"ステージリーダー"がいてくれる世界線
2010年に結成されたアイドルグループ、SUPER☆GiRLS (スパガ)。
2023年12月29日、SUPER☆GiRLS デビュー13周年を記念するワンマンライブにて、新体制が発表された。
それまで6代目リーダーとしてグループを率いてきた3期生の阿部夢梨卒業に伴い、7代目リーダーとして5期生の竹内ななみがグループのリーダーに就任。
そして同時に、4期生である門林有羽が『ステージリーダー』というポジションに就任したことが発表された。
この発表を受け、『ステージリーダー』というポジションに聞き馴染みがなかった人は多かったと思う。正直、自分もその一人である。
試しにWeb検索で『ステージリーダー』という用例を検索してみると、トップにはこのスパガの発表の記事くらいしかヒットしない。
もう少し詳しくリサーチをしてみると、2014年に東京女子流がメンバーの役割を整理する際に『ステージ・リーダー』という文言を使用した例がヒットした。
しかし、この場合はメンバー4名中4名にそれぞれ役割を命名しており、もっと人数が多く全メンバーに肩書が付与されているわけではないスパガにおける "リーダー" を冠した命名のそれとは少し事情が異なるように感じられた。
今回は、この新たな役割体制が発表されたスパガを眺めている一人のヲタクとして、この発表の前後を過ごしながら想ったことを書き留めてみたい。
(各本文中の表記は記載時点のものです。敬称略。)
『グループリーダー』と『ステージリーダー』
2024年3月9日、SUPER☆GiRLSの公式YouTubeチャンネルに一本の動画が投稿された。
『スパガ7代目リーダーとステージリーダーのリーダー対談』と題されたこの動画は、その名の通り年末に7代目のリーダーに就任した竹内ななみとステージリーダーに就任した門林有羽が対談する20分ほどの動画となっている。
ここから先はこの動画の内容についても触れていくので、もしまだ未視聴の方は一旦ここで動画本編を観てから読み進めていただくのが良いと思う。
本人たちが語る各ポジションの役割
まず、竹内が就任した『(グループ)リーダー』というポジションは多くのグループにおいて馴染みのあるポジションのため、イメージが湧く人も多いと思う。
動画内ではこのポジションの役割の例として「ライブの挨拶やMC」「現場での挨拶などの代表」などが挙げられており、"表立って対外的にグループをまとめていく代表" といった感じである。
では、『ステージリーダー』とは一体どのような定義・役割なのだろうか…?
就任時の発表や今回の動画にて語られている主な役割の例は下記の通り。
ライブのセットリストの考案を率いる
ライブに向けてリハーサルなどを仕切る
ライブ当日などにも公演の流れをメンバーとすり合わせる
簡単にまとめると "ライブ・ステージ関連の検討や準備を中心となって推進する役割" と言ったところである。
今までの体制
今回スパガに『ステージリーダー』というポジションが新設された経緯について、今まで『リーダー』がグループ全体の代表としての振る舞いだけでなくグループの活動に関わる各種要素について一人背負っていた体制を改め、各要素を皆で分担することでリーダーの負担集中を細分化したいというのが経緯とされている。
実際、従来のスパガにおいては『リーダー』以外の肩書は基本的には明文化されておらず、セットリストなどのライブの流れの検討やリハーサルの仕切りなども、リーダーが中心となって行っていたようである。
例えば下記のスパガ公式YouTubeの動画では、当時の阿部リーダーが2021年のワンマンライブのリハーサルを例に、セトリ・演出・MCなど様々な観点からリハーサルを推進している様子が紹介されている。
そしてその『リーダー』というポジションに就くメンバーについては、他の同様のアイドルグループにおいても多くの場合は一番先輩となる期から選出されることが多いように感じる。
実際、歴代のスパガのリーダーも、全員その時点での一番在籍が長い期から選出されてきていた。今回2023年末の阿部卒業に伴い3期生が全員卒業となることから、従来の考え方に沿うと4期生からリーダーが選出されると考える人も多かったと思う。
しかし今回は従来の役職構成にとらわれず『(グループ)リーダー』&『ステージリーダー』という構成になり、リーダーに5期生の竹内、ステージリーダーに4期生の門林が就任したというのはこれまでのリーダー構成とは色々と異なるわけである。
適材適所、職務分掌
昨今のアイドルグループにおける活動内容は多岐にわたり、ライブステージの準備ももちろんではあるが、衣装やグッズの考案などもあれば、10代~20代のメンバーが多い女子アイドルグループにおいて時には "学業との両立" などもしばしば話題となる。
そういった様々な活動上のミッションについて、すべてを一人の『リーダー』が抱えるという体制から、メンバーの間で適宜分担しながら進める体制へ…というのは理に適っていると個人的には感じている。
そして実際、ここ数年のスパガの活動においても (肩書こそ明言されていなかったものの) 例えば衣装・グッズの監修を3期生の長尾しおりや5期生の田中想が担当したことが発表されることがあったりと、分野に応じてリーダー以外のメンバーが専任で監修・推進を担っているケースはあった。
このように "従来のリーダー" が担っていた各種役割をメンバー間で領域をもとに分担する体制を進める過程で、今回1つ「ライブ関連という大きな役割の肩書が明確化された」というのが個人的な印象である。
実際、門林も半年以上前から既に各種ライブのセトリ考案などに本格的に携わっていたこともあり、就任することによって体制に劇的な変化があるというよりは、そこに "役割の肩書がはっきりついた" というのが実情に近いと思っている。
こういった領域別の分掌というのは一般的な企業においてもCEO(最高経営責任者)とは別にCTO(最高技術責任者)やCFO(最高財務責任者)などの役割が掲げられているといったようなケースがよく見られ、ある意味ではこういった分掌に近いものだと考えることができる。各CxOが各領域を俯瞰しながら専門性をもとに推進するというわけである。
