レガシーにおける青黒というデッキ(2024年6月24日禁止制限告知)

2024年6月24日の告知によって、全フォーマットの禁止制限等がないことが発表された。

これに対し、各界隈から声が上がっているが、自分に見える範囲では、その多くが「○○が禁止にならなかった」というネガティブな意見が多いと感じている。

個人的には、「禁止になるカードなんて1枚でも少ない方が良い」と思っている。せっかく購入したカードが使えなくなるなんて経験は少ない方が良いに決まっている。

禁止という選択はデザインの失敗であり、その責任と損失はWotCが負担してもおかしくないとすら思っている。
(※仮にこの意見が正しく、道理的にはおかしくないとしても、法的にはそんな負担の義務は発生しないが。)

ただ、禁止カードが一切発生しないということはあり得ないだろう。カードが売れるように新録カードのパワーをインフレさせていく際にデザインを失敗してしまう可能性はいつでもあり得ると言える。特に、カードプールの広いフォーマットではデザイン段階で気付き得ないコンボが発生することもある。

禁止改定についていろいろな意見があると思うが、自分がどうあるべきだと思っているか、意見をまとめてみたいと思う。

(1)可能な限り少なく

前述のとおり、禁止になるカードは1枚でも少なくあるべきである。購入したカードは可能な限り長く使えることが、最も購入者の予測可能性を裏切らない選択であり、その予測可能性は裏切るべきではない。

(2)ゲーム上の選択肢を狭めるものであること

あらゆるタフ1生物とコントロールデッキを環境から排除した≪レンと6番≫、ステッカー使わないのにステッカーを持って来ない理由がないという意味不明な状態を作った≪_Goblin≫など、全体への明確な悪影響があること。

基本的にはこの2点に尽きる。だから、以下のような理由には同意できない。

・環境に変化がなくてつまらないから。
・○○が多すぎる。
・○○に勝てない。

情報化が進んだ現代において、強いデッキは共有され、多くの人が選択するようになる。その結果、50点のデッキよりも51点のデッキを使う人が多くなるのは当然である。
あらゆるデッキの強さが全く同じ点数になることはあり得ないし、少しでも点数がズレれば(デッキにこだわりがない人は)そこに駆け込む。

今のレガシーのような一強状態というのは、研究され尽くした終着点として至極当然の帰結であると思っている。
そして、勝ちたいプレイヤー、強いプレイヤーがその一強を選択するのだからそのデッキの勝率が高くなるのも当然だ。誰が使っても60%勝てるデッキは壊れているといえるが、元々勝率60%の人が60%勝てるデッキは何の問題もないのである。

また、デッキとしては強くても禁止されるのは特定のカードであることから、デッキの強さ云々を語るのではなく禁止にされるカード(又はそれに付随する直接的なコンボ等)を見て判断すべきだろう。デッキを問題としてカードを禁止するのは環境がそのデッキ一色になったと言えるレベルでなければならないだろう。(支配率50%以上とか?はっきりはわからないが)

でなければ、○○というデッキが強すぎたから△△というカードを禁止にします。と言われても、○○ではないデッキで△△を使用していたプレイヤーの心情が斟酌されない。

そして、環境に変化がないから禁止にするとかはもう論外だ。・・・気持ちは理解できるけど。

もう少し現在のレガシー、特にUB Scanimator(青黒のテンポ型リアニメイト)について掘り下げてみる。

UBのなかで、(2)に該当し得るカードがあるか・・・。

禁止になる候補として考えられるのは、≪悲嘆≫、≪納墓≫、≪再活性≫、≪オークの弓使い≫、≪カザド=ドゥームのトロール≫、≪偉大なる統一者、アトラクサ≫あたり。これらに加えてMH3の新戦力≪超能力蛙≫も考えるべきだろう。

≪悲嘆≫
個人的に一番(2)に近いカードであると考えている。
≪暴露≫と同じく手札2枚使ってマナを払わずに手札破壊ができるが、クリーチャーであるためリアニメイト手段によって使いまわすことができる。この、リアニメイトによって再利用できるということが問題視されている。
確かに、1ターン目から2枚ハンデスして3/2威迫が定着するのは強いが、お互い失うカード枚数は同じである。(手札3枚使って3/2威迫vs手札2枚ディスカード)
選んだカードを捨てさせられる!と言う人もいるが、それはハンデスの構造を説明しているに過ぎない。トップデッキに対処できない、相手のアクションを見てから動くのでは遅いといった構造的な弱さに対して、選んで捨てられないのでなければ使えるレベルにならないのがハンデスである。
やっていることは1マナでDelver展開して相手のアクションをDazeFoWStifleで潰して殴るのと根本に違いはない。相手にマナを使わせてからアクションを潰すという点と、手札を見るという情報のアドバンテージが入れ替わっている。
悲嘆再活性しても、場に残る生物も打点は3だけで、その1体でゲームが終わることはほとんどあり得ないと言って良い。また、≪難題の予見者≫の様に追放するわけではないため、それでコンボデッキが完全に機能停止することもない。≪苦悶の触手≫を抜かれて一発投了する必要がないんだ。
また、再利用可能であるという点では、色は違えど≪緻密≫以外の他の3枚も同じ問題を抱えている。
以上のことから、禁止にするほどのカードではないと考える。

