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映画感想『名探偵コナン 緋色の弾丸』はなぜ面白い?


思い出補正も間違いなくあるでしょう。
今思えば、コロナで鬱屈とした雰囲気があたりに充満していて、僕自身も映画館での映画体験を久しくしていない中での、劇場でのあの疾走感でした。
コナン映画のお祭り感を初めて体験したのがこの映画でした。
よって、今までのコナン映画で1番面白いのがこの映画だと思っているのかもしれません。

けれども、いくら久々の映画体験をしたからといって、その時の僕は映画自体の面白さを全て無視して映画の価値を決めつけていたのでしょうか。そうあっては欲しくありませんね。

さて、事の発端は、現在大絶賛中の100万ドルの五稜星を観て、大絶賛の気持ちになったことです。それだけならともかく、緋色の弾丸よりも満足度が高い気がしてしまったのです。

僕の記憶の中で緋色の弾丸は至高の一作です。正直、他の作品が群れになっても敵わないと思っていましたから、五稜星に押されつつあることが、最早不思議でした。

ということで、事実と向き合うのは怖かったですが、緋色の弾丸をもう一度観てみました。


するとどうでしょう。
やはり思い出補正が強かったか、あの時ほどの震えは起こりませんでした。
よくよく観てみると、僕は赤井ファミリーにほとんど興味がありません。将棋の人も、小さくなった母親にも興味がなく、よっぽど平次とキッドの方が好きです。事件も複雑で、横軸と縦軸が絡み合って、2回目のはずなのに、1回目よりも難しく感じた自分がいます。

僕は美化された記憶に操られていただけなのでしょうか。


しかしです。2回目の緋色の弾丸を踏まえた上でも、緋色の弾丸は最高だという気持ちが残っていたのです。あれだけ打ちのめされてなお、つまらない部分を突きつけられてなお、緋色の弾丸が至高のままなのです。恐らくですが、無意識に粗を探そうと思いながら緋色の弾丸を観ていた部分もあるでしょう。僕の捻くれた心はしばしば自分の心が傷つかないように予防線を張る癖があるので。

では、緋色の弾丸のどこが面白かったのかと、改めて自分に問うてみましょう。

答えが返ってきました。
それは、クエンチです。
皆さん覚えているでしょうか、病院の中に一気にガスが充満し、コナンたちが死にかける場面を。あそこの緊張感、凄くなかったですか?疾走感のあるオープニングから始まり、終始事件が起きても楽しげな雰囲気があったのですが、あのクエンチの場面で、一気に緊張感が頂上まで上り詰めました。ある意味他人事だった恐怖が、あの瞬間、自分たちのものになりました。

何が良いって、コナンが全くなす術がなかったということです。原因を解明することもなければ、サッカーボールを蹴り飛ばして建物を破壊することもなく、ただただ倒れます。犯人に殺人の意図があれば、あれでコナンたちは死んでいますからね。つまるところ、あれはコナンの完璧な敗北なのです。

そして、突如終わった恐怖を一蹴するように、コナン映画お馴染みのチェイスシーンに移ります。良いですよね。クエンチでアクセントを加え、静から動への激しい展開。それまでバラバラだった勢力も集結し、僕の地元名古屋ではしゃぎ回ります。

書いているだけで楽しいですね。

思い返してみると、やっぱりここなんですよね。緋色の弾丸の魅力は、他のコナン映画にはない突然の死の恐怖を描き、そこから一気にコナンがリベンジをするかの勢いで畳み掛けのチェイスシーンに入るところです。

ここの緩急は、他のコナン映画ではまだ作られていないと思います。

えぇ、書けば書くほど、再び緋色の弾丸の評価が上がっていきます。

コナン映画のクオリティが年々上がっているのは認めます。力の入り方が桁違いです。なのでまた来年、きっと恐ろしい程に面白い映画ができますが、果たして緋色の弾丸を受け止めることができるでしょうか。
結局、次回作が楽しみなだけですね笑

自分の中での話です。コナンはどの映画もその人の1番になることができるクオリティが担保されています(業火の向日葵?)。

皆さんも、自分が1番だと思うコナン映画を見返してみるのはどうでしょう。きっと、ここが面白い、という譲れないポイントが改めて発見できるはずです。

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