そして、こういった領域別の"分掌"は必ずしも決して"分断"ではないと信じている。CxO体制においてもすべてをその責任者や部門のみが抱えるわけではなく、最終的には全体で連携しながらシナジーを生み出し課題の解決・目標の達成に向かうことが期待される。
新体制のスパガにおいても、グループリーダーが竹内&ステージリーダーが門林というポジションが発表こそされたわけだが、だからといって例えば "門林がすべてセトリをトップダウンで考えている" というわけではない。竹内はもちろん、他のメンバーやスタッフとも意見を交換しながら作り上げているものである。
そしてCxOの話で各専門領域が異なる専門性があることなどからそれらのCxOの間に優劣がつくものではないのと同様に、今回の布陣についても "『(グループ)リーダー』が絶対的なトップ" というよりは、あくまでグループの活動における各分野について適材適所で推進できるメンバーを考えて組まれた連携分掌体制、というような印象を受けた。
そして、ライブステージを生業とするアイドルグループで分掌を進める上で、ステージに関わるミッションを推進する役割を設けるにあたっては、グループの中で特にライブの経験があり、そういった検討などに長けているメンバーとして、全体の年功序列にとらわれず門林が就任するのは自然な流れだと感じた。
"リーダー" が持つもの
環境に応じたリーダー属性
"リーダー" と一口に言っても、環境や体制によってその姿勢というのは様々なパターンがあり、例えば「その領域の能力が高い人が専制的にリードするタイプ」とか、逆に「メンバー個々の経験が豊富であれば実動は委任型のタイプ」とか、「組織のメンバー皆でフラットに活動や検討推進を進める民主型のタイプ」などがあるとされる (詳しくは"リーダーシップ行動理論" などと調べると具体的な分類事例がある)。
個人的に、これはアイドルグループのリーダー役割においてもある程度パターンのバリエーションがあって良いものだと感じている。
上記のパターン例における「専制者」や「個々の経験」を例えばアイドルグループにおける「センター」「個々の在籍期間」などで表現してみれば実際に様々なパターンのグループ体制が想起される。
また、他にもそういった取りまとめを行う際の振る舞いについて「課題解決のために実働をプッシュしていく」パターンと「実働は他の各メンバーを尊重しつつ、周りとの対話などを元に活動の環境や空気感を整えるサポートを主とする」といったパターンなど、リーダーの振る舞い方に関する分類の方向性もあり、単に "リーダー" と言っても最適なタイプは環境によっても様々であることは想像に難くない。
これらのリーダーの属性はリーダー本人の性格や経験をもとに、その環境やメンバー構成などによっても必要な特性が変わるものであり、絶対的な正解は無い。
2024年スパガのリーダーズの性格
今回 "リーダー" と名の付くポジションに就任した竹内・門林についても、その経験・性格・これまでのキャリアなどが良い意味で両者タイプが異なるところがあると感じている。
実際、それぞれの性格やリーダーポジションに就くにあたっての価値観などが前述の対談動画で触れられており、指標として「MBTI」や「リーダーに必要だと思う三要素」といった観点をもとに紹介されている。
二人それぞれ近いところもあれば異なるところも存在しており、個人的にはそれが新体制の役割分担の過程で、軸となるところを共有しながらも互いに異なるアプローチで推進を進められるような上手い形にハマっているように感じている。
具体的にはグループの成長という目標やグループの持つコンテンツへの愛情や覚悟、そしてそのための "リーダー" としての信頼の獲得などの重要性を共通認識としながら、ライブ経験が豊富でありコロナ禍前のライブシーンの経験もある門林がライブステージに関して中心となって集中して推進、フレッシュなグループの "対外的な顔"となり全体を竹内がまとめながら進んでいくという体制が、個人的にとても腑に落ちて安心した…そんな采配だと受け止めている。
14年目のアイドルグループ
過去、現在、未来
スパガは現時点でグループとして14年目。
日を重ねるごとに様々なグループが結成されたり解散していったりする怒涛の業界の中で、比較的グループの歴史としては長い方になってきているように思う。
数値的なデータとしても、加入したメンバーの総数は35名、楽曲資産も120曲以上あり、ここまでの歴史を持つ現行の似たようなグループは体感としてそこまで多くは存在しない。
とはいえ、年月を重ねるごとに時代や業界をとりまく環境は当然どんどんと変化しているのもまた事実である
アイドルグループが毎日のように結成/解散/加入/卒業などを繰り返しながらしのぎを削るいわゆる『アイドル戦国時代』と呼ばれることもあったり、直近の数年間はいわゆるコロナ禍を挟んだことでそもそも「ライブ」というものの空気感やその開催され方、そこに足を運ぶ人たちの価値観の変化を感じることも多い。他にも、この十数年で各種SNSの発展、情報技術の急速な進歩によるメディアや特典会の多様化なども見受けられる。
今スパガに在籍しているメンバーの4期・5期・6期それぞれが加入した時期の間でも、時の流れというべきか上記のような変化は当然続いている。
その中でもなお、グループが続く限り少しでも良いライブ・輝く瞬間を創っていくこと、それにむけてメンバーとグループのパフォーマンスを最大化していこうとするにあたり、新しいスパガのリーダーズの布陣は個人的に今の最適解だと感じている。
グループとして活動の歴史や楽曲資産の豊富さを持ちつつ、それでいてメンバーそれぞれ様々な性格・経験やスキル・ポテンシャルなどの個性があり、新体制となってまたフレッシュになったSUPER☆GiRLS。
その未来が、より善いものになっていますように…そして何より、活動しているメンバーの1人1人が輝ける、健やかな場所になっていきますように……