≪納墓≫
20年以上前から存在する墓地限定万能サーチカードである。2009年に禁止解除されてから、様々な墓地利用デッキに採用されてきた。墓地利用デッキの安定性を高めすぎていると言われれば否定できないが、禁止にすると様々なデッキの可能性を潰してしまう可能性がある。長く使われているカードであることから、禁止にする選択としては最善ではない。

≪再活性≫
1マナのリアニメイトカードとして≪悲嘆≫との組み合わせが危険視されているが、ライフ損失という十分なデメリットのあるリアニメイトカードを禁止にする必要性をあまり感じない。テンポリアニメイトだけでなく、コンボリアニメイトなどの可能性をもぎ取ってしまうので、≪納墓≫同様に禁止にする選択肢としては下である。

≪オークの弓使い≫
初めて使った時は、「オークを処理する方法としてオークがベスト」であるということから禁止を危ぶんだが、実際に使用してみると高い技術介入度を誇る非常に面白いカードであることが分かった。≪船殻破り≫の様に引けないわけではなく、ドローにデメリットを与えるという、ほどほどの牽制力がまた良い。≪豆の木をのぼれ≫や≪一つの指輪≫のようなイカれたドローカードが蔓延する現レガシー環境においては、むしろ禁止にすべきではない。

≪カザド=ドゥームのトロール≫
UBのマナベースを支える強力なクリーチャー。土地サーチ兼リアニ先の供給という二重の仕事をこなす、デッキの歯車ではあるが、デッキの根幹ではない。ただ、3体ブロック必須なのはデザインの失敗ではないかとは思う。せめて威迫にして。

≪偉大なる統一者、アトラクサ≫
リアニメイトやSnTデッキがこの1年で活躍する土台となった張本人。禁止になったら≪グリセルブランド≫など別のカードに戻るだけだが、それでもコンボプランの大幅な弱体化を図ることができる。≪カラカス≫など対処手段は多いが、能力モリ過ぎ。代替手段が多いので禁止になるとは思わないが、単純なアグロデッキに対する全否定みたいな能力なので消されても違和感はない。

≪超能力蛙≫
まあ強すぎるんで個人的にはパワーレベルが禁止級ではある。何かのデッキの存在を否定するようなものではないし、発売直後なので禁止はないだろう。忍者を馬鹿にしたような能力だという某忍者マスターの意見に反論はない。

こんなところだろうか。

上述のとおり、個人的にはUBに禁止にすべきカードはないと思っている。各カードを単体で見た時、(2)の選択肢を狭めるカードで言うと、これらのカードよりも≪魂の洞窟≫≪ウルザの物語≫≪苛立たしいガラクタ≫≪真の名の宿敵≫など枚挙に暇がない。

それはそれとして、現在のレガシー環境が面白くないという人も少なくない。

といっても具体的に何が面白くないのかはわからない。

自分が勝てないからおもしろくないと言っているのかもしれないし、UBが多すぎて面白くないと言っているのかもしれない。その人の遊びたいゲームが、スパイのような瞬殺コンボやチャリス月三球のような相手の行動を縛ることであり、UBと違っているという可能性もある。

政治的な問題でも同様だが、基本的に人間は自己の利益を中心に思考する。

「今だけ、金だけ、自分だけ」

俺自身は、その視点をなるべく排除して、客観的に見てどあるのが最も妥当性が高いかを考えたいと思っている。もちろん、俺が考えたところでその意見がWotCに届くわけではないし、主観を完全に排除することはできないけれど。

少なくとも俺は、賽子に運命を託すような運任せのゲームが面白いとは思わない。

ゲーム上の選択(デッキ選択等も含め)が勝敗に及ぼす影響がある程度大きい状態で、確率を最適化する選択を思考するゲームを楽しんでいる。

そして、この考え方はある程度の高い割合の人に共感されるものと思う。一強環境だろうと三竦み構造だろうと、ゲーム上の選択肢が多く、プレイ技術が勝敗にしっかり影響するゲームが面白いといえる。

