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遊びを活かした発想ワーク

「生みの苦しみ」などと言われ、発想することは苦しい。そんな苦手意識を持っている方は少なくないと思います。

それは、発想するワークには「制約」が存在するからです。発想には、いつもよりちょっと背伸びするストレッチが必要です。しかし、過度なストレッチは、痛みとストレスを伴い、苦手意識を醸成し、もう二度とやりたくない!という気にさせます。

だからこそ、そこには「プレイフル」な遊びの要素を組み込んでいくことが重要になります。ストレッチが楽しくできたほうが、やる気も出るし、毎日続きますよね。

カイヨワの「遊び」の分類

カイヨワ.003

図では、横軸が「規則(ルール)」に関する軸、縦軸が、自分の「意志」の影響力に関する軸です。

この図については、安斎先生のnoteでも詳しく解説されています。(とってもわかりやすいです。また、この遊びの要素を組み合わせるという考え方も興味深いですので、ぜひこちらもチェックしてみてください!)

横軸の規則の軸について考えてみましょう。発想には「制約」が必要ですが、それにプラスして「規則(ルール)」の要素が加わると、ストレッチの負荷がドンドン高くなっていきます。制約を守りつつ、規則の枠内でプレーすることになるからです。

例えば、「〇〇についての解決策を(制約)+時間内にたくさんアイデアを出すようにしましょう!(競争させるルール)」となると、かなりのプレッシャーを感じると思います。かと言って「自由にゆる〜く、アイデア出しましょう!」では、成果物がいつまで経っても出てきません。なので、ここのチューニングは重要です。また、意志の軸では、「脱意志」の領域のものでも、そこから意志の力を発揮して、解釈をして、発想のタネにしていくことがポイントになります。

▼競争する発想(アゴン)

競争を前提としたアイデア発想はNGです。なぜなら、他の人より優れた案を考えよう!面白いやつ出さなきゃ!という意識が芽生えると、途端に発想にブレーキがかかるからです。アイデアを外化する前に、自分の内側で「これは面白いのか?」「良いアイデアと呼べるのか?」「実現性は?」などと判断してしまいます。

なので、出たアイデアを使って競争させます。発想するプロセスで競争させるとうまくいきませんが、出たアイデアに対して「○○なアイデアNo.1はどれだと思う?」という問いかけは、アイデアに新しい視点を持ち込んだり、出たアイデアをメタ認知するきっかけになります。アイデアを括るための概念を発想することがポイントです。

⭕️  ついつい使いたくなっちゃうアイデアNo.1は?
❌  楽しくなる系アイデアのNo.1は?

ここは、もちろん、一番を決める(優劣をつける)ことが目的ではなく、このアイデアが一番になれるカテゴリーってなんだろう?を考えるためのものなので、上の事例のような、いろんなアイデアが一様に当てはまりそうな「○○系」で括るのは良くありません。

▼見立てる発想(ミミクリ)

アナロジーや、ロールプレイングで考えることが当てはまります。あるものを何か別のものに見立てたときに新結合が起こったり、実際に演じてみることで新たな気づきを得るような方法です。実際に、ペルソナの仮面を作って、なりきって振る舞ってもらうこともやったりします。

アナロジーについてのワーク事例は、このnoteでも触れています。

▼偶発に委ねる発想(アレア)

調べてみると、発想を促すカード型のツールがたくさん存在しています。私も、スケッチの造形展開を促すカードを制作しました。偶然に引いたカードの指令を発想の起点に造形を展開していくカードです。

この偶発性に身を任せる発想は、カードを引く瞬間は「脱意志」で、自分の意志は関与されませんが、その先に解釈をして補完する(つじつま合わせ)ことが要求されます。まさに、この、無理矢理にでも解釈をする行為が発想を促進させます。ストーリーキューブスなどのサイコロも使えます。

▼スリルがある発想(イリンクス)

この「スリル」という感覚は、なかなか発想の中で取り扱うのは難しいですが、先の見えないドキドキ感や期待感の様なものは、取り込むことができます。

例えば、こんなワークをオンラインの場で行いました。カメラはOFFの状態で進めています。事前に一人一人の参加者に「お菓子」を用意してもらいました。一人ずつルールに乗っ取り、用意したお菓子について紹介し、チーム内の他の人は、紹介されるヒントの言葉だけで、それがなんのお菓子なのか?を推測しながら絵を描いていきます。

2020授業#2.001


ヒント1:つまんで持てます
ヒント2:チョコに浸かっています
ヒント3:キノコの形です

ヒント3まで聞けば、おそらく答えは一つ(キノコの山)なのですが、ヒント2の段階でポッキーだと思って描いた人は、最後のヒント3で「キノコの形」と聞いて、慌ててポッキーの先にキノコの傘を描き足して、「えのき」のような細長いキノコ型のポッキーが出来上がりました。(ヒントを聞くたびに、絵に加筆していく、途中修正不可のルールなので、この様なお菓子が出来上がります。)

ここのワークの目的は、「情報」の解釈によってさまざまな見方が生まれるということを体感してもらうことでした。情報を発信する側と受け取る側の間で、どうなふうに情報が解釈されて変容するのか、その曖昧性と多様性を味わうものです。(なので、ルールの最後に、お互いが答えを外す努力をしましょう。と書いています)ヘンテコなお菓子がたくさんできることが面白いワークでした。この、曖昧で多様な、何も決まりきっていない状態がアイデアの新結合が生まれやすい状態でもあります。

最後に、発想と遊びを組み合わせることの注意点について触れておきます。それは、発想のワークを「遊び」的に進行すればアイデアが出る!ということではないということです。つまり、いくら遊びを持ち込んで進行しても、いつもの苦手モードでは、「つまらない遊び」をしているだけに過ぎません。「遊び」の要素で覆い隠さずに、いかに日常の苦手モードから解き放つか?発想すること自身を楽しくできるか?を大切に考えていくことが重要です。(以下、私が実行しているちょっとしたTipsです。随時、気がついたら追記していくかもしれません。)

・カードやサイコロ、ブロック、粘土など、ちょっとしたツールを用いる
→考えるきっかけを与えてくれたり、表すことのハードルを下げてくれる。
→自分が「関与」する余地があることで、主体的になれる。

・ワークシートなどで、プレイするフィールド(世界観)を提示する
→ワーク中、目に触れるものは、参加者のマインドセットに影響します。「楽しく発想しましょう!」と指示されるよりも有効に働きます。

(随時、追加予定です)

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