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起業しようか迷っている人へ原則的アドバイスやってみた。

先日、とあるイベントに参加した後、懇親会の場で知り合いの経営者に「起業を考えて迷っている人にアドバイスをお願いできませんか?」と声をかけられました。私、一応一般社団法人職人起業塾なる法人の代表をしておりまして、そこでの授業は決して安易な起業を推奨するものではありませんが、独立開業してもやって行ける位のマインドとロジック、そしてスキルを身に付けてもらう塾を運営しており、これまで何百人もの塾生に伝えてきたことの要点を話させて貰いました。

①現状認識

弱肉強食の現在の資本主義社会の中で新たに事業を起こして生業を立てていくのはそんなに簡単なことではありません。同じような商品やサービスを提供するなら、潤沢な手法を持っている大手企業の方が圧倒的に有利で、中小零細の事業所は淘汰されるのが当たり前の流れになっています。その中で、生き残るには明確な存在価値、存在理由が必要です。まず初めに、その部分をきちんと整理しなければ既存のビジネスの延長線上で新しく起業したところでジリ貧になってしまうのは火を見るよりも明らかです。まずはこの大前提の現実を認識するところから考えるべきだと思います。

②既存のビジネスモデルの限界

次に認識すべきは、世の中には何もせずに棚からぼたもちが落ちてくるようなラッキーはほとんどないと言う原理原則です。残念ながらあらゆる成果は状態に由来しており、状態を整えることなく成果を手にする事はありません。そして状態とは事業におけるリソース(人との繋がり、設備やネットワーク、資金調達力、本質的な情報と情報収集力)がどれぐらい整っているかのことであり、それらを端的に言うと、どの程度の影響力を持っているかにかかっています。既存のあらゆる商売は「顧客数×単価×購買頻度」で売り上げの方程式が出来上がっています。多くの顧客を集めるのも、高単価からものを販売するのも、継続して利用してもらうのもたった1人で起業した時は全て経営者の影響力の大きさと言っても過言ではありません。多くの場合、その影響力が小さいため、宣伝広告やプロモーションに費用をかけねばならず、収益を圧迫する上に競合との血みどろの戦いに引き込まれてしまいます。この延長線上で起業するのは愚の骨頂だと思っています。

③本物の時代への適応

このように書くと、安定した生活を投げ打って、すべての責任を背負いこむ経営者になる選択がいかに厳しいのかと思われるかもしれませんが、上述したのは今までの世界でスタンダードとされてきたマーケティング的な考え方です。これからはこれまでの延長線上にないと時代の潮流を読んで、違うパラダイムでビジネスを俯瞰する事ができれば全く違う起業のロジックが見出せます。それは、どのようにして売り上げを作って事業を立ち上げるか、の「やり方」ではなく、どのような課題を解決して理想とする世界を作りたいか、との「あり方」に重心を置く、古典的な人間の本質に焦点を合わし、信用と信頼を積み重ねることで生業を成り立たせる原理原則的思考です。

④あり方から始めよう

末学と言われるやり方と、本学と呼ばれるあり方、どちらを中心にしてもビジネスを立ち上げるには、兎に角まず顧客が必要です。顧客を集める、いわゆる集客が起業のカギになりますが、ただ単に多くの見込み客の数を集めれば良いわけではなく、本質はその質と量のバランスです。自社が提供する商品やサービスを深く理解して、共感し、できればリスペクトしてくれる顧客を必要な数だけ集めることが理想なのは自明の理、誰もがわかっていることではないでしょうか。この当たり前の事実に向き合うと、本学と言われるあり方からビジネスをスタートさせる方が効果性が高く、持続できる可能性も大きくなるのは誰もが理解されるところだと思います。昔から、商売を続けるには信用と信頼だと言われていますが、本質はそこに尽きると思うのです。

⑤共感と情報発信

どのような業種業態であっても必ず何かしら解決できていない課題があります。誰かが既にやっていることではなく、誰もが解決できていないことを解決し、世の中を良くしたり人を幸せにしたりできるアイディアがあり、本当にそれを実現したいと思うなら、その想いやアイデアを情報として発信して共感してくれる仲間を募るべきだと思います。本来、ビジネスとは社会の課題を解決する活動であり、起業とは誰もが手をつけようとしない課題を見つけ、解決策を提示することだと思うのです。ましてや、1人で事業を立ち上げるより仲間がいるほうがうまくいく確率は格段に高まります。逆に、共感が集められないようなコンテンツはどんなに上手いやり方を使ったところで長続きするはずがありません。

⑥時代の潮目

昭和から平成にかけての経済成長神話とその後の成功体験に溺れた失われた30年と呼ばれる幻想の世界ではマーケットは際限なく成長を続けると信じられており、たいしたリソースも強みを無くても時代の潮流に乗っかれば事業を立ち上げることができました。しかし、世界的に資本主義経済が行き詰まり、安易な打開策として戦争が始まってしまった今、日本では人口減少が顕著になり始め、マーケット縮小のフェーズに入ってしまいました。情報革命が世界に広がり、インターネットの中での影響力がそのまま売り上げに結びつくのと相まって、町の本屋さんがなくなったように大手企業による寡占化は今後あらゆる業種でさらに進行していくと言われています。これまでのやり方一辺倒の起業は非常に難しくなり、現存している事業所も明確な目的を持って多くの人に共感される課題解決型ビジネスモデルへとシフトする必要があると思っています。

⑦共感が集まった結果としての起業

幸いにして、インターネット革命は巨大企業による寡占化だけではなくスモールビジネスの事業者や個人にも世界中に想いや情報を発信する機会を与えてくれました。強い思いを持って、誰を幸せにするのか、どんな世界を作るのか、なぜ自分が立ち上がらなければならないのか、これら事業の目的や存在価値を明らかにして共感してもらえるような情報を発信し、仲間を募り、影響力が広がり強まった結果として事業を立ち上げるのがこれからの時代に合った起業ではないかと思うのです。もう一歩踏み込んで申し上げると、起業する前に全くこれらの活動ができないのなら、起業しても持続継続出来るビジネスモデルを確立できるとは思えません。今、まず共感を集める活動に取り組んでみるべきです。

⑧オレの(現在進行形)起業の事例

ちなみに、現在私が新しく法人の立ち上げに取り組んでいる、通信制の職人育成の学校事業である非営利型一般社団法人マイスター高等学院は、職人の社会的地位の向上と建築業界の職人不足の解消、そして学歴社会からこぼれ落ちた不登校や高校中退者の若者たちにものづくりの世界で夢と希望を与える課題解決を明確な目的に掲げて同士を募ったところ、現在十数社の経営者がともに事業を立ち上げたいと名乗りを上げてくださいました。法人設立に係る初期投資を皆さんから集まった資金で賄い、新たな事業を立ち上げ、いわば起業をするわけですが、もはや私が代表者をしなくてもいいかもと思っています。来年は関西一円、再来年には全国展開を目指しており、すでに東北では設立準備室のワーキングチームが組織されつつあります。これからの時代の潮流に合った起業とは、共感を資本の中心に据えたソーシャルシフト、課題解決型モデルにしていくべきだと思うのです。
以上は完全に私の私見ではありますが、これから独立起業を考えている方にほんの少しでも参考になれば幸いです。

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志×技能×キャリアを若者に渡す職人育成高校プロジェクトのマガジンはこちら、かなり熱く語ってます。(笑)

独立起業してもやっていけるレベルまでマインドを高める建築実務者向け研修を行っています。


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