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子どもの貧困を考える~コロナ禍とロシアによるウクライナ侵攻による物価高騰の影響から~

 日本では7人に1人の子どもが貧困に陥っていると言われて久しい。
 日本における子どもの貧困の特徴として、「ひとり親家庭の半数が貧困状態にある」ことが挙げられる。厚生労働省の調査によると、ひとり親家庭の貧困率は50.8%で、先進国の中でも最悪な水準だ。
 しかしながら、「子どもの貧困」そして親から子への「貧困の連鎖」にさらに追い打ちをかけたのが「コロナ禍」と「ロシアのウクライナ侵攻に端を発した物価高騰」だ。

 まずは、基本的な「子どもの貧困」を見てみよう。
 ひとり親家庭は圧倒的に母子家庭が多いため、子育てをしながらでは正規雇用に就きにくく、安定した収入を得られないことが影響している。さらには親が1人で夜遅くまで働く場合が多いので、子どもと接する時間が短くなる。そのため、
 * 子どもは家事をすべてこなすため勉強時間の確保ができない
 * 1人で食事を取らなければならない
 * 放課後に友達と遊ぶ時間がない
などの問題に直面している。 
 「子どもの貧困」が深刻な問題であることはあまり知られていない。その理由は、貧困である子どもや親にその自覚がなかったり、自覚していても周囲の目を気にして、助けを求めなかったりするためだ。

 では、子どもが貧困により受ける影響と問題点は何だろうか。
貧困に陥っている子どもたちは次のような生活を送ることを余儀なくされている。

貧困状態にある家庭の子どもは、十分な食事が食べられない
 内閣府の調査によると、低収入世帯では朝食を食べていない子ども   が、非定収入世帯に比べて1.8倍高いことがわかっている。
 食事をとれていたとしても、親が仕事で忙しく、インスタント食やコンビニ弁当ばかりの食事で栄養摂取の偏りがあるという例もある。
 成長期の子どもにとって、栄養バランスのとれた食事は重要だが、満足な食事をとれなければ健全な成長を阻害する要因になる。

教育を受けられない
 内閣府の調査によると、子どもの進学率は家庭環境に大きく影響されることがわかっている。全世帯の子どもの大学進学率が73.2%なのに対して、ひとり親家庭では58.5%、生活保護世帯では33.1%、児童養護施設では24.0%まで減少する。その理由として考えられるのは、貧困に陥っている家庭は、塾に行けなかったり、参考書を買ってもらえなかったりなど、学習の機会が限定されてしまう傾向にあることだ。さらに、親の収入によって進学することができないといった教育格差が生まれてしまっている。

1人で家にいる時間が長くなる
 国は基礎的活動時間(睡眠・食事・身の回りの用事)と最低限必要な家事時間を設定し、「時間貧困」と定義している。低所得者層やひとり親世帯は時間貧困に当てはまり、国の調査によると親子が過ごす時間が短いことがわかっている。時間貧困世帯では、子どもと夕食を共にする頻度が「ほぼ毎日」である割合が半分に満たず、「週に1~2回」と答えた世帯は3割近くになった。親がいないことで子どもは宿題を見てもらえず、勉強をする習慣が身につかない。中には「お風呂の入り方がわからない」といった子どもの例もあるほどで、貧困状態の子どもは、成長の過程で学ぶべき当たり前の生活習慣を学ぶことができないのだ。

自己肯定感が低くなる
 貧困に陥ることで、自己肯定感が低くなる傾向もある。東京都大田区が行ったアンケート調査では、「自分は価値のある人間だと思う」かどうかについて、非生活困難層では63.0%だったのに対して、生活困窮層では49.7%という結果が出ている。「友達に好かれていると思うかどうか」に「そう思わない」という否定的な回答をした子どもの割合は、非生活困難層では20.9%だったのに対して、生活困窮層では31.6%でした。学校での休み時間を楽しみと思うかどうかについても、生活困窮層の子どもほど休み時間を「楽しみ」と回答する割合が低いという結果だ。
 貧困によって、周りの友達と比べて塾や習い事に行けない、親と一緒に過ごす時間が短い、服を買ってもらえないなどの経験が積み重なることで、「自分には価値がない」と思い込んでしまう傾向にある。
 このような自己肯定感の低下は、学習意欲を削ぎ、将来への夢や希望を失ってしまう原因になり得る。子どもが将来の目標を持てないことは、学力の低下へつながり、ゆくゆくは就業率などにも影響し、日本全体の損失へとつながりかねない。

 「子どもの貧困対策推進法」成立から10年が経っても、経済協力開発機構(OECD)加盟国中、12番目の高水準だ。そこに追い打ちをかけたのが新型コロナウイルスによるパンデミック(コロナ禍)、さらには、ロシアのウクライナ侵攻に端を発する物価上昇というダブルパンチだ。その結果、子どもや保護者の健康が脅かされる事態となっている。

 NPO法人キッズドアの調査によると、同法人に食糧支援を依頼した家庭のほぼ100%が物価高騰により家計が厳しくなったと回答し、食費や日用品、光熱費の上昇を実感しているため、エアコンをつけないようにしているという回答が7割もあるという。物価上昇により、子どもたちの健康や意欲にも悪影響が出ている。「必要な栄養が取れていない」「身長や体重が増えていない」「病気にかかりやすくなった」「勉強への意欲が低下した」「元気がなくなった」「学校の成績が悪くなった」「友達関係が悪くなった」…これが実情である。

 岸田政権が推進する「異次元の少子化対策」…「異次元」って、そもそも「これまでとは全く違った斬新な発想で物事を行う」という意味だと思うのだが…それほど斬新で素晴らしい対策とは思えない。そう思ってしまうのは、私が子どものころ見た『ウルトラマンA(エース)』に出てきたヤプールという異次元怪獣のイメージが悪いからかもしれない。ただ、異次元の少子化対策のせいで、子どもの貧困対策が遅れているというお粗末な結果にだけはならないでいただきたい。


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