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消費者に知ってほしい「食品値上げ構造」と脱価格競争トレンド

最近は、テレビのニュースやネットの記事で値上げに関する話題が多くある印象があります。例えば、こんな記事。

この記事では、タイトルにある通り、消費者の方に知ってほしい内容と、一つのトレンドについて解説していきます。

①今回の値上げについて

まずは、そもそも、なぜ値上げが起きているのかを解説します。大きく2つの理由があります。

・原因①:円安
輸入している食品や、輸入した原材料を使用している食品は、為替の影響を大きく受けます。多くの食品は、何かしらの原材料や添加物、調味料で輸入したものを使っています。そのため、円安になるほど、日本国内で販売される食品の原価は上昇します。

・原因②:物価上昇
現在、報道されているロシアウクライナ情勢などの影響もあり、原油価格の上昇や、北米などの諸外国において小麦の不作、中国やインドなどの発展途上国と呼ばれる国々の経済力の上昇による需給のバランスの変化などの要因によって、世界的に物価が上昇しており、原材料や包装資材、運送費などの上昇が、国内で販売される食品の原価の上昇に影響しています。

食品値上げの概要を動画で解説しています。

②そもそも値上げが悪なのか?

ニュースなどで、「値上げ」の話題が報道される場合、多くはネガティブな情報として伝えられることが多い印象を持っています。この点について、少し触れたいと思います。

値上げ自体は、今までより出費が増えるということに直結します。なので、個人の懐事情を考えるとネガティブな気持ちの方が強いと思います。

ただ、自分で1から、その食品に必要な原材料を買って、調理して、クオリティを維持する費用と比べると実際は安価である可能性もあると思います。家計の出費を見直す意味でも、見直す機会になり得ると思います。

野菜をとってみても、スーパーマーケットで野菜を買うコストと、自分で種や苗を買って水をあげて栽培するコストで比較すると、値上げしたと言えどまだまだ割安という見方もできるのではないでしょうか。

③食品業界の値上げ構造

ここからが本題です。ぜひ、この記事を読んで食品業界のコスト構造を踏まえて、値上げに至る経緯や構造を知ってもらいたいです。

・原価の構造について
みなさんが手にする食品は、基本的な大枠は「原価+販管費+利益」をベースにしてメーカーが卸したものを小売店が販売しているものです。
原価は、食品そのものに加えて、調味料や、添加物、包装資材などのことです。
販管費は、その商品を知ってもらうための広告宣伝費や営業経費、その他の事務経費などのことです。
原価と販管費に、継続的に事業を営むための一定の利益を含んだものを流通を通じて小売店に卸します。小売店側で販売に関する諸経費と利益を含んで消費者の方の売価が設定されます。

・ステルス値上げについて
ステルス値上げを簡単に説明すると「売価は変更せずに、内容量を減らすこと」です。一般的に消費者の方に伝わりにくいので、「ステルス値上げ」と呼ばれています。
ステルス値上げは、さまざまな背景があるのですがお客さまに魅力的な価格帯で販売することと、企業の事業運営を成り立たせるための施策として行われています。
詳しい内容はYouTubeで解説しています。


・PB商品について
小売店側が企画して販売するプライベートブランド商品は、基本的には一社の小売店が専売する商品です。つまり他社と同一商品で価格競争することがありません。
PB商品は、メーカー目線で販管費の部分が少なく、また固定費の面でも好影響を与えることが多い商品群です。

PB商品の値上げについて動画で解説しています。

・価格訴求と価値訴求
PB商品には大きく2種類あります。一つは価格訴求。もう一つは価値訴求です。
価格訴求は、コスト構造の違いを活かしてメーカーのナショナルブランド商品より安価に提供する商品。
価値訴求は、小売店のイメージを含めて、高付加価値で手ごろに手に取ってもらうコンセプトを磨き上げた商品。
どちらもメリットデメリットがあるのが特徴です。

④企業努力があっての価格

食品業界から見たコスト構造などを知っていただいた次は、値上げで騒がれている中で、これまでの各企業の流れについて触れたいと思います。
大前提として、食品業界でシェアを取るための戦略の方向性として結果的に良いのは「低価格で安定的に大量生産する」こととなっています。

・原価削減の努力
食品メーカーは、「原価+販管費+利益」で小売店を含めた流通業者に卸しています。自社の利益を確保するため、もしくはより低価格にしてより多くの消費者に流通させる努力をするために、原価にかかる仕入れコストを見直したり歩留まりを高める、販売をより効率的に行えるような仕組みをつくるなどしています。
加えて、サプライチェーン間の効率化を図るなど、さまざまな努力をしています。

・これまでの価格が安かった説
日本の大手食品製造業の営業利益率は5%前後と言われています。一方、アメリカでは12%、フランスでは16%ほどあると言われております。つまり、日本の食品は海外と比べてお客さんにとってリーズナブルな状態だったということです。
その分、日本の食品製造業企業は再投資する資源が少なくなっていた可能性もあります。

食品工場目線での値上げの話を解説しています。

⑤価値訴求できることの強み

日本の大手食品会社は、基本的には価格訴求で一定の規模を維持しながら、一部で価値訴求する商品を取り入れている現状にあります。当然、価格訴求という商品でも価値を訴求しています。

・価値訴求できるメーカーは値上げしやすい/強い
一般的に、多くの消費者は「安いから買う」ことと、「美味しいから買う」ことを、天秤にかけて購買の意思決定をしています。商品カテゴリによってバランスが変わります。
価値訴求している商品を買う消費者は、後者の概念を大事にしており、価格への依存度が低いです。

・セブンイレブンの例
具体的な事例で分かり易いのが、セブンイレブンです。大手コンビニの中で、今回の値上げの時勢の中で先にコーヒーの値上げをしました。競合は、価格維持を訴求しています。価値訴求を出来ているという手応えのもと、値上げが出来る会社として代表的だと思います。

・これがこれからのトレンドの一つ
食品業界を幅広く見ると、価格競争を強みにしている会社は入れ替わりが多く、顧客起点で価格だけに依存しない商売をしている会社はトップにならないけど安定して事業運営をしている印象があります。
変化の激しい時代で、変化に影響されにくい体質を作るためには、顧客起点で価値訴求することが求められるのではないでしょうか。

⑥たくあんのこれから

これまで、世の中の一般的な情報をまとめました。ここからは、漬物業界に関する内容です。

・保存食から嗜好品になっている
漬物は、1000年以上前から存在している食べ物です。漬物の基本的な役割は、保存性を高める手段でした。野菜が育てられない雪の季節などに越冬するために塩漬けにして冬場に食べられるようにしていたそうです。
一方で、流通の進化があり、食品に対する保存性の必要度が下がっており、保存目的の漬物の需要は皆無と言えます。季節感のある浅漬けなど、嗜好性が求められている印象です。

・嗜好品は、食品値上げの影響を受けやすい
漬物は、保存性を高める環境の中では、非常に重要な役割を果たしていました。嗜好性のある食品は、多くの食品メーカーが参入していて供給の多さが異なります。供給が多いと、価格の煽りを必然的に受けることになります。

・漬物屋も価値訴求が必要になる話
農家さんが一生懸命、手間ひまかけて育てた野菜をより高付加価値にすることが漬物屋として冥利に尽きることです。そして、漬物の文化を先々に残していくためにも、前段であった通り、価格訴求ではなく価値訴求が必要だと強く感じております。

今後の食品値上げについて、私の予測の動画を公開しています。

加えて、値上げに対する対策の提案もしています。

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