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漫画感想『NARUTO』少年篇

電車の中で少年漫画を堂々と読むのは何だか気恥ずかしいですが、巻が進むにつれてどうでもよくなってきました。

ナルト少年篇、面白いですね。

ナルトの馬鹿で真っすぐな言動で物語が予想外の方向に、けれども不思議なことに王道さは失わない方向に進んでいくのが面白くて、何度も読んでいるはずなのに熱中してしまいました。

岸本先生の魅力はやはり絵とキャラですね。ストーリー展開やバトルの驚きも、プロットのおかげというよりは、絵とキャラのおかげ、という気がします。

岸本先生は、カメラをどこに置くのかという部分に独特のセンスとこだわりがありますよね。
よく言われますが、魚眼のカメラを使ったような空間が歪む描き方だったり、ナルトが螺旋丸をカブトに打つ時の、見開き1ページを使ってあらゆるアングルから新技を披露する描き方は素晴らしいですし、終末の谷での、ナルトとサスケの激闘では、足元から二人の激突を見せ、、それでとどまらず水の中にカメラを沈めて、二人の陰だけで戦いを見せるというやり方が、本当にセンスと絵力がリンクしている部分です。
子どもの時は、次への展開が気になってすぐにページをめくっていましたが、一枚の絵に込められたアングルの妙を、今なら楽しむことができます。

そしてキャラです。どういうわけかシンプルに見えるのに、まったく被ることなく個性が際立つキャラ造形も、岸本先生の魅力ですよね。中忍試験が始まり、急に新キャラが多数登場することになりますが、自然と彼らを受け入れることができます。改めて読んで、こんなに急に新キャラが出てくるのか
と驚愕しました。あれはよっぽど自分のキャラに自信がないとできない展開だと思います。
服も顔立ちも、使う忍術も、使う口癖も、全部被ることがないわけですから、そんなキャラ同士が戦うだけで、画面が映えるというものです。

また、ナルトの心情というのが、昔よりも痛みを伴って心に入ってきます。ナルトがどれだけ辛かったのかを、かつてはあまり考えていませんでした。ナルトが成長して周りを認めさせていくだけの、右肩上がりの物語として読んでいたのです。しかし、右肩上がりの物語の途中には何度も回想が差し込まれ、ナルトの中心にある思いはいつまでも同じなのだとわからせられ、だからこそより一層、ナルト対ネジ、ナルト対我愛羅、ナルト対サスケの重みが増えていきます。やはり絵とキャラに強力な力がありますから、ナルトの感情と重なって、もの凄い迫力が体に押し寄せます。そして泣けてきます。術の後出しじゃんけんだろうが、気合で力が湧き出る苦手な展開だろうが、あまり関係なく楽しむことができます。

さて、二十七巻の途中までで少年篇が終わりまして、今は青年篇を読み進めているところです。
青年篇からは、ナルトたちが悩める思春期へと成長していきますから、ストーリーが暗くなっていく印象があります。ナルトのプロット自体はそこまで好きではないので、昔は青年篇ではなく、少年篇を繰り返し読むにとどめていました。
今回はどうでしょうか。僕もまた年を重ねていますから、きっと新たな面白さに気づくことでしょう。


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