組みを続けてきた。
 二酸化炭素を排出しない交通手段として、自転車に注目。自転車専用道の整備をはじめとした自転車優遇策を打ち出していることは世界的に有名だ。
エネルギー面では古くから取り入れている「地域熱供給」を効率的に運用している。
 日本ではあまり耳慣れない「地域熱供給」という言葉…それは、1か所でまとめて製造した温水や冷水を、バイプを通して地域内の住宅や施設に送り、冷暖房や給湯に利用するシステムだ。ボイラーの燃焼熱をはじめ、太陽熱などの自然エネルギー、工場廃熱など、さまざまな熱源を統合して熱利用できるのが素晴らしい。

 2017年に誕生したアマー資源センターは、ゴミ焼却を発電や地域熱に利用するエネルギープラントなのだが、通称「コペンヒル(Copenhill)」と呼ばれている。ゴミ処理施設といえば、なんだかに嫌なニオイがしそうだし、煙突から汚れた排気も出そうなイメージなのだが、デンマークでは近年、ゴミ処理施設の環境改善が進み、排ガス中の有害物質やフライアッシュ(石炭を燃焼する際に生じる灰の一種)の除去が高度に行われている。また、巨大な空気の吸込口をつくることでゴミ処理施設特有のニオイが建物の外に漏れないようになっている。さらに、施設の建物自体のデザインもスッキリした美しいデザインを採用しているところが多く、市民や子どもたちに向けた勉強会や見学会などのプログラムも豊富なので、ゴミ処理施設は市民にとってより身近な場所となっているのだ。

 コペンヒルは、コペンハーゲン近郊の5つの自治体で運営するゴミ処理施設、アマー・リソース・センターに位置する。ルーフトップはなんとスキー場。グリーンの人工スノーマットで覆われた幅60m、長さ450 mのゲレンデが広がり、一年中スキーを楽しむことができるのだ。デンマークは山のない国なので、山のような傾斜を、自然を少しでも感じながら登るという体験、スキーやスノーボードの体験をするには、海外に行くしかなかった。そんなこれまでの当たり前が、コペンヒルというアイデアを実現したことで、「学校の帰りにスキーに行く」「週末に友達や家族とちょっとスキー」という当たり前にアップデートされたのだ。
 さらには、500mのハイキングトレイルやランニングコース、世界で最も高いクライミングウォールも併設され、それぞれ、思い思いにスポーツアクティビティを楽しむ人でいつもにぎわっている。エレベーターもしくはリフトで上まで上がると、ルーフトップカフェで絶景を楽しみながら休憩したり、スキーを下りた後は、スキーカフェでゆっくり飲食を楽しむこともできる。海に面した方に目を向ければ、コペンハーゲンのミデルグルン洋上風力発電所や、スウェーデンへと続くオアスンブリッジも見える。コペンヒルには北欧の木や花々が植栽され、生物多様性の新しい拠点としての打ち出しも斬新で話題となった。

 コペンハーゲンは古くから自然との共存が大切にされてきた街だ。近年は生物多様性や気候変動による都市の高温化やゲリラ雷雨対策、自然環境が身近にあることでの心身両面へのポジティブな作用をより重要視している。建築物の屋上をフラットな形状にして緑化を奨励したり、車の車線を減らしてできたスペースや既存の公園に都市型水害対策のため、雨水を受け止めることができる緑地スペースを施したりと、都市計画にもさらにさまざまな工夫を凝らしているそうだ。

 あらためて振り返ってみると、デンマークの「スマートシティ」というのは、一般に言われるICTをはじめとする最先端技術を使っているという意味での「スマート」さよりも、人の知恵の使い方が「スマート」なのだと感じる。目の前の課題に対してどう視点を変えるか、どうやって知恵を絞るかというアプローチは、限られた予算で国や自治体の街づくりを模索している開発途上国にも、もちろん日本のように「スマート」とは言えない先進国にも非常に有効なのではないだろうか。


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