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レガシー禁止論争から見る《悲嘆》の客観的解釈

Teragoya University

Abstract

現在、レガシー環境におけるUB Scamが支配的立ち位置におり、環境を席巻しているということがたびたびX(旧Twitter)上で問題提起、議論、批判がなされている。

種々の意見の中から、それぞれの知見、思惑が錯綜しており、語調の強い意見やWizards公式の発言のハロー効果により、《悲嘆》への擁護もしくはヘイト活動が顕著になっている。 

この状況に対して、《悲嘆》を軸に現状とデッキにおける差異の分析を行い、今後の問題に対するアクションの仕方、またデッキ構築の際の考え方を分析する。


Introduction

現在(2024/07/01)、レガシー環境ではUB Scamが店舗大会やMagic OnlineのChallenge等で圧倒的な戦績を残している。

現状一般的とされている、納墓入りのリストが一般化して以降、この状況は5か月ほど続いており、その間で数回の定期禁止改定がなされてきたが、その際に禁止による環境への介入が行われることはなかった。

UB Scamが席巻する以前のレガシー環境を考えると、当時は旧UB Scam, URx Delver, Been Domain Control, Mono-Red Painter, Goblins, Boros Initiative, Doomsday等、各種デッキが蔓延る環境であったが、旧UB Scam(ここでは納墓のないリスト、フィニッシャーとして濁浪の執政が採用されるもの)もトップメタの一角であったことを考えると、1年以上は環境の顔として存在している。基本的に、環境上位や苦手とするデッキのカードにヘイトがたまりやすいカードゲームにおいて、この期間は各人が不満を抱くのに十分であり、また実績が顕著に表れ始めたことにより、規制を望む思いが膨れ上がり、今回の禁止改定の声明によりそれが爆発した。さらにそれに加え、公式から《悲嘆》が禁止候補であるという文章が出てしまい、その矛先は《悲嘆》へと集中することとなった。

禁止に対する肯定派・否定派の構図や、環境に対し是非を問うことへ発展している中、Noteに現環境に対する肯定と、禁止に対する否定的な意見を示した記事(1)が綴られ、さらにその内容の《悲嘆》に対する意見への否定的な意見を綴った記事(2)、さらにそれに対しての使用者の考えを綴った記事(3)、と各視点からの思いが寄せられている。

現状(3)の記事は最新のためフィードバックは少ないが、(1)(2)についてはそれぞれ取り上げられ、議論の泥沼化や、感情論での肯定・否定が散見される。

ここで私が面白いと感じたのは、各人の《悲嘆》に対する考えの相違点とそれに関する強さの評価基準だ。

なので、今回は《悲嘆》のプレイにおける本質的な部分を客観的に示し、一度現在のレガシーの根幹となる動きを理解し、デッキ構築の基準の刷新の機会となれば幸いである。


Result&Discussion

《悲嘆》を軸にした戦術の問題点として挙げられるのは、《再活性》による1マナでの盤面構築と手札破壊の両立である。

これについて、情報を整理すると、プレイヤーAはカードを3枚使い、プレイヤーBの不特定のカード2枚に対してアクションを取ることになる。カードのトレード枚数で考えた場合、《悲嘆》が場に存在し対処しうることを考えると、3:2若しくは3:3交換となり、アドバンテージ上の枚数は損をする、若しくは変わらない。

問題視されている点は、「プレイ側が適切なカードを捨てさせることができ、かつクロックを立てられる」という点だが、(1)の記事にもあるように、ここは問題提起するうえで、起きた事象の解説をしているに過ぎない。分析すべきは、起きた事象に基づく「なぜこの行動が強いのか」という部分だが、これはレガシーのゲームレンジの短さにある。

レガシーはそれよりも上層のフォーマットに比べゲーム展開が非常に早い。つまり、単純にドローする回数が少なく、初手への依存度が上がっている。いうなれば、レガシーのほとんどのデッキは、上層フォーマットにおけるコンボデッキに近しい。となれば、ハンデス+クロックが強いのは当たり前なのだ。

この点が分かると、対策を考えるのは簡単になる。[カードパワーの均一化を図った金太郎飴デッキ]にすること、もしくは[軽いドローソース、サーチカードを用いた上でゲームレンジを伸ばす]だ。

前者に関しては語るまでもないが、当然上から引くカードが落とされたカードと同質であるならば、ハンデスされたことによる状況の変化は小さく、リソースの消費量が同じであるならば、ハンデスという行動は対戦相手のテンポロスとなる。

後者に関しては、ゲームレンジを伸ばす=コントロールデッキと思われるかもしれないが、それに限った話ではない。アグロやミッドレンジ、なんならコンボであっても、除去や打消しの枚数を調整し、互いにカード枚数が戻り、土地が場にあり、アクション数が増える状況ができても戦えるように組むことは可能だ。しかしこれは、あくまで軽いドローソース、サーチカードを積む前提である。

全てのデッキには、サポート、フィニッシャー、除去A、除去B… といったように、カードごとに役割があり、それらが必要な状況が刻一刻と変わっていく。ハンデスは、ここに[偏り]を生ませることが本質だ。現状を改善し得ないカードを残し、改善しうるカードを落とす、この本質に対する対抗手段として、ドローソースやサーチカードは非常に大きい。

相手がハンデスから前のめりに攻めてきているときに、その速さに付き合うためのカードは当然落とされている。そんな中で同じ土俵で勝負を仕掛けようとするのは土台無理な話だ。だが、速度を落とさせるカード+ドローソースやサーチカードがあれば、たとえ落とされても、状況に応じたそれらのカードを探しに行くことができる。逆にそういったカードがなければ、それはもうある種の「ご都合」頼りになるしかなく、うまくはいかないだろう。

この観点において、非常に感銘を受けたリストは、ここ最近で3つほど確認している。アーキタイプはSneakShow, Been Domain Control, Mono-Blackだが、デッキそのものをここで出すことは、著作者の意図しない流布となる可能性があるので、ここでは割愛する。

Conclusions

上記のことからわかるように、《悲嘆》はレガシー環境において、ゲームレンジに噛み合う強力なカードであるのは間違いないが、そのプレイはUB Scamの強さの本質ではない。むしろこれが本質なのであれば、UB Scamは旧リストの時代から常に支配的でなければおかしいのだ。そしてここまで見たあなたなら、もうUB Scamの強さの本質は自ずと見えてくるだろう。

References

(1)レガシーにおける青黒というデッキ(2024年6月24日禁止制限告知)(https://note.com/shot_a33/n/n1f885563ffd6)
(2)なぜレガシーで《悲嘆》は禁止されるべきか
(https://note.com/dod2gaia/n/nf08e0764306b)
(3)【MTGレガシー】悲嘆について(https://note.com/kiyoaggro/n/n5cfd2b539bc9?sub_rt=share_pb)









































































































おまけ

ここからは禁止について触れるので、語調てきとうの個人的感想です。
個人的には《再活性》禁止以外この状況は続くやろなぁ、とおもう。
そしてもし、《再活性》が禁止になっても、《超能力蛙》がいる限りUBorUBx一強は変わらないでしょう。というかどちらかというと蛙のほうがヤバい。あの生き物がいる限りはコンボでも除去取らんといかんと思うレベル。アルカニストよりつよいのでは?
《カザド=ドゥームのトロール》が禁止とかも正直意味が解らん。なんでそんな意見が出るんだ。ソープロでもしとけ。ただ一つ思うのは島サイクリングが《ロリアンの発見》でほんとによかった。あれが強い生物だったらやばかったね。

正直次で介入はされて、体裁を保つ《悲嘆》規制ですまされそうで残念。もう流石に《残虐の執政官》とか《偉大なる統一者、アトラクサ》とかバカツヨ生物出すぎだしええやろ、《再活性》で。方や出ただけでプチ絶望将来、片やモリモリキーワードにDigみたいな能力つけやがって。

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