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事業承継は課題を細分化して考える

令和3年4月10日晴れ

ポカポカといい天気になった週末ですが、神戸では時折吹く風が少し冷たく、春らしいながらもひんやりとした1日でした。週末と言うことで、朝から立て続けに打ち合わせやお客様の来者が相次ぎ、カスタマージャーニーマップのワークショップを行うなど今日も忙しく過ごしました。夕方からは、6年後の事業承継に向けての取り組み、次世代を担うリーダーズ会議を開催しました。今日は多くの事業所が抱える悩みの1つである事業承継について私の考え方を書いてみたいと思います。

事業承継へのキックオフ

私は今年で54歳になります。以前から60歳で建築と地域コミュニティー事業を行っている株式会社四方継から退いて、職人の社会的地位の向上を果たすライフワークである、一般社団法人職人起業塾の事業に集中すると決めていることから、あと6年で事業を今いるスタッフの中からリーダーを担うと手を挙げるものに対して完全に委譲すると公言してきました。
事業承継しますと、口にするのも、決めるのも簡単ですが、実際に行うのはいくつものハードルがあり一筋縄で片付くものではありません。この計画自体は実は4年前から考えてきましたが、社員の中から誰かを選んで次期社長に任命するイメージがどうしてもつかず、ダラダラとここまでの4年間、具体的な取り組みを先延ばししてきたのが現状です。しかし、このままでは全く何も進まないと思い立ち、誰か1人に会社を任せてしまうのをやめて、合議制による事業運営、これまでにない大工工務店の形を模索すべく、今日発足したリーダーズ会議を皮切りに5年計画を立てて確実に無理なく事業を引き継いでもらえるような「状態」を作る取り組みを本格的にスタートさせることにした次第です。

大工マーケティング企業

私が代表を務めている株式会社四方継は20年前、大工集団の工務店として起業して以降、自社大工による直接施工で住まい手と作り手のシームレスなコミュニケーションを行うことを強みに、現場で顧客満足を勝ち取り、積極的なアフターフォローで信頼関係を維持することでリピートと紹介のみで売り上げを作る仕組みを構築してきました、その建築事業「つむぎ建築舎」と並行して、昨年からは地域の人々とのつながりをもっと広く、もっと深めようと「つない堂」なる地域コミュニティーサービスの事業を立ち上げて、地域の方を応援し、つなげる活動も熱心に行っています。2つの事業で目指しているのは、信頼をベースにした自社独自の市場(マーケット)を構築することであり、10年以上前から一切の宣伝広告を行わずして事業を成り立たせています。ビジネスモデルの特徴を端的に言い表すと、建築技術に強みを持ったマーケティング実践企業という感じで、まだまだ完成の域に達してはおりませんが、ある程度の収益の基盤は出来上がっています。

マネジメント×マーケティング×ブランディング

企業が倒産する原因は殆どが同じ理由で、98%が売り上げの低下です。経営者として行うべき仕事は多々ありますが、最も重い責任は売り上げを作り続ける仕組みを作ることだと思っていて、事業継承をするために、まずはその部分の担保をすべくこれまで仕組みづくりに注力してきました。しかし、今すぐ私がいなくなっても売り上げを下げることがなく、順調に事業が継続できるかというと未だそんな事はなく、いまだに私が担当しているプロジェクト型の事業や住宅取得のお客様向けの資金計画のサポートや、事業系のクライアントに対する事業計画のアドバイスなどの業務に関しては委譲するのにもう少し時間がかかりそうです。今日のmtgでは、その辺りの実務的なスキルの移転と共に、実はもっと重要で、難しくもある事業所内での内向きの業務、人材採用や育成、組織づくりのマネジメント、時代の変化を先取りするマーケティング、そして、ブランディングの業務をどの様に引き継ぐかについて全体像を示して、アウトラインを話し合いました。

経営者の3つのタスク

私は、経営者の仕事を大まかに表すとマネジメントとマーケティング、ブランディングに集約されると思っています。「経済なき道徳は寝言」だと二宮尊徳先生が言われた通り、まずは売り上げの基盤を作るマーケティングがまずは目に付きますが、「道徳なき経済は罪」の言葉通り、なんのために事業を行っているのかを明確にしなければ、目先の利益が上がったところで長続きするビジネスにはなり得ないと思っています。その意味では、経営者として最重要の課題はブランディングの中の社内向けのインナーブランディングだと思っています。社内向けといいつつも、社員教育はマネジメントのカテゴリーになります。インナーブランディングとは、事業、組織に対するコミットメントや目的の共有、目指す方向性を揃えて、スタッフの業務の一つずつが理念に沿った判断の元に進められる状態に整えることであり、簡単にまとめると、スタッフ全員の意識を一つにまとめること、となります。弊社では男性の大工職と女性の設計士がほぼ同数在籍しており、これがいわば水と油くらいに差異がある業種で、組織としては非常にまとめにくいのですが、ものづくりは設計と施工がセットであり、相乗効果を発揮できれば大きな強みになります。次の世代を託すリーダーズには目的の共有から丁寧に、部署間を跨いで同じ方向に導いてもらいたいと思います。

難解な問題は分解して考える。

今日のmtgで上述したような経営者の仕事、役割をこれから5年間で全て委譲していくと説明してみましたが、リーダー達の反応はやる気と自信に満ち溢れて、任してください!と明るい声で引き受けてくれた、訳ではなくて、どちらかと言うと自分にできる気がしない、イメージが湧かない、でもやるしかないか、、といった感じでした。確かに、その気持ちも分かるので、私が口に出して伝えたのは、「大変なのはわかっている。だからこそ一人に託すと言っている訳じゃない、4名のリーダーで役割分担を決めてこれから少しずつ歩みを重ねて、5年後には私が居なくても問題ない状態にしてくれよ」との言葉でした。ぼんやりしたつかみどころの無い難しい問題は分解して考えれば一つずつは簡単だ。と言うのは職人起業塾でカリキュラムに組み込んでいるアクティブブレインセミナーでの教え。リーダー格のメンバーは全員、職人起業塾の卒塾生でもあることですし、問題を細分化して当たり前のことを当たり前に実践してくれると願っていますし、信じています。
今後の5年計画ではマネジメント、マーケティング、そしてインナーブランディングについて担当者を決めると共に進捗を皆で確認しつつ、それぞれを完成形に近づけてもらえる様に進めて行きたいと思います。そんな流れもあり、最近、理想の組織論としてマネジメントの分野についてのコラムを書き綴っています。とにかく、小さな工務店の新しい組織形態として、理想の組織を作り上げ、引き継げる様に歩みを進めて参りたいと思います。以下に私の私見に溢れた組織論のマガジンも転載しておきます。

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