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キュレーションとタレンティズムの親和性と効果性

私が代表を務める研修事業を中心に全国で講座を開催している一般社団法人職人起業塾では建築実務者向けの研修やセミナーだけではなく、塾生を派遣されている参画企業に対して、研修を受けて意識を変えてモチベーションを高めた従業員がさらに活躍できる場を持てるように、人事制度改革のワークショップや事業承継まで視野に入れたリーダー向けの研修なども開催しています。私は経営コンサルタントではありませんが、従業員に活躍してもらう現場戦力化と、そのバックボーンとなるシステム構築、また、実際の運用まで関与するようになると、自ずと事業そのものの構成まで深く関わることになります。そんな流れで、現在、4社の社外顧問を務めており、現場から会社を変える取り組みを推し進めるお手伝いをしています。

個々の才能が企業を変える

私が本業である建築事業の他に一般社団法人職人起業塾を立ち上げて活動している最大の理由は、創業時に掲げたミッション「職人の社会的地位の向上を叶える」ためで、それは自社の株式会社四方継はもちろんですが、「自分だけが良ければ良いわけではない」とのシンプルな想いから、広く職人が安心してやりがいを持って働ける環境を創りたいと考えてのことです。その実現のためには、職人(現場実務者)自身に守られるべき高い価値を認められる人材になってもらうことが必要ですが、同時にその努力や成果を認め、評価する事業所の仕組みが欠かせません。
高い価値を認められる人材とは即ち、大きな信頼や信用を勝ち取る=利益を生み出す人になる必要があるのですが、私の長年の経験則では、職人が決められた作業を黙々と行うだけではなく、少しの主体性を発揮して自分からより良い仕事が出来る方法を考え、苦手ながらもアウトプットするだけで期待値を大きく超えた顧客満足や感動を与えることができるものですし、そんな秘めた才能を誰もが持っていると信じています。企業は人なりと言いますが、職人達の秘めた才能こそが事業所の大きな力になると考えて、様々なサポートを行っています。

クソ仕事からの脱却

私が長年、思考や判断の基準としている原理原則にスティーブン・R/コヴィー博士が提唱された「P/PCバランス」があります。成果を手にするには成果を生み出す状態を整える必要がある。というシンプルすぎる原則ですが、それは職人の意識改革と働き方の変容、そこから生み出される価値の創造にも当然当てはまります。自分自身でも気づいていない才能を発揮するには活躍できる場が必要であり、周囲の人の理解と協力が欠かせないと思います。その意味で、従業員向けの研修だけをしていても、結局、一瞬はモチベーションを高めてやる気を出したとしても徐々に元に戻っていき、成果に繋がらないまま、言われた作業を行うだけの道具のような人生に戻ってしまいます。そして、道具は古くなり、使えなくなったら捨てられます。分業化が進み、デフレ経済のなかで単価を絞り込まれた、これまで30年間の職人の働き方はまさに道具のような扱われ方でした。だからこそ、若者に不人気な若手の職人がいない業界になってしまったのだと思っています。職人は自分の意思や意図を表に出すこともなく、道具として扱われるようなクソ仕事から脱却するべきですし、それを支える組織の仕組みが必要です。

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安定、収入、自由、そして学び、能力を発揮できる場所

建築業界の未来にくらい影を落とす職人不足の解消は、若者が、今現在働いている職人達を見て、職人になりたいと思えるような働き方に変わらなければ絶対に叶わないのは自明の理です。内閣府が発表している就労等に関する若者の意識によると、イマドキの若者に受け入れられる職業とは、安定した収入、プライベートが充実していることが圧倒的な割合を占めます。この前提条件を整えた上で、能力を高める機会があり、自立した働き方が出来るような学びの場を提供する必要があるようです。逆算的に考えれば、職人の働き方もこの様に変わらなければならないという事になります。
私たち一般社団法人職人起業塾では、なんのために働くのか?という目的意識や意図を明確にするところから、自分だけ、金だけ、今だけ良ければ良いと考える人には誰も仕事を依頼したくない、その逆の価値観を持つことで人から信頼を得て、仕事が集まってくるとの原理原則論に則った商売観に触れてもらって、自分なりに出来ることに一つずつチャレンジを促す実践研修を行っています。主体性を持って取り組めば、全員が必ず持っている秘めた才能を開花させる事ができます。最近、よく耳にするようになったタレンティズム(才能主義)の考え方に立脚して研修を行っているのです。

