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対話が炙り出す不都合な真実の在処とその解決

人は意識して見たいものだけを見る習性があると言われます。街中を歩いていて、普段は走っている車の色など気にならないのに、車を買い替えようかと考えるタイミングで、赤い車の購入を考えていると赤い車が数多く走っているように感じます。また、少し落ち着いて考えれば誰にでもわかるような近い未来に起こる予測可能な出来事に対して、目を閉ざして気づかないふりをしたり、成行きまかせで行動したら思った結果が得られないのをわかってるのに思考停止に陥ったりもします。人は見たいものしか見ない、見たくないものには目を伏せてしまう生き物です。

不都合な真実

2006年に映画化されアカデミー賞まで受賞した「不都合な真実」は元アメリカ副大統領のアル・ゴア氏が気候変動による地球温暖化がいかに人類にとって大きな脅威であるかを訴えた作品です。気候変動により大きく損なわれる自然環境を映像に映し出して環境保全に対する意識喚起を世界中に訴えました。ゴア氏がノーベル平和賞まで受賞するほど大きな影響を世界中に与えましたが、一方でその作品は彼のプロパガンダだと取り合わない政治家が日本にもいたりして、見たくないものに目を伏せる人の性を垣間見ることにもなりました。政治家が権力争いや目先の利益誘導、既得権益の保全に血道を上げ、未来に対して真摯さを持っていない問題提起でもあったように感じました。その風潮は欧米型の株主資本主義による短期会計、短期決算で目先の利益を最優先する企業のあり方が世の中に蔓延した事と関係ないとは思いません。未来に対して目を伏せるのは人としてのあり方の座標が狂っていると思うのです。

Amazonより拝借「不都合な真実」

真摯さが最重要な理由

私は自分自身が代表者を務める3つの法人の他にも様々な企業や団体の運営に関わっています。さまざまな組織の中で主に行うのは潜在的な課題をあぶり出し、根本的な課題、問題解決へのアプローチを見出して、解決のための計画を立て、実行する旗振り役です。そんな活動の中で特に気をつけているのが、見たくないものに目を向ける真摯な姿勢です。自分自身も完璧に出来ているわけではもちろんありませんし、問題に正面から向き合わず、思考停止&先送りにしてしまうことも未だにあります。しかし、目の前の問題や課題だけではなく、普段の生活の中に潜り込んでいるまだ顕在化していない問題に対してメスを入れることができなければ、いつまでたっても成果に結びつく状態は整わず、同じことを何回も繰り返してしまうことになります。気づかないようにしているだけで不都合な真実はそこいらにたくさん転がっているのです。

対話が潜在的課題を炙り出す

古いことわざで「男子の志は塩の様に溶けやすい」と言われますが、人が一人で意思決定するだけでは痛みから逃げる人間の本能から逃れる事はできません。逃げる弱さを理性でカバーして人としてあるべきあり方を体現できるようにするには人はあまりにも弱すぎます。その弱さを克服するために必要なのが対話だと思っていて、人と人が重なって語り合い、聴き合う中でそこはかとない違和感や未来に対するぼんやりした不安、それらが抱えるリスクを感じてそれが対話を通じて表面に現れてくることで対処ではなく予防の策を講じることに繋がったりします。1人で思考を巡らせてもそれらのリスクを感じることができますが、実際の行動にはなかなか繋がりません。しかし、対話する相手がいることで見て見ぬふりに陥ることを避けられるのです。不都合な真実の在処が見えるようになるのです。

集団では真実が水面下に沈む

上述した地球温暖化、気候変動の誰もが感じているリスクに対して一向に有効なアクションプランが示されず、世界中でまるで環境問題が存在しないかの様な態度が取られているのを見ても分かるように、組織や団体、もしくは社会とスケールが大きくなればなるほど、元々人が嫌う習性がある不都合な真実に目を向けて、未来に対する布石を打つ、もしくは問題が顕在化する前に予防する事が難しくなります。集団での意思決定は真摯に自分ごとだと思いながら行う対話では無くなるからだと思っています。問題や課題の共有の為に必要な対話は10数名程度の事業所ではそんなに難しくありませんが、数百人単位の団体になると個別の対話で意識を変えて行くのは不可能です。そして、複数人集まっての会議では様々な思惑や忖度が複雑に絡み合い誰かが触れられたくない話題に執拗に議論を重ねるのは現実的ではありません。どうしても不都合な真実は潜在化してしまう傾向が強くなってしまいます。

対話が炙り出す真実

最近、ひょんなご縁を頂いて来年開催する千人を超える規模のイベントの企画運営を取り仕切る事になりました。大きなイベントは多くの人が集まってこそ成り立ち、盛り上がります。私としてはイベントを主催する団体の総数から見るとオーディエンスの動員にそんなに苦労する事は無いとたかを括っておりましたが、蓋を開けてみると、思いの外申し込みの人数が伸びずに思わぬ苦戦を強いられる事になりました。そこでやっと気付かされたのは、大きな団体でアクティブに活動をする人の割合はそんなに高くないとの事実です。よく考えたら、全国で7万人が入会している経営者の勉強会でも総会で集まるのは高々1000人と言われています。1.5%の会員しか参加しないというのは極端な例かもしれませんが、明確な目的と実践の仕組みが整っていて、活発な活動を行っている組織であっても100%の動員などあり得ないのは少し考えれば分かることです。少し残念な想いもありますが、不都合な真実が明らかになったことは一つの成果だと前向きに捉えています。そして、この事実は組織を最小単位まで小割りにして個別の対話の機会を設ける事によって初めて明らかになるものだと実感しました。

問題が顕在化する前に気づくことの幸運

不都合な真実とは目を背けたくなる、できればスルーしてやり過ごしたい課題や問題であり、しかしそれは確実に未来に禍根を残す結果に繋がります。出来るだけ早い段階でそれに気づき、布石を打ったり、予防を講じることこそが事業の遂行や組織運営の本質であることを考えれば、今回の課題の抽出は又とない大きなチャンスであると考えています。目的を同じくしている筈の人々が集まって形成されているコミュニティは端々まで意思や意識の統一が出来てこそ、その効果性を発揮します。対話によって炙り出された潜在的な課題にしっかり向き合い、さらに対話を重ねることで、リスクを事前に叩き潰す予防措置を講じられると考えています。人は誰しも生まれ持った良き心を持っており、それを実現、体現したいと心の片隅では必ず思っているもの、その人が持っている良知を信じて、何度でも組織の再構築を繰り返す粘り強さこそが、組織や事業所、そして社会を良くして行く根本的なアプローチだと信じて真摯に向き合う姿勢を守っていきたいと思うのです。ピンチはチャンス、ツイテルぜ!と前向きに歩を進めます。

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対話を通して潜在的課題を解決して成果に結びつく状態を整える思考の実践研修を行っています。


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