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『嗅覚のゾーン』に入った臭気判定士の体験談

こんにちは!
体臭評価サービスを提供するオドレート株式会社代表で臭気判定士の石田翔太です。

「昨晩体験した不思議な出来事をどうしても誰かと共有したい!」という気持ちからnoteを書きました。

私は職業柄、2016年から約6年間ほぼ毎日"意識的に"嗅覚を使っています。そして昨日、これまでにない感覚を得て、今とても感動しています。

前提共有

本題に入る前に、「ゾーン」「臭気判定士」「鼻が良いということ」について認識のすり合わせをさせてください。

ゾーンとは?

私が先月読んだ『黒子のバスケ』という漫画をかいつまむと、ゾーンは次のように説明されます。

黒子のバスケに登場する、選ばれた者だけが入れる究極の領域
(中略)
ゾーンに入ると本来なら不可能である筈の100%の力を出せるだけでなく、「雑念」「周囲の声や音」「景色の色」など、不必要な情報は全てカットされ、目の前の相手だけではなく、他の選手の位置や動きなど、必要な情報の処理能力が向上する、要するに視野が広がる。

出典:ピクシブ百科事典 ゾーン(黒子のバスケ)

ゾーンとは、普段と比べてパフォーマンスが爆上がりしている状態を指すのだと思います。要するにすごい。

そして、そのようなゾーンに入る感覚は、学術的にはミハイ・チクセントミハイが提唱した「フロー理論」によって裏付けられるのだと認識しています。

フロー (英: Flow) とは、人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう。
ZONE、ピークエクスペリエンスとも呼ばれる。

心理学者のミハイ・チクセントミハイによって提唱され、その概念は、あらゆる分野に渡って広く論及されている。

出典:Wikipedia フロー(心理学)

フローとは、ものすごく何かに集中していて、その状況を楽しいと感じるような精神状態を指すのだと思います。要するにすごい。

正式な発音は「チークセントミハーイ・ミハーイ」→一度聞いたら忘れない名前選手権優勝

今回の私の体験は、嗅ぐことに物凄く集中できていて、普段と比べてパフォーマンスが爆上がりしており、かつその状況が楽しいというものでしたので、「これがゾーンか・・・」と捉えた次第です。

臭気判定士とは?

私も臭気判定士どす

臭気判定士とは、環境省が管轄するにおいの公的技術者としては唯一の国家資格です。

臭気判定士になるには、公益社団法人におい・かおり環境協会が年に1回実施する筆記試験と、実技試験(嗅覚検査)の両方に合格する必要があります。

本来、臭気判定士は工場等の事業所から発生する悪臭評価を嗅覚測定法により行いますが、オドレートに在籍する臭気判定士は、本来の業務で用いる技術を体臭に応用して実践する、体臭に特化した臭気判定士です。

つまり、弊社の臭気判定士は、人から発せられるにおい(体臭)の評価を自分の嗅覚 a.k.a. 鼻を用いて行っています。

鼻が良いとは?

先ほど、「今回の私の体験は、嗅ぐことに物凄く集中できていて、普段と比べてパフォーマンスが爆上がりしており、その状況が楽しいというものでした」と書きました。

「目を凝らす!!」「耳を澄ます!!!!!」「鼻を…?」という日本語の準備不足からも、視覚や聴覚と比べて、普通の生活をしている方が嗅覚を"意識的に"使う機会は少ないものと思います。

そこで、「嗅ぐことのパフォーマンスが高い」状態をイメージしてもらいやすくするために、「鼻が良い」という言葉について考えてみます。

私は、鼻の良し悪しには2つの評価軸があると考えています。
(私個人の考えであって、学術的な裏付けはありません)

【評価軸①嗅力】
嗅力とは、弱いにおいを感知できる能力です。ある場面で、自分は微かに何かのにおいを感じるけれど周りの人は感じていない、という経験がある方は、嗅力が高いと言えるかもしれません。視力や聴力と同じような意味合いです。

【評価軸②識別力】
識別力とは、においの質を言い当てる能力です。ある場面で、正体不明のにおいを感じた時、過去の記憶(今までに嗅いだことがあるにおい)の中から、今嗅いでいるにおいと最も近いものを思い出せる、あるいは思い出すスピードが早い方は識別力が高いと言えるかもしれません。「あ、これは◯◯のにおいですね!」というやつです。さらに「これは◯◯と〜〜のにおいですね!」と混合臭を分けて言い当てられるようになるとかなりレベル高いと思います。

残念ながら視力や聴力がそうであるように、【評価軸①嗅力】は努力でどうにかできるものではありません。臭気判定士の実技試験(嗅覚検査)は嗅力を問うものであるため、一度落ちた人が再受験で合格する可能性は極めて低いものと思われます。

ヒソカ=モロウ「無駄な努力、ご苦労様・・・♠︎」

一方で、【評価軸②識別力】は努力や経験で高めることができます。私も体臭評価に取り組み始めた頃は、他人から感じるにおい(体臭・シャンプー・柔軟剤などの混合臭)を上手く識別することができませんでした。ただし、6年間"意識的に"嗅覚を使い続けた結果、今では体臭の種類や製品の銘柄を言い当てることができるようになりました。

上記の通り【評価軸①嗅力】は簡単に上下するものではありませんので、今回私が体験した「嗅覚のゾーンに入り嗅ぐことのパフォーマンスが高まった状態」は、【評価軸②識別力】に関するものです。

