広告枠NFTの問題点が多すぎる件について

こんにちわ、本業がWebの広告代理店のモッピーです。

仮想通貨メディアのCoinPost、dAppsMarket、CRYPTO TIMESがデジタル広告枠をNFTとして販売する実証実験をされていたのでおそらくサービス提供者より真面目に考えたことなんかを書いていこうと思います。

広告NFTプラットフォーム「Kaleido」

こちらのページに「Kaleido」の説明が書いてあり、このページを読むだけでも非常に面白いです。

このページでは、従来の広告枠取引と理想の広告枠取引という構図を用いて広告枠をNFTにするとこんな変化が起きるよということが書かれています。

・ブラックボックスな広告枠情報がオープンになり誰でも購入可能になる
・広告枠が定価で売っていたが、需給によって価格が変わるので収益機会が増加
・広告枠がNFTなので、2次流通する
・今までメディアになりにくかった、個人のTwitterの固定ツイートやメルマガなども広告枠になる
・スマコン決済なのでキャッシュフローが改善する

果たして広告枠をNFT化することで本当にこのような未来が訪れるのか考えていきましょう。

・ブラックボックスな広告枠情報がオープンになり誰でも購入可能になる

このプラットフォーム上でブラックボックスな広告枠情報がオープンになっているでしょうか。販売ページに記載している概要欄を見ていくと

CoinPostの公式サイト「トップページ」の掲載枠です。 読者ニーズの高い「ニュース一覧」の上部に掲載されるバナー枠となります。 CoinPostについて: 創業4年目を迎える国内最大規模の暗号資産メディア。各国の仮想通貨メディアのなか、月間訪問者数(データ元:SimilarWeb)世界3位を1位維持。 読者層:暗号資産関連、ブロックチェーン関連(投資家層含む)
Kaleido:coinpost概要欄より引用

CoinPostの情報はこれのみです。これはcoinpostの紹介であって掲載枠の情報ではないですね。しかもサイトのPVもわからず、広告枠が掲載されるトップページのimp(表示回数)などもわかりません。他にこの枠の平均CTRなども当然知りたいですがわかりません。

広告代理店として業務していて、通常はメディアから媒体資料などをいただき掲載を検討します(クライアントに提案するか検討します)が、この情報では絶対に提案できません。広告主側の広告担当者が直接検討するにしても情報が不足しすぎていて予算の稟議は通らないと思います。

他に販売ページには、募集者アドレス・広告枠サイズ・掲載イメージ・掲載期間・最低入札価格・現在入札の最高価格が書いてありますが、入札期間が書いてありません。

入札期間に関してはcoinpostの記事に書いてはありますが、Kaleido上では全くオープンになっていませんね。いやそもそも全ての広告枠のサイトURLが書いてないですやんw 運営者情報とかありとあらゆるものが不足しています笑

弊dAppsMarketの記事全て(約1300記事)の下部に広告枠を設けています。こちらのすべての記事に広告が表示される形となるので、おおよその訪問ユーザーが目にする広告枠となっています。
Kaleido:dAppsMarket概要欄より引用

続いてdAppsMarketさん。こちらはcoinpostの広告NFT紹介記事に「最低保証imp:12万imp」と記載されておりましたが、Kaleido上では記載されておりません。これでは最低保証impの約束が保証されるかわかりません。

imp保証とは、表示回数(インプレッション数)が保証される広告のことで、もし期間内に広告が表示された回数が約束数に満たない場合には、掲載期間を延長して広告を掲載することになります、、、がその計測ってどうするんでしょうか。これが果たしてオープンなのか、、、、

またこの広告枠はdAppsMarketの全記事ページの下部に表示されるそうなんですが、impの計測というのは基本的にタグを設置して計測しますが、タグの仕様によってはページ上部が表示された時点でタグ計測されてしまうというようなことが起こるため、実際にページ最下部にある広告枠が表示された回数が計測されているのか。これはかなり不透明です。

CRYPTO TIMESの記事に遷移した際、タイトル下に表示される広告枠のPC版です。記事が多く読まれることから最も表示される広告枠の一つです。リンク先のページへの遷移率が高く、現在は自社のリサーチコンテンツへの遷移メインで合計2つが遷移先と表示されています。今回はこの広告のローテのうちの1つを販売し、表示割合は40%で表示されるように設定します。【広告掲載希望の画像に関しての問い合わせは下記TwitterアカウントまでDMください : @cryptotimes_mag】
Kaleido:CRYPTO TIMES概要欄より引用

続いて、CRYPTO TIMESさんで、これが一番詳細に書いてありますね。やはりcoinpostの広告NFT紹介記事に「最低保証imp:PC4万imp、SP4万imp」と書かれています。

気になったのは「広告掲載希望の画像に関しての問い合わせは下記TwitterアカウントまでDMください」です。これは広告審査の基準だったりを教えてくれるってことなんでしょうけど、直接問い合わせが必要なのであれば何も自動化されてないですよね、、、ただの極端に情報の少ない純広告です。

「オープンになり誰でも購入可能になる」と書かれていましたがオープンどころか、入札して落札してお金払ったあとに審査落ちる可能性あるとか広告担当者としては予算とったものがゴミになる可能性があるのは怖すぎます。

全体を通じて、せめて事前審査の申込が可能なフォームを作るとかしないと全然オープンじゃないです。

広告枠が定価で売っていたが、需給によって価格が変わるので収益機会が増加

収益機会は果たして増加するのでしょうか。需給で価格が決まるのであれば需要が無ければ価格は低くなり増加しないこともありえるのでは、、、インプレッションなりクリックなりで確実に収益が入るアドネットワークの広告と、純広告のオークション形式と、どちらが収益機会が増えるかというと人気メディアはオークションのほうがよいかもしれませんが、そもそも人気メディアはアドネットワークでも優遇されます笑

