現場を起点にした作る、売る、回すの三位一体論 ②marketing
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現場を起点にした作る、売る、回すの三位一体論 ②marketing

先日から私が生業としている工務店をはじめとしたモノづくり企業の事業をシンプルにまとめて「作る=product」「売る=marketing」「回す=management」の3つのタスクに集約し、これらの最適化は全て現場を起点に考えるべきだとの持論を書きはじめました。まず初めに「作る=product」がその根幹にあり、職人を始めとする現場人材育成の重要さを前回書きました。引き続き今日は「売る=marketing」について続けてみたいと思います。

以前の記事はこちら

売ることの難しさ

企業が破綻する理由の99%は売り上げの落ち込みによるキャッシュ・フローが回らなくなった時だと言われます。事業存続の為には非常に重要な売り上げですが、本当は売り上げが上がれば良いというものではなく、利益があってこその売り上げです。売れれば良いだけなら過剰なサービス、利益度外視の価格設定にすれば極論、誰にでも売り上げは作れます。逆に、目先の利益にばかりとらわれて、商品やサービスの価値より割高感が出るといちどは売れても二度と買ってもらえなくなります。大事なのは利益が経費を賄える状態(黒字化)を継続させることで、これが出来なければ事業はあっという間に破綻してしまいます。ただ売れれば良いのでは無く、事業を継続出来る適正利益を得ながら売らねばならない訳で、10年を超えて事業を持続できる企業は全体の5%とのデーターもある位、あらゆる情報が溢れ返る弱肉強食の厳しい世界で売り上げを作り続け、勝ち残るのは容易ではありません。

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売るための2つのフェーズ

「売る=marketing」を大別すると2つのフェーズに分かれます。まずは集客、一昔前の大工さんが廃れていったのは、素晴らしい技術を持っていても顧客を集める力を持っておらず、メディアでの宣伝広告に長けたハウスメーカーやリフォーム業者の出現によって地域の客さんを奪われてしまったからです。商売、事業であったはずの大工は単なる手間で働く作業員に成り下がりました。もう一つは受注=クロージングです。いくら多くのオファーを集めて見積もりを作ったところで競争に負け続けては一切売り上げになりません。それどころか忙しいばかりでどんどん疲弊してしまいます。同じモノなら安いに越した事はないと思うのは人の情、また、どうせなら名前の通った事業者に頼みたいと思うユーザーの心理も働ききます。情報化社会に移行するに従って名もなき小さな工務店が仕事を受注する環境は厳しくなるばかりです。私自身も15年にわたって毎日ブログやSNSでの情報発信をし続けていますが、プロモーションの観点で見れば潤沢に資金がある大手ハウスメーカーやインターネットに強いIT系広告会社に同じ土俵で勝てるわけはありません。

真の売る力

集客はプロモーションと宣伝広告、受注は提案力や問題解決、価値を伝えるプレゼンテーション能力がそれぞれ必要となります。売り上げを作り上げるこれら二つのステップの両方とも、モノづくりを生業とする工務店のような企業にとって本業とは違うレイヤーの業務であり、ものづくりの本質とは関係がないような印象を受けます。一昔前の大工工務店が廃れていったのもこの部分についてしっかりと取り組めなかったのが非常に大きな原因です。要するに「売る=marketing」ための理論構築もその理論に対する実践も行わなかったからに他なりません。実際、いい腕を持っていたところで誰にも知られなければ、売り上げが立つはずもなく、宣伝広告やインターネット上のプロモーションに強みを持つ会社が大きな売り上げを手にしていると言う現状があります。しかし、逆の観点から見れば、プロモーションが上手な会社に家を建ててもらったら良い家が建つかと言うとそれはまた全く分野の違ううスキルであり、うまくいくとは限りません。その本質に気づいた人は信頼できる依頼先を探すことになります。ものづくりの本質はあくまでも現場にあり「売る=marketing」とはそもそも価値の交換の行為で、本質的な価値を提供できない事業所に本当の意味での売る力はありません。

価値提供と問題解決、信頼関係構築こそが真の売る力

工務店を始めとするものづくり企業における「売る=marketing」と言うタスクの集客と受注と言う2つのフェーズを本質的な意味合いで捉え直すと、薄っぺらい表面上のプロモーションや宣伝広告ではなく、結果として現場で圧倒的な評価を得てそれを連鎖拡散させること、そして信頼関係に基づいた受注が出来る環境を整えることに他なりません。そもそもマーケティングと言う言葉の定義は自社独自の市場を作り上げる行為であり、そこにはモノづくりに対する真摯な姿勢と、顧客の値を超える価値提供と顧客がまだ気づいていない問題解決を行うことで顧客からの評価と喜びを生み出してこそ次の受注があるとの強い意図が必要です。これらは全てものづくり企業が得意として持っているリソースに他なりません。

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まとめ

ここまで事業を成り立たせる3つのタスク「作る」「売る」「回す」の中から「売る=marketing」について考察を重ねてみましたが、まとめると、「売る」とは価値交換の行為である以上、本質的な価値提供ができる事業こそがその力を持っており、そんなに得意でないメディアを使っての宣伝広告やインターネット上のプロモーションで勝負するのではなく、目の前の顧客から圧倒的な評価を得てそれを拡散、連鎖する仕組みを整えることと顧客との信頼関係を継続的に保ち、紹介やリピートといった信頼関係に基づいた集客を得られる状態を作り上げることが本質的な「売る=marketing」になると言うことです。圧倒的な量の情報が錯綜する今の時代、残念ながら黙々と良い仕事だけしていればいくらでも仕事が勝手にやってくるわけではありません。しかし、やっぱりものづくり企業は良い仕事をして、顧客に喜ばれてそこから次の受注を生み出すようにするべきで、宣伝広告をしなくても次々と仕事が舞い込むように顧客との関係維持に積極的に努め、存在価値を認められ、地域になくてはならない存在になれるような努力をするべきです。結局、「売る=marketing」とは信頼関係に結ばれた自社独自のマーケットを作ることであり、その状態を整えるコミニケーションをどのように取るかに集約されると思うのです。

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サスティナブルな工務店を目指しています。


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本業は神戸と台北を拠点に設計デザイン、自社大工による施工を行う建築事業を営んでいます。 自分自身の出自は大工と言う事もあり、職人育成と職人の社会的地位の向上をミッションに掲げ、一般社団法人職人起業塾を立ち上げて日本全国で職人の意識改革、キャリアアップの支援活動を行なっています。