スタンダードにおいて≪精神を刻む者、ジェイス≫と≪石鍛冶の神秘家≫が禁止になった際の声明文が最もゲームとしての健全性を考えた適切なものであり、WotCが目指すべき環境管理の在り方であると今でも信じている。

個人的な好みについてもう少し掘り下げると、環境の研究が深まり、ある程度最適解となる選択肢が出そろったところで発生する、薄皮1枚の削り合いをするようなヒリついた勝負が好きだったりする。

まさに上記カウブレード一強時代のスタンダードや、先の最強独楽ミラクル時代やカナスレを中心としたレガシーもそれに等しいものだったと言える。

ただ強いだけのカードや、一方的な押し付けをするゲームが好きじゃないから、昨年末のゴブリンがトップメタとなったレガシーや、≪白羽山の冒険者≫擁するイニシアチブがぶんぶんいわしてた時期のレガシーは全く好きじゃなかった。メンコじゃんアレ。

手札のカードたたきつけるだけで、選択肢はあってもめちゃくちゃ少ないし、何が面白いの?って気持ちになってしまう。

おそらくこれ↑は一部の人にしか共感されないし、人によっては反感を覚えるだろう。

逆に、≪表現の反復≫入りのUR Delver全盛期、反復をほとんど使うことなくプレイしていたが、面白くないとは思わなかったし、(2)に全く該当しないため禁止にすべきとも思わなかった。あの時も対抗する手段はいくらでも用意されていた。

ここ数年、墓地利用やカードパワーの上昇によりレガシーは黒を抜いた4色で構成されていた。

ようやくオークを手に入れ、その後の研究により今年の1月頃にテンポアグロ型のリアニメイトが誕生し、12月から青黒コンボリアニを使っていた自分はすぐに乗り換えた。黒(次点で青)が好きな俺の個人的な感情で言えば、ようやく黒いデッキが環境に顔を出すようになったから、できればこのまま生き続けてほしいと思うが、多数派の感情は禁止に傾いている。

おそらく、多数派の感情に配慮し、8月に≪悲嘆≫が禁止されるだろう。MTG、ここでは特にレガシーが人気であるために、この多数派の感情は無視すべきではない。

俺自身は、ここまで書いたとおり、禁止にするほどではないと考えているが、禁止になったところで不満に感じるということもない。

ただただ、これからもなるべく禁止カードを出さず、多くの人が選択肢を狭めることなく遊べる環境が続くことを願っている。

最も恐ろしいのは、禁止が禁止を呼ぶ負のスパイラルであり、その結果としてのレガシーの完全な崩壊だ。コンボに強いこのデッキが消えた時、そこに残るのは瞬殺コンボ蔓延る魔境である可能性があるのだから。


2024.06.27 21:30誤字脱字、一部誤解を招きそうな表現に修正と追記(手遅れ感)基本的な内容は変わってません。


2024.07.01追記2

この文章の悲嘆の部分について反論と、その反論に対する更なる反論をいただいたのでリンク付けさせてもらいます。

どちらもしっかり悲嘆について論理的に掘り下げて書いてありました。

俺のこの文章は特定のカードについて掘り下げたかったのではなく、安易に禁止を連発するのは良くないよね!感情的に禁止云々を叫ぶのではなく、もっと考えよう。と言いたかっただけなので、こういった反論はあるだろうと思っていた。

自分としてはkiyoさんの意見が近いけど、こうやって違う意見同士、感情的に禁止にしろ!禁止にするな!と叫ぶのではなく、しっかりと状況を分析して考えることができるのは良いよね。どちらも良い反論でした。

でもやっぱ抽象的な話より、直接的に禁止云々を語った方がウケるのかな?火種のこのnoteよりも後発2本の方が伸びてるんよな。エモーショナルマーケティング?

因みに、悲嘆ピッチ再活性が初手に揃う確率は約13.2%、赤プリの虚空の盃X=1が1T目に着地する確率は構築によって差はあるけど約30%。
UBはデッキ全体の安定性は高いけど、このアクションは実はかなり確率が低いという点だけkiyoさんのnoteに補足しておきたい。

UBに勝ちたい人にオススメするデッキ
5c豆コン
UGWスタイフルノート
UGW Nadu
アガサペインター
UBカエルタミヨウ
GWデプス
BGオーダー
MBアグロ

追加もう1記事
こちらも参照されたし

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?