広告枠がNFTなので、2次流通する

NFTにする唯一のメリットと言えるかもしれません。逆にこれ以外はメリットないです。

そもそも海外では普通なんですよね。こういう純広告の広告枠販売プラットフォームって。2017年頃はビットフライヤーさんが、海外の広告枠プラットフォームで販売されていた広告枠に出稿していたのを確認しています(別ルートで掲載してるのかもしれませんが)

今までメディアになりにくかった、個人のTwitterの固定ツイートやメルマガなども広告枠になる

別にNFTである必要は一切ないです。

スマコン決済なのでキャッシュフローが改善する

ゴメンちょっと意味わかんないです。仮想通貨をキャッシュフローに含ませることで大体の企業は大変な思いをします。

広告NFTプラットフォーム「Kaleido」(2回目)

画像1

SP側のデザインこれなんですが、いやーレスポンシブデザインくらい組みましょ、、、個人が企画してるんならともかく企業メディア3社が噛んで企画してるんなら。

そもそも誰が運営してるのかわかりません。国内のコンプラの厳しい企業なんかは、こういった謎の媒体にお金を出せないんですね、、、(直接メディア企業との取引だって言われるかもだけど、じゃあ最初っから直接やり取りするわwと)

最初にも引用したこちらの紹介にある「従来の広告枠取引」っていうのがNFT使ったところで何か変わるかって言われると何も変わらないんですよね。このプラットフォームを見て普通に広告代理店も検討すると思いますし(しづらいけど)、逆に他の広告プラットフォームも広告主企業が直接掲載することも全然普通にありますし。

coinpostさんの紹介記事に、こんな風に書かれていました。
1.広告枠の収益性向上
 →DX化(メディア側のメリット)
2.純粋な広告枠効果とは異なる新しい体験価値創出の可能性
 →NFTで広告掲載された(ユーザー側のメリット)
3.広告枠NFTの2次流通の可能性
 →NFTにより(ユーザー側のメリット)

純広告は結構煩雑というかオペレーションの工数結構かかるんですが今回でそれが解消されていないのと、純広告のプラットフォームは代理店として欲しいので普通にクレカでやればいいんじゃないかなーって思ってたりします。

実際に入札してみた

これ落札じゃなくて入札した時点で送金されちゃうんですね。

マジかよと思って聞いてみた結果、自分でKaleido上でキャンセル処理すると戻ってくる仕様とのこと。これはmatic側の問題かもしれませんが私はキャンセルボタン押してから24時間経過しましたがまだ返金されていません。

本当は落札してからオペレーションなどを書いていこうと思ったんですが、トランザクションが思った時間に通らず落札出来ず。というか入札期限過ぎても普通に入札出来てしまいました。せめて販売期間終わったらフロントページで入札ボタン押せないようにしないと、、、

また、入稿しようと思っていた広告が実際に掲載できるのか、大分前に個別でメディアさんに連絡していたのですがご多忙のようでご返信いただけたのは入札期間終わったあとでした。落札したあとに審査NGだから掲載出来ないと言われたらマジで時間と予算の無駄以外の何物でもないです。

って思ってメディアさんとやり取りしているとこんな返信が、、、

最高値の方が落札するオークション形式に見えますが、入札金額プラス広告内容でメディア側が審査を行い適切なコンテンツを選ぶ形式となっております。

審査基準・規定も明文化されていないで、広告主側にお金だけ支払わせておいてメディアが一方的に掲載する広告を選ぶとか広告業として意味がわからないです。厳しいこと言うようですがサービスとして破綻しているかと思います。しかもそれじゃあ二次流通出来ないですよね。

また各メディアさんから、それぞれ「実証実験ですので」とのことを言われましたが、広告を販売した時点で商品・サービスだと思いますので大して考えずにサービス提供した言い訳にしか聞こえませんでした。

KaleidoのUI・UXが悪いとかだけならともかく、広告業ならごく当たり前の前提をクリアしていないでおいて「実証実験」と言うのは広告で生計を立てているものとして強い怒りを覚えました。ママゴトかよと。

まとめ

元々純広告って昔流行ってたというか主流だったタイプの広告で、現在の主流ってDSPだったりアドネットワークに出稿だったりするわけですよ。

なんでかっていうと共通のデータで効果を検証出来ますし、純広告って基本的に費用対効果悪いんです笑

昔主流だったものが廃れたというのはそれなりに理由があるわけで、coinpostさん記事ではDX化と書かれているけどアドテクとは逆行していると思っています。

広告代理店を使う最大のメリットは、広告主が直接広告運用するより絶対的に高い効果を出せることにあるんですよね。広告主企業が無駄に広告出稿するより効果の良い手法だったり媒体のノウハウがあるから広告代理店は手数料貰えるわけで、僕とかは広告主企業の広告担当者が高い知識を持っていたら自分で運用した方がいいって言うこともあります。

広告運用が下手な企業ほど、奇策みたいな飛び道具を求めるんですが王道が王道たる所以って、効果が良いから以外ないんですよ。

あとは「ブラックボックスな広告枠情報がオープンに」ってKaleidoさんの文言とは裏腹に、審査規定も不透明でブラックすぎるだろと。

発想自体は面白いですし、私もIT企業の新規事業企画やってたときに全く同じ純広告のプラットフォームを企画したこともあったんですが、ごめんなさい、正直広告企業に勤めた後に見るとプラットフォームとしての完成度が児戯に等しいです。これで喜ぶのは素人だけかなぁと。色々残念でした。

また仮想通貨界隈で非常に多く、今回だけではないですが、お金を扱うサービスを提供しておいて『実証実験』と言うのは本当に悪習だと思うのでやめたほうがいいと思います。


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