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至誠と知行合一@社会課題解決と事業計画の一体化

令和4年がスタートしました。新型コロナによるパンデミックが始まって2回目の新年、私たちが世界のパラダイム転換を予見して、神戸の片田舎の地域工務店だったすみれ建築工房から「建築、暮らしだけではなくその先へ」とスローガンを掲げ、地域活性化事業へと社名も事業ドメインも転換してリスタートした株式会社四方継として3度目のお正月はこれまで練り上げてきたプランを本格的に実装し、実証する正念場の年になると感じています。1年の計は元旦にあり、元日は少し早起きしてミクロな視点での単年の事業計画と、マクロな視点の中期計画を整理し直す時間を持ちました。その概要を以下に書いておきたいと思います。

複雑な世界を単純化する原理原則

20年間の長きに渡って多くの方からご支援、ご愛顧を賜りお陰様を持ちまして株式会社四方継は今年第21期目を迎えました。事業経営に対して何の知識も持たないまま勢いだけで起業して、これまで山積した課題と次々と生じる問題に対処しながら、根本的な問題解決を図るべく様々な学びと実践を繰り返してきました。その中で得た最も重要な概念は「すべての成果は状態に由来する」との(当たり前すぎる)原理原則です。当たり前のことが当たり前に出来る組織を目指して、スタッフやお客様、取引先の方々との約束を守れるように、持続可能な自律循環型ビジネスモデルを構築すべくこの20年間、仕組みを作り、組織を編んで、状態を整えてきました。個人事業主として起業してから20数年が経ち、これまで多くの諸先輩から頂いた学びと、それを実践して得た知見を重ね合わせて漸く目指すべき事業の本質が見えてきたように感じています。複雑怪奇に見えるこの世の中も、真理はそんなに多くあるわけではなく、そこから照らして見てみれば事業経営も課題解決も意外とシンプルだと最近になってようやく思えるようになってきました。

至誠と知行合一

現在の資本主義社会の弱肉強食の競争原理が働くマーケットの中で生き残るには、マーケットから事業継続を許される、存在すべき価値、存在意義が何よりも必要で、それは組織の目的に由来します。いくら競争力のある商品やサービスを提供できたとしても、自分たちが金を稼ぎ豊かな暮らしを送れることだけにコミットメントする企業はやがてマーケットからの信頼を失い、淘汰される運命にあります。建築業界に限らず一時はマーケットから圧倒的に支持されていたはずの企業が、利己中心的な方針、自らの過ちを隠蔽し保身に偏った判断を行って破綻した例は枚挙に暇がありません。ドラッカー博士は経営者に最も必要な資質は誠実さだと言いましたし、吉田松陰先生は至誠を貫くことこそがことを成すには何よりも重要だと繰り返し叫ばれました。事業を継続するのに必要なのは昔から言われるように「信用と信頼」であるのは一つの真理であり、持続可能な事業を作り上げるには、目的を明確にし、顧客(と顧客の集団であるマーケット)に存在意義を伝えることが不可欠で、それを如何にして実業に反映し、目的と実務(手段)を一体化出来るかにかかっていると考えています。新年を迎えるにあたって年末に訪れた松陰神社で見た七生滅賊、知行合一の掛け軸の意味の深さをヒシヒシと感じています。

地域空洞化を阻止する闘い

私たち株式会社四方継が掲げる事業の目的は「人、街、暮らし、文化を継ぎ四方良しを実現する」ことであり、次の世代に少しでも良い世の中、地域社会を引き継ぐことです。それを実現する為の事業として建築事業部のつむぎ建築舎では「受け継がれる価値のある丁寧なものづくり。」をコンセプトに資金計画からアフターフォローまで一貫してお客様に関わって理想のライフスタイルを実現するお手伝いをしています。地域コミュニティーサービスつない堂では「人を繋ぎ、ご縁を紡ぎ、いい街を継ぐ」を体現できるように地域で頑張っておられる人や事業所、サービスをこれまで私たちとご縁を頂いた1500世帯を超える会員様に向けてご紹介を延々と繰り返したり、地域の方々とコラボレーションしてのイベントを企画・運営を行ってきました。
この二つの事業の根本的な志向は地域のお店や事業者を応援して私たちが住まう神戸、兵庫県で持続可能な地域社会・コミュニティーを形成することです。Amazonによって街の本屋さんが淘汰されたり、Ubereatsにテイクアウト販売で得るはずの収益を吸い上げられたり、Googleマップから位置情報を消されると存在していないのと同じ状態になったりとグローバル企業に私たちの生活は確実に侵されつつあり、このまま手をこまねいていては地域の経済は完全に空洞化してしまいます。私たちが取り組んでいる事業は大袈裟にいうと世界を支配しつつあるグローバリストとの戦いです。

建築業界の空洞化

建築事業だけを取り上げると、阪神淡路大震災後の兵庫県では大手住宅メーカーのシェアが増え続けており、県下の住宅需要から生み出される経済効果は地域で循環することなく、東京の本社に吸い上げられ、株主へと配当されます。また、究極までコストを抑えながら圧倒的な広告宣伝費をかけて得た知名度を振り回して高額の住宅を販売する大手ハウスメーカーは地域の山で育った、急峻な斜面から切り出される割高な木材を使うことはなく、外国産の安価な木材を使用して利益の最大化を目指します。そこではモノづくりを担う職人達は全て外注の手間受け扱いで、全く何の社会的補償を付与されることなく安定的な発注をにんじんとしてぶら下げて一方的に低い単価を押し付けられ、暇になったらポイ捨て。職人をまるで道具のように扱います。こんな事業者ばかりが市場を独占したら当然、職人は居なくなってしまいます。実際、若年層の大工は全国で二千人を切っている状態でほぼ居ないと同然、現在中心となって活躍している50代〜60代の職人が引退する10年後は圧倒的な職人不足が間違いなくやってきます。建築業界が存続するには職人育成が不可欠で、実質年収300万円台になってしまった社会弱者と言っても過言でない職人の地位向上は喫緊で重大な課題になっています。そもそも住宅産業は地域に根差した地場産業であるべきで、創業の志に「職人の社会的地位向上」を掲げた私達の取り組みは地域事業者としての立場での大手資本との闘争でもあるのです。

社会課題を解決する事業計画

地域と建築業界の空洞化、この2つの社会課題を解決するのが我々の事業におけるミッションであり、進むべき方向だと思っています。しかし、現在の私たちの力は非常に微弱で、社会もしくは業界全体から見ると大した影響力はありません。しかし、自社の事業の課題だけではなく、少し視座を高く、視野を広げて社会課題の解決を実業に落とし込み誠実に取り組み同じ志を持つ仲間を募る事でムーブメントを起こせるのではないかと思っています。今期以降の事業計画には今まで以上にマクロな視点を持って計画を立てて実行に移したいと思っています。それが私たちが持続継続をマーケットから許される存在意義になると思うのです。

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