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サスティナブルモデルと顧客中心思考 @第96回継塾

私は月に1回、地元神戸で私塾を主宰しています。元は大工のスタッフ向けに独立支援の名目で、経営者としてのあり方や考え方を伝えるのが目的で始めました。私が生業としている地域に根ざした工務店の経営において最も重要なのは、顧客やスタッフ、取引先との約束を守れるように、事業を持続継続することだと思っていて、それを叶えるために持続可能なビジネスモデルを構築するのが経営者としての主たる役割だと考えています。なので、私塾で私が伝えているのは外部環境に左右されない自社独自のマーケットをいかにして作るかがメインテーマになっています。その方法論を大まかにまとめると、生涯顧客の創造と新規顧客の獲得であり、それぞれ信頼関係の構築と同業他社が行っていない問題解決(イノベーション)を行う活動に集約されます。これは工務店経営に限らず、地域ビジネス、スモールビジネスの全てに当てはまる要素であり、ひょんなきっかけで懇意にしている取引先の方が参加されるようになり、それが口コミで広がって今では多種多様な業界から毎月30名から40名の多くの方にご参加いただくようになっています。ここ最近は、中学生や高校生の若者も参加されるようになり、彼らにも理解してもらえるように説明の内容や言葉を考えることで、私にとっても非常に面白く、学びの深い貴重な場になっています。

ホットシート

昨年、元祖職人起業塾から継塾へと名称を変えたその勉強会は、昨日で第95回目を迎え、この年末には記念すべき100回目を迎えます。毎月、原理原則論を紐解いて実務に落とし込む。実践を繰り返し、積み重ねる中で自分独自の知恵や哲学を醸成する。そんな実践型の復習会となっています。そんな継塾では年に3回、メンバーの中から志願された人をピックアップして、ホットシートなる特別熱い席に座ってもらい、その人のビジネスモデルの刷新を皆で考え、議論を重ねて抽出したアイデアをプレゼンテーションするワークショップ形式の勉強会も行っています。昨日もそのホットシートの回で、今年に入ってから一部上場企業の安定した暮らしを捨てて起業したての若者にその席に座ってもらいました。彼は、使われなくなった空き家を格安で借りてDIYできれいに直して又貸しする、「空き家リ活用」を事業として成り立たすべく奮闘しており、「ものを大切にする事は、人を大切にすること」をモットーに人の想いを繋げる仕事を通して家主さんも借主さんも自分も地域社会も皆が幸せになれるようにしたいと熱く高い志を持った素晴らしい青年です。

主観は主観、客観は客観

そんな熱い思いを持った彼に何とか成功してもらいたいと、オンライン参加者を含めると30名を超す大勢の人たちが一生懸命考えて真剣に議論を重ねる姿は非常に頼もしく、いかにも良いアイディアが生まれそうな予感が満ちあふれておりました。ただ、いくら斬新な視点で良いアイディア出しができたとしても短時間で行うワークショップだけに、そんなに完成度が高いビジネスモデルを考案できる事はありません。それでも、本人が自分のビジネスをいくら客観的に見ようとしていても、絶対にどこかで主観が入り、狭い視野の中での模索に陥りがちなことを考えれば、全体はともかく、ヒントになるパーツはたくさんあったようで、本人も目から鱗だったと非常に喜んでくれていたのが印象的でした。

顧客体験中心設計

このワークショップは、ビジネスモデルキャンバスと言うフレームワークを使って、参加者の皆さんをグループ分けしてグループごとにアイデアを整理してもらっています。私が3年以上の長きに渡り、足繁く通い、学び続けたUXデザインの講座で教えていただいたもので、それまでの自社の強みを見出してそれを振り回す、リソース重視のマーケティング的な考え方とは一線を画し、顧客と、顧客に対応して提供する価値、それをどのようにして届けるのか、顧客との関係はどのようなものか、それらから生み出される収益をイメージするところから順番に考えることが非常に重要で、売り手側の理論を離れて顧客の体験を中心にサービスをデザインする思考となっています。昨日もzoomでのオンライン参加のメンバーを含めた3つのチームに、顧客セグメントを明確にしてから次のステップに進むようにとアドバイスを繰り返しました。

脱USP思考

顧客セグメントからまず初めに考える。と言うのは、ものが溢れかえっている今の時代、本当に大事なのは売り手側の得意なものを提供したいとの論理ではなく、顧客が必要としているコトであり、そのためには誰に提供するかをまずセグメントする必要があります。巷に溢れかえるマーケティング理論を少しでもかじったことがあれば、そんな事は自明の理のはずですが、この考え方を実際に行うのはそんなに簡単ではありません。人 はつい、自分が得意な分野で勝負したいと思うし、自分が持っている知識や経験、技術などのリソースが価値を生み出すと思ってしまいがちです。このUSP施工から脱却することができなければ、新たなビジネスモデルを構築することなどできないのがVUCA化されたと言われる不透明で、不安定、複雑で曖昧な今の世の中なのだと思います。なので、まず顧客を絞り込むと言い続けています。

アウトプットこそ最大の学び

今回のワークショップでは、そのまま使ったらイノベーションが起こるじゃん、と言えるほど完成度が高いビジネスモデルの提案がなされたわけではありません。しかし、今まで若者向けに提供すると思い込んでいた枠を取っ払うことで、空き家リ活用のビジネスが大きくスケールする可能性をイメージすることができたと感じましたし、ホットシートに座った本人にとっても非常に大きな気づきがあったようです。新しい世界に適応した思考は書籍を読んだりセミナーを聴講したりしてインプットする事は簡単ですが、それを実際の業務に落とし込み、実装するのは容易なことではなく、肌感覚に馴染むまで繰り返しのトレーニングが必要だと、UXデザインを何年も学び続けて強く感じました。月に1回開催する継塾で時代の変化を感じ、その荒波を乗り越えられる持続可能な自立循環型のビジネスモデルや組織にシフトする気づきを提供できたら幸いですし、私自身も、アウトプットを通して学ばせてもらえることに深く感謝しています。オンライン参加も可能な無料の勉強会、興味があればお気軽にお問い合わせ下さい。(^ ^)


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