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伊勢の神宮にみるサスティナビリティー 〜常若の思想〜

毎年1月の後半に伊勢の神宮にお参りする様になってかれこれ7年。松坂で不動産と建築の事業を営んでおられる上月社長にアテンド頂き全国の同業の仲間と顔を合わせる貴重な機会になっている事もあり、毎年欠かさずお詣りをしています。今年も外宮前にある観光センターでボランティアのガイドさんをお願いして神宮にまつわる様々な解説を頂きながら外宮から内宮、そしてゼロ磁場として有名な瀧原宮にお参りしました。

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伊勢神宮は存在しない

外宮の鳥居をくぐる前にガイドの伊藤さんが口にされたのは「伊勢神宮は存在しない。」との一言。衝撃的なその言葉のココロとは、伊勢の神宮は熱田神宮や宇佐神宮など全国に散らばる神宮の総本山であり、伊勢こそがTHE神宮なので地名を冠につけたりしないのだそうです。なので、伊勢の神宮と呼ぶならまだしも、伊勢神宮とは呼ばない様にと釘を刺されました、毎年通い始めて7年目にして初めて知った事実です。ほぼ毎年、ガイドさんに案内して頂いていますが、来る度に新たな発見や気付きを貰えるのは本当に有り難く、感謝することしきりでした。

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とこ若と棟持柱の鳥居

外宮に入っていつも、始めに聴かせてもらうのは式年遷宮にまつわるくだりです。20年毎に新しく神殿を建て替える事で常に若々しい状態を永遠に保つ「常若」の概念は日本独自の文化を紐解く非常に重要な考え方ということで、いつもとても丁寧に説明をしてくださいます。今回は外宮の入り口に結界を張る鳥居が式年遷宮の際に取り壊されるお社の棟木を支える棟持柱を削り出して作られる、その他の解体材も単に廃棄処分するのではなく、全て今時の言葉で言うところのリサイクル、リユースして再生して使われると教えてくださいました。

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持続継続こそが目的

国連でSDGsが採択され、近年、世界中で大きく注目を浴びているサスティナビリティー、人類が目指すべき持続可能な自立循環型社会の原型が日本にあると言われます。江戸時代から続く近江商人の三方良しがその代表的な考え方と言われる事も多いですが、伊勢の神宮に綿々と息づく常若の思想はストレートに持続継続する事を目的にしており、20年で朽ちてもいい材を用いて、取り壊した後は使える材は全て再利用しながら、伝統技術の継承を行い人を育てる仕組みを1300年の長きに渡って続けています。西洋の石造りの文化は木造に比べて確かに強固で持続性が高い様に思いますが、千年以上前の姿、その原型を留めているものは皆無であることを考えれば、一見、すぐに朽ち果ててしまいそうな材を使っても定期的に建て替え、使った分の木材をまた山に植えて何百年もの時間をかけて育て、循環させる方がずっと持続可能性が高いのは明らかです。

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サスティナビリティーとは謙虚さ

ちなみに、伊勢の神宮神殿を造る宮大工は大工と言わず小工と呼ぶそうです。小工とは大工の下の技術職との意味もありますが、ガイドの伊藤さんによれば20年しか持たなくていい建物を建て続ける職なので伊勢の神宮では大工の名称を使わないとのことでした。同じ木造建築でも修繕を繰り返しながらも1500年も建ち続けている法隆寺と比較すればなるほど、と思う部分もなきにしもあらずですが、日本の伝統建築の原型とも言える唯一神明造を受け継ぐ職人を捕まえて小工とは口が裂けても絶対に呼べません。ここにも日本独特の謙虚な文化の一端を垣間見ることが出来ますが、成長拡大を良しとする訳ではない、共生、循環の文化がその様な言い回しとなって表れているのかも知れません。世界中を開拓し、支配した傲慢な西洋型のフロンティア・スピリッツが地球環境を破壊してきた元凶であり、持続可能性を追求するとは、地球や自然に対する謙虚さを持つことがその本質だと思うのです。
ガイドの伊藤さんの言葉の一つ一つを噛み締めながら、1300年の時を経て、今も伊勢にリアルに息づく常若の概念、その圧倒的な持続性の実績を以て、日本的共生・循環の思想を私達が世界中に広げなければならんと、その必要を強く感じつつ神宮を後にしました。毎年、お詣りする度に新鮮な気付きを貰える、貴重な機会を作ってくれる上月社長には心から感謝します。今年もありがとうございました。

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ひと、まち、暮らし、文化を継いで四方良しの世界の実現を目指しています。


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