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気づきも感動も勉強も要らんねん!

4年ぶりに熊本へ。KS倶楽部なる建築事業者、木材流通業者の団体でマイスター高等学院のスキーム説明と建設業のCSVシフトについての講演を依頼され、尊敬する社長と塾生のいる会社なので喜んで!と二つ返事で引き受けました。前後の日のスケジュールが一杯になっているのをこじ開けての弾丸出張です。

建築業界の憂鬱

以前から誰もが分かりきっていた事ですが、建築業界では現在、職人不足問題が顕在化してきて、工事に取りかかれずに売上が低迷する事業所の存続が危ぶまれるほどの危機が迫っています。工事が出来なければ売り上げも立たない業界なので当然ですが、職人不足問題の解消に対して全ての建築事業者が興味を示します。この課題解決に取り組まないと仕事をいくら受注出来ても工事が出来ず経営破綻してしまう様になるのだと誰しもが未来に対して強い危機感を感じており、何かしらの手を打つ必要を模索しています。しかし、誰一人その解決策を提示してこなかったし、なんの取り組みもなされませんでした。このままでは確実に、日本のモノづくりは潰えてしまします。

本当は誰の問題なのか?

国土交通省も20年近く前から現在の様な状況になるのを予想し、対策を講じなければ!と様々な施策を打ってきました。しかし、国家プロジェクトと銘打たれ、巨額の予算をかけて10数年もの長きにかけて行われたた大工育成プロジェクトは、業界に全くなんの変化ももたらさず、大失敗に終わりました。その原因は職人不足に陥っている現状を正確に見て、根本的な問題や課題を解決するアプローチを取らず、手っ取り早く若手の職人が現場で戦力になって事業所の負担にならないようにとの視点での上っ面の職人育成事業だったからです。集まったのは大工になりたい若者ではなく、せいぜいコストをかけずに若手大工の育成が出来ると喜んだ工務店経営者くらいにでした。大工のためのプロジェクトでは無く、建築事業者の為の事業では若者が集まる訳がありません。

短期的視点が未来を殺す

職人不足の解消には若者が職人になりたくなる、職人という生き方が憧れの職業にならなければなりません。プロジェクトを立てるならその部分を無視するのではなく、職人の地位向上を目指すものにするべきで、建築事業所の経営者を豊かにするのではなく、職人への分配が出来る様にビジネスモデル自体や就業規則、人事制度から転換を迫られます。経営者がイマカネジブンだけ良ければ良いと短絡的で利己的な価値観を持っていると、それは完全に利益相反になります。しかし、時間軸を少し長く持てば、自社で高い品質の施工が出来るようになり、高い評価を得られるようになり、当然、会社も潤います。未来を創造する、世の為、人の為に事業を行うのだと考えている経営者だけでなく、メリットとデメリットを冷静に鑑みても職人育成は大きな価値を生む事は明らかです。

企業は人なり、現場は職人なり

私達、一般社団法人マイスター育成協会のメンバーの企業は「誰もがIkigaiを持って働ける環境づくりにコミットしています。Ikigaiとは好きで、得意で、稼げて、人や世間に求められる働き方、その4つが重なって働く状態の実現無くして職人不足問題の解決もありません。
実は、職人不足の根本的解決へのアプローチを明確に示した私のロジックは別段特殊な理論ではなく、原理原則に則った方法論です。これまで誰もが薄々感じていた問題を炙り出し、建築事業者がやりたくないと思いがちな先行投資を必要とする人材育成に手を突っ込み、しかも机上の空論ではなく、実際に運用している、やってきたことの積み重ねです。
職人の正規雇用と将来へのキャリアパスの構築と運用、確実な成長を促す教育のシステムを導入すればその入り口に立てます。決して難しくないスキームなので一人でも多く経営者に聞いてもらいたいと思い、全国を駆け回っている次第です。

上っ面の関係ならなくていい

今回の熊本でも、セミナーを終えた後、多くの経営者が名刺交換に来てくれて、気づきがあった、学びになった、感動したと口々に言ってくれました。いつもの私は、「そうですか、良かったです。」「そう言ってもらえるなら遥々話にきた甲斐がありました。」と社交辞令的に言葉を返して和やかにその場から引き上げます。しかし、今回は少し違いました。懇親会の最後の挨拶で、お名刺を頂いた方全員と引き続き対話する時間を持つので、職人育成のプロジェクトへの参画を真剣に考えてください。と大きく風呂敷を広げて、聴いて終わりのセミナーではないと強い口調で申し上げました。それは、私に声を掛けて下さった佐藤社長が上っ面を滑る人ではなく、心の芯で物事を考え、語り、実行する人だからです。そんな方のコミュニティーで私が上辺の耳障りのいい言葉を残して熊本を後には出来ないと思ったのです。

論理的思考と覚悟と決断

いい歳になった経営者に気づきも感動も学習も要りません。必要なのは、論理的思考に基づいた、やるべきことをやる覚悟と決断です。
私が限りある人生の時間を費やして語ったのは、建築事業者のあるべき未来には若者の力が必要であるとの事実と、死因のNo1が自死である日本の若者達にIkigaiを持って働ける場の提供を行うことで、毎年10万人を超える絶望し、閉塞感に打ちひしがれ、一生安心して働くことが出来ない学歴社会から零れ落ちた若者達の受け皿を国の基幹産業でもある私達が作るという本業での社会貢献です。建築事業は基本的に地域産業です。地域が良くなってこそ、事業の存在価値が見出される。そんな当たり前すぎる思考を持つ経営者がスタンダードになり、多くの建築事業者が問題を先送りすることなく、自分達に出来ることに対して一歩足を踏み出すことで業界も世間も変わるのではないかと思うのです。熊本の皆様、引き続きフォローして参りますので、よろしくお願い致します。

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職人の社会的地位の向上と学歴マイノリティーにチャンスを与える活動をしています。

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