また、余談ですが職業柄、「石田は鼻が良いの?」と聞かれることが多いです。その度に上記の説明を行い、「嗅力は、嗅覚検査に合格しているため悪くはない。識別力は良いと思う。」とお伝えしています。

お願い

前提の共有が終わり、いよいよゾーン体験を共有する前にお願いがあります。

現在オドレートはクラウドファンディングを実施しています。

治療や、謎に高額なデオドラント製品などを含むワキガ関連ビジネス、彼らの消費者を脅迫するような広告宣伝に対する懸念、また、それゆえに本来あるべき姿よりも市場が歪んで膨らんでいる(不要な物事にお金を使ってしまう方がいる)という現状のアンチテーゼです。

私たちの製品は、決して世の中の全員に使ってもらう製品ではないことを自覚しています。

一方で、日本人の約10%が脇のにおいが強い体質であると推計されています*¹。人に相談しづらく、打ち明けづらい内容であるため顕在化しませんが、人知れず不安を感じている方は皆さんの周りにも必ずいらっしゃいます。

*¹参考:体臭ラボ 軽度・重度ワキガの割合はどのくらい?

そのため、本製品の存在に気付いてもらいさえすれば、すごく喜んでくださる方が少なからずいらっしゃると信じています。ただ、クラウドファンディングの準備期間に業務が立て込み、十分な広報、メディア対応等のスタートダッシュに失敗してしまいまして…

そこで、下記MakuakeページのSNSシェアをお願いします!
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ワキガ検査キット「odorateAP」改良版〜デオドラント・制汗剤の効果を見える化〜

本製品は、私たちが2年準備してきた渾身の一作です。 ご自身の脇のにおいが気になる方に、こっそりサクッと不安を解消するお役に立てて頂けることを望んでいます。


また、現在私の友人のIROHAさんという方もクラウドファンディングを実施されています。

志は同じく、私とは異なるアプローチを選んだ彼女のプロジェクトが無事立ち上がることも心から願っています。

そのため、下記ReadyforページもSNSでシェアして頂けますと幸いです!

自分の匂いで悩んでいる人たちが気軽に集えるカフェを作りたい

『嗅覚のゾーン』体験

本題に戻ります!

体験談

昨晩、鼻を使う仕事に1時間従事しました。そして、開始15分頃から15分間【評価軸②識別力】が爆上がりしました。

私は普段、評価することを念頭に何かを嗅ぐ際、「この辺りに存在する、このにおいはなんだろう?今までに嗅いだ、自分が知っているどのにおいに近いだろう?言葉(例えや形容詞)で説明するなら何と言うべきだろう?」といったことを考えています。
そして、一度嗅いでもピンと来ない時は、強く嗅ぐことを意識して、同じことを何度も何度も考えます。

ただ、昨晩の爆上がり時間帯は、

  • 一度嗅いだだけで即ピンと来る

  • 強く嗅ぐ必要はないから感覚はリラックス

  • 普段よりも早く多く情報が得られる

  • だから楽しくなってくる→次!!

  • 一度嗅いだだけで即ピンと来る

  • (以下繰り返し)

の無敵モードでした。

『黒子のバスケ』の「ゾーン」には、5分程度の時間制限と、時間が切れると著しく体力を消耗するという2つの制限がありました。今回私が体験したゾーンは、時間制限はありましたが、その後の疲労感は特に感じませんでした。

仕事も捗るし、楽しいしで最高でした。

(豆知識)

「目を凝らす」「耳を澄ます」に対抗し得る鼻関連の言葉として、私は「強く嗅ぐ」を用いています。

再現する方法を考える

またいつかゾーンに入りたい!何なら自在にゾーンに入れるようになりたい!と、今心底思っています。

そこで、昨日からゾーンに入るトリガーを探していました。

【状況トリガー説】

昨晩『嗅覚ゾーン』に入った時の状況は、以下の通りです。

  1. 後に予定があり、時間に追われていた

  2. 寝不足のせいか心身ともに軽くはないが、1により気が張り詰めていて、眠気は感じない

  3. とはいえ眠気に襲われると困るため、暖房はつけず部屋は寒め

※その他、業務内容等は普段と同じ

ベタですがそれら心身の機微や環境に関するものがトリガーになり得るのかもと思いました。ただ、それらが同時に起こることはそれほど珍しくないため、これだけで「今回初めてゾーンに入った」現象を説明することは難しいと感じます。

【経験トリガー説】

6年間ほぼ毎日"意識的に"嗅覚を使ったことで経験値が閾値を突破し、それによりゾーンの扉を開けるようになったのかもしれません。

もしそうなら、今後は毎回ゾーンに入れるのか、あるいは前述の状況トリガーが揃った特定の条件下で起こるのか、あるいは完全なランダムゲーなのかが気になります。


などなど、他にも色々考えてみたのですが、未だそれっぽい説は得られていません…。

なので引き続き日々の鍛錬を怠らず、チークセントミハーイ・ミハーイ先生の『フロー体験入門―楽しみと創造の心理学』を読み、自在に嗅覚のゾーンに入れる人間を目指そう!という結論に至りました。

いったん以上になります。
トリガーが見つかった際はまたご報告させて頂きます。

今回はあまり体臭と関係のない内容となりましたが、ほぼ毎日"意識的に"嗅覚を使う特殊な人間の初体験を共有させて頂きました。


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