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野生ってなんですか? 〜SECIモデルとタレンティズムと野生の深い関係〜

先日、私が野中郁次郎先生の著書「野生の経営」を強く推しているのを受けて、それを手に取って読んでみたがよくわからないんです。との相談を受けました。「結局、野生ってなんですか?」との問いをもらったので、改めてここで整理しておきたいと思います。件の書籍のご紹介はこちら、

脱PDCAサイクル

最近、私は人の成長を促すにはPDCAを回すのではなく、SECIモデルを採用すべきだと主宰する私塾や高校の授業など、人前で話す様々な機会がある度に提唱しています。それは「野生の経営」を読んで改めて腹落ちしたからで、かなり以前からSECIモデルのフレームワークは知っていたのですが、全くピンと来ていなかったのは不勉強の致すところです。今になってこれだ!と思えたのは時代の変遷とも深く関わりがあるように感じています。モノづくりの世界で国際的に大きな評価を受けて製造業の分野で世界を牽引してきたトヨタ方式を代表とするカイゼンのサイクルは時代に沿わなくなっていると感じており、新しい時代に合わせた成長のサイクルが必要だと思うのです。高校での授業の模様はこちら、

ヒエラルキー、トップダウン管理組織からの脱却

なぜ、PDCAがダメなのか?と思われる方も多いと思いますが、その理由はシンプルで大きく2つの要素から構成されます。まず一つ目はマーケットの変化です。情報革命によってユーザーのニーズが多様化を極める中、トップ一人が考えて目標設定を行いヒエラルキー型のピラミッド組織でトップダウン方式で事業に向き合うのはリスクがあり過ぎるのは誰もが感じられていると思います。多様性に適応するには多様な人の様々なアイデアを集積する方が良いに決まっているし、ユーザーの求める体験はユーザーに近い人の感覚の方が理解が早く、深いのが道理です。これが全ての組織はボトムアップして末端のスタッフが自分の頭で考え、己の持つ道徳や倫理に従って事業を進めるべきだと、自律分散型組織が脚光を浴びている現在の組織論の大きな流れです。

皆、計画Pを立てるのが嫌い

2つ目に上述の前提に立って組織を構成するそれぞれの個が持続的な成長を目指す際に、PDCAサイクルを使うと大まか上手く行きません。それは、PDCAが管理型組織に適したフレームで自律分散型には適していないからです。そもそも、人は誰しも縛られるのが嫌いです。他人が立てた計画を押し付けられると仕事に対するテンションが下がり、最低限のことしかしなくなります。そこを上手く回すには圧倒的な管理システムが必要になります。そして、人が縛られたく無いのは他人からだけではなく、自分自身でも同じで、多くの人が詳細かつ綿密な計画を立てられないのは本能が働いているからだと私は思っています。計画(P)が杜撰だと行動(D)も曖昧になります。検証(C)は本来、行動の結果に対するもので、改善(A)を行うべきなのですが、そもそも、計画(P)が緩いのが上手くいかない根本原因なので、検証(C)のタイミングがズレてしまっています。結果は状態に由来する原則から見れば、全ては計画の曖昧さ=人は縛られたく無い本能に問題があるとなります。

Wikipediaから拝借

やりたいからやるのが野生

この根本的な問題を乗り越えるのが野生です。野生とは理論や理屈ではなく、直感的に行動する感性や感情を指しています。命の危険を感じた時に全てをかなぐり捨てて一目散に逃げ出すとか、追い詰められたら想像以上の力を発揮するとか、なんとなく嫌な予感がするから行動を控えるとか、面白そうだから何も考えずにやってみる、等々、しなやかに、強かに、頭ではなく本能的な感性で行動(D)を起こす、もしくは制御する、人間が誰しも持つ能力です。人間はこの野生の本能でこれまで生き延びてきたし、地球の覇者になりました。そこには誰にも縛られる感覚は無く、主体性を持って自分自身での選択を行える状態が整っています。やりたいからやる!もしくはオレがやらなきゃ誰がやる!というモチベーションが生まれると人は計画を立てる際のマイナスの感情を凌駕して実現や目標達成したいと思うものです。

http://www.osamuhasegawa.com/seci%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB/

実現可能性を高めるSECIモデル

誰にも縛られること無く、自由に思い通りに何でも出来る環境は誰しも憧れを持つと思います。しかし、それと同時にそんな感覚に任せて無計画の行き当たりばったりで事業や仕事が上手く行くのか?現在の厳しい弱肉強食の資本主義社会で生きていけるのか?との疑問が湧いてきます。その疑問を解消し実現性、事業性、経済性、持続性を担保するのがSECIモデルです。一人の野生的な感覚(暗黙知)でやりたい!とモチベートされた熱い想いを言葉で人に伝える(形式知)ことでその想いは二人称に連結化されます。そこで意見を戦わせる事で、モチベーションを保ったまま、実現性や合理性を考える機会が出来ます。それを更に整理した上で多くの人に伝えるとその想いが共有化されてムーブメントの種が生まれます。そして、共有化された概念やアクションをそれぞれが実践(暗黙知)に落とし込む事で想いは実現可能性を高めることになります。このサイクルを回す事で螺旋的成長に誘うのがSECIモデルです。

野生とはタレンティズムの源流

人間、一人ひとりが持っている違いは才能でもあります。その才能を発掘、発揮させるタレンティズム=才能主義は実は人が暗黙知として持っている野生を解き放つ考え方でもあります。個々が信念や倫理観に従って、周りの人と議論を戦わせて集合知を見つけ出すことで全体最適に留意する自律分散的な組織運営が可能になり、一人の熱い想いが伝播してムーブメントととなり、事業やプロジェクトを強力に推し進める原動力となると私は考えています。世の中を良くするとは世の中の人の幸せが増えること、組織も然りです。その幸せとは社会や組織を構成する一人ひとりの幸せの事であり、選ばれしトップリーダーが幸せになることではありません。そんな視点から見ると、解決出来ない数多くの社会課題が山積している現代を良くして行くには、個々の想いを表出する必要があり、社会課題の解決とはその一つずつの解決の集合体であるはずです。誰もが持つ野生、心の奥に秘めた感情や感性を解き放てる組織や社会を目指して行くべきだと思うのです。

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