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08_キウイフルーツで絵の具をつくる(試行錯誤)

11月19日に開催したイベント「キウイフルーツを味わいつくそう!」が盛りだくさんの内容と手応えをもって終了しました。領域を超えて人が関わり、多様な視点の学びがあり、参加者それぞれが真剣に楽しんでいる瞬間があること。
イベント時の充実感を言葉で伝えることの限界を感じていますが、それでもやはりここに残しておきたいなーと思い、数ヶ月の格闘…いや闘いではない、試行錯誤を書いてみることにします。

まずはイベント前の「絵の具づくり」の話。
発端は、今回のイベントの案内人 原田祐馬さんの言葉。

摘果キウイでインクがつくれるかも…」

収穫したキウイフルーツのパッケージづくりまでをやってみよう!という当初の想定を大きくこえ…ワクワク感が降ってきました。

摘果キウイとは?

摘果キウイ
6月中に収穫時の80%くらいの大きさにまで成長するキウイ。キウイ1つ1つに十分栄養がいきわたるように、枝になりすぎたキウイを間引いて数を減らします。この間引きキウイのことを摘果キウイと呼んでいます。

参考: https://www.e-kiwi.jp/seiiku/oshiete/oshiete12.htm

松村静香さん(つなぐ農園)に確認すると、当時キウイの摘果作業真っ只中との返答。良きタイミング。

摘果キウイ
この段階では青臭い香り(キウイの香りにはほど遠い)。
コンテナ一杯分の摘果キウイ

イベント用にコンテナ1杯分を確保し、原田さんにも実験用としてお送りし、残りは11月に使えるように冷凍保存することに(冷凍して大丈夫かどうかも未知。実験です)。

実験① 液体から絵の具をつくる

さぁ作ろうという段階になって、これまで意識したことがない言葉の違いに気づきました。「インク」と「絵の具」、いったい何が違うのか?

染料はいわゆるインクで、絵の具はすべて顔料です。
染料と顔料の違いは、色の粒子の大きさです。
染料は粒子が細かいため紙の繊維に染み込んでいき、逆に顔料は粒が大きいため紙の上に乗るというイメージです。

SAKURA Artsalon Osaka

なるほど。

まずは手に入れた摘果キウイを使って絵の具をつくってみることにしました。参考にしたのはこちらのサイト。

まず、摘果キウイを皮と実に分けます。

煮出したり擦り下ろしたりして液体を抽出。

左:皮を煮出したもの+片栗粉  右:実をすり下ろしてこしたもの+片栗粉

紙にのせてみると、こんな感じ。

フレッシュな素材からそのまま作れる絵の具。サイトの中では「膠(にかわ)」を使用しているのですが、別サイトを参考に「片栗粉」で子どもが口に入れても大丈夫な絵の具を作りました。特別な材料を準備せずとも台所にあるもので作れるのが魅力です。

実験② パウダー(顔料)から絵の具をつくる

次に、キウイをパウダー(顔料)にして絵の具にする方法があると原田さんに聞き、試してみることにしました。

<1> キウイを乾燥させる

パウダーを作るには、キウイを乾燥させる→パウダーに加工する、という手順が必要です。乾燥させるだけなのに、やってみると思うようにいかないことばかり…。

  1. 皮をむく

  2. 薄くスライスする

  3. 天日干し or オーブン低温焼き

意外と多い水分量。乾燥が進むにつれ、時間が経つにつれ、緑色が消えていく現象…(時間よ止まれ!と叫びたくなる)。
どうにかしてきれいな緑色を残せないものか。
乾燥時間を短縮させることで緑色が残るのではないかと、塩を振って水分を出し低温でじっくり乾燥焼きをしてみました。

(上)塩を振って水分をだした状態
(中)オーブンの低温(100℃)で3時間ほど焼いたもの
(下)その後、2日間ほど室内で保存していたもの(左)とさらに1週間ほど保存したもの(右)

水分が少なくなっているため焼き時間は1/3ほどに短縮されました。早く乾燥させる方法としての「塩振り」は効果大。ただ、数日経つと黒っぽく変色してしまう問題は解決しませんでした。

<2> パウダーにする

茶色になったドライキウイを自宅の電動ミルで粉末にしてみたものがこちら。

きれいな茶色

これにアラビアゴム(接着剤)を混ぜて紙にのせてみるとザラザラと粒が残る状態。…求められているパウダーはもっともっと細かい粒子なのだと知る結果になりました。

コーヒー用の電動ミルでは限界があることがわかり、家電量販店をいくつかはしごし、webでも調べ、良い感じの「強力製粉機」を見つけました。その名もコナッピー。これで絵の具向きのパウダーは作れそうです。

<3> 色のバリエーションをつくる

キウイで絵の具をつくるのに、茶色だけだとちょっと寂しい。できれば緑色に近い色味が欲しい…。キウイ畑に何度か足を運びながら「色」を探しました。10月半ば、畑に落ちている固めのフレッシュキウイをいくつか連れ帰り、冷凍していた摘果キウイも並べて比較実験をしてみました。キウイの葉も良さそう。

10月半ばのキウイ畑
左:冷凍しておいた摘果キウイ 右:フレッシュキウイ
左:冷凍しておいた摘果キウイ 右:フレッシュキウイ

摘果キウイは乾燥させると茶色になってしまいますが、フレッシュキウイはわずかながらも緑色が残ることがわかりました。

6月に乾燥させておいた皮付きの摘果キウイ(冷凍ものと比較すると色がきれい)

6月に乾燥させておいた摘果キウイは状態がよく、あわせて実験することに。素材を集めて乾燥させておけば、いつでもどこでも絵の具はつくれるということですね。

乾燥させた状態の素材
コナッピーで粉末にした状態の素材

柔らかい素材であればあるほど微細粉末ができやすく、固い素材はどうしても粒が残ってしまうことがわかりました。下の写真左上(摘果キウイ 皮つき)は宙に舞うくらいの微細粉末を使ったもの。良いものができると、俄然やる気が加速しますっ!!

粉末にメディウムと蜂蜜をよく混ぜたもの

パウダーを使う絵の具づくりは、原田さんに教えてもらったこちらのサイトを参考にしました。

自分でやってみると、粒子の細かさ、大事…!!と強く実感します。コナッピーで粉砕したものの中からさらに粒子の細かいものを集めて顔料にすると、よい絵の具になることがわかりました。

<4> 緑のグラデーションをつくる

摘果キウイに比べて短時間で乾燥することがわかったキウイの葉。並べてみると、微妙な色の差異がすてき。緑色のグラデーションをつくれると面白いんじゃないか…と試してみたくなりました。

キウイの葉
2日ほど乾燥させたキウイの葉

コナッピーで粉砕すると緑色の差異は消え…同じ色味になってしまいました。素材の色をそのまま反映させるようなグラデーションの絵の具づくり、いつかできるといいけどなぁ〜。

そんなわけで、イベント当日に向けたパウダー(顔料)の準備はできました!当日、子どもたちと一緒に絵の具づくりを楽しみます。

イベント当日のレポートはこちら。



身近なもので色をつくる、地産地色(ちさんちしょく)!

ビーツをローストした後のオーブンシート

夏にビーツをベイクしていた時のオーブンシートがとても鮮やかだったのを思い出しました。赤大根、紫芋、紫キャベツ、カラー人参…なども目に浮かびます。摘果されたものや廃棄される野菜でも絵の具作りにはガシガシ使える。パウダー状で保存しておけばいつでもどこでも誰でも使える。発展的にできそうなことも次々と思い浮かぶ。あぁーなんて…!
地域の素材で地域の色をつくる「地産地色」プロジェクト、そだてていきたいです。


NPO法人まちの食農教育

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