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aiko「青空」と受験の日の渋谷

aikoさんの「青空」という曲との思い出を書こうと思います。この記事を読んで気になった方はもし良かったら聞いてみてください。

このシングルが発売されたのは2020年2月26日。この日私は夜の渋谷をさまよっていた。当時わたしは仙台に住んでいたが、大学受験で東京に来ていたのだ。

国公立大学の前期試験2日目が終わり、私は泊まっていたホテルがある渋谷に戻ってきていた。その日は一泊して次の日には仙台に帰る予定で、その日は東京の夜を思う存分楽しんでやろうと思っていた。

試験の日程からして、その日のうちに仙台に帰ることもできるし、実際その前の年はその日のうちに帰っていた。(私は一浪していて、この話は浪人時の受験のときのことです)けれど、前の年に、その日のうちに帰ってしまったことを私はずっと後悔していたのだ。

受験の2日目、2月26日は私の誕生日だ。誕生日を2年連続で受験でつぶし、そのまま帰ってしまうのはもったいない。せめて、東京の街で誕生日を過ごしたかったのだ。そうして前年の無念を晴らすために、その年は一泊することに決めたのだった。

いざ受験が終わって渋谷の街を満喫しようとするものも、どこに行けばいいのか分からない。とりあえず外に繰り出し、特にどこに行くかも考えずに歩いていると、aikoの大きな看板が目についた。渋谷の大きいタワーレコードのビルにたどり着いたのだ。そういえば今日が新曲の発売日だったと思い出す。店内に入り、買うつもりもないのに「青空」のコーナーへと赴いて曲を視聴する。

この曲は簡単に言うと、別れた相手への思いをつづった曲である。要するに失恋ソングと言えなくもない。aikoの歌はほとんどが恋愛についての歌詞からなり、この曲もそうである。ただ、aikoの色々な曲に共通して言えるのが、

その曲を聞くときの心情によって、歌詞が恋愛以外の様々なことにあてはまって聞こえてくる
ことだ。

正直この時の受験の手応えは散々だった。私はもうこの大学に来ることはないだろう。もう渋谷の街にもしばらく来ないのだろうと思った。
悔しくて、その大学のためにいっぱい勉強して、また落とされるのが、なんだか片思いの相手に振られるみたいに思えた。親や同じ大学を目指す子にはとても言えることじゃなかったが、実をいうと、私はどうしてもその大学に入りたかったわけではない。複雑な思いで受けた試験だった。だから、正確に言えば、そこまで好きじゃない相手に尽くした挙句に振られたみたいだった。それが屈辱的だった。

そんな状態の私に、この歌の歌詞がささった。サビの「バカみたいだな」という歌詞がつらい。「あなたにもう逢えないと思うと 体を  
脱いでしまいたいほど 苦しくて悲しい」と言う歌詞がある。勉強ばっかりしていた一年が報われないことや、同じ大学を目指していた予備校の友人と疎遠になること、高校の親しい友人に顔向けできないこと、
今までの色々なことを忘れたくなってしまうことが、どうしても悔しくてたまらなかった。

そんなこんなで、発売日が私の誕生日だったこと、そして受験が終わる日だったこと、その時の自分の感情とつながったことなどから、「青空」には深い思い入れがある。根に持つ性格から、悔しさは1年経った今でも尾を引いて、ずっと少しだけつらい。この気持ちはいつまで続くのだろう、と考える。私はずっとつらいままなのだろうか。

けれど、どんな気持ちもきっと少しずつ薄れるんだろう。そう信じたい。月日が経って未練がなくなったときに、まっさらな気持ちで、また渋谷の街に繰り出したい。

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