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劣性の遺伝子くん

「僕は、劣性の遺伝子くん。自分でくん付けするのもどうかと思うが、単に『劣性の遺伝子』だけでは、なんだか教科書に出てきそうな堅苦しい感じがするので、自分でそう呼ぶことにしている。僕はさまざまな情報を持ったうちのひとつで、きみの思考の一部を、内側から請け負っている」

体内にもて余したエネルギーがふとしたはずみで外側に発露しそうになるとき、遺伝子くんはわたしに語りかけてくる。

「ああ、きみは今日

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「私は君と、君の大切なものの全てを、心のユートピアに幽閉した。このユートピアは有限で、時間とともに色を失い、やがてその空間に新しいユートピアを構築する頃には、もう君のことをすっかり忘れてしまう。記憶は過去から未来へと捨てられるが、ユートピアは循環し、再生する。」

後悔や四季や、あと流星のきらめく世界

河川敷で夜空を見上げたら、雲の合間に流星。この街で私はストレンジャーで、匿名性の中でとても自由だ。
酔いが回ると明日やあさってのことが比較的どうでもよくなり、ストレンジャー然としている私、恐れもせず大地に転寝。雨上がりの地面がつめたい。満天とはいえない星空の隙間に白鳥座。吹き抜ける風が涼しい。草原から昆虫と蛙の大合唱。河川敷と公道を区切るガードレールが、日常と非日常を分断するように白々と続いてゆく

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或るNへ

洗礼 感性は陽の気を誘う
然らば遠く 今日の日を待っている

ずっと混沌の隣にはもう
ずっと混迷を極めるLandscape

君はどこに立っているの
時が経って 鮮明に少し泣いている

君はどこに立っているの
守るもの 互いの信頼した明日を

洗礼 感性は陽の気を誘う
然らば遠く 今日の日を待っている

有限 無限は次第に色を失う
然らば遠く今日の日は消えていく

同の無機質は笑う
十の窒素をあげる

ここで息する私は
大体の世界を回してる

融点と沸点と 炎上の意
言うと 縁と降ってなお
賛同ない されど愛の
誓いはここで立てたもの

greeting

ある笑みは 灯をともし
呼ばれる時を知っている
飛来する君はいつも
つじつま合わせをくりかえす

曖昧に知らせたい
ハローハローが聴こえない
合図して 判定を待って
行く鳥はグレーの羽

ある意味の仲違い
静かに波は凪いでいる
飛来する君はいつも
広がる溝を飛び越えて

曖昧な人が好き
ハローハローをやめないで
合図して 判定を待って
明日は我が身を案じるわ 

(有利 ほら)

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