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もう逢えない人に送る手紙

拝啓

二十代の私へ

 二十代の私であるあなたは相変わらず日常がつまらないと現状を嘆き、何で司法試験が受からなかったのだろうと過去を憎んでいる。

 あなたは今を受け入れられない。わかる。でも、どうしょうもない。ただ、挑戦しなくては何も変わらない。

 ところで、あなたは友人が言ってくれた台詞を覚えていますか? 

「お前はドラマが好きじゃなくて、ドラマを作ることが好きだろ」

 図星だった。あなたは小学生の頃から誰にも話さなかったが、作家になりたかった。

 でも、ほぼ才能だから……と諦め、大学も偏差値が高いという理由だけで法学部に進学した。

 そして、見てくればかり気にしていて司法試験に落ちた。

 この年になった今だからこそ私はあなたに逢えないからこそ言いたい。

 ここが最重要ポイント。

 成れる者ではなく、成りたい者になる夢は障害がつきまとう。

 でも、一歩踏み出せ。踏み出してくれないか。今の私が変わらぬように。

 あなたが変われば、私は弱い犬になれる。弱い犬だから私はよく吠えることができる。でも、弱いからこそ吠え、仲間ができ、その仲間に助けてもらい進むことができる。

 二十代の虚栄心が強いあなたはみっともない、というに違いないけど、今の私はそんな風に人生を生きている。

でも、社会は広いからそんな人生悪くないよ。

 あなたの才能を信じてください。あなたがその才能を信じなかったら、今の私が可哀そうだから。

敬具

令和六年七月吉日

四十代の私


追記

 二十代のあなたが書いた小説『七夕さま』。

 面白いです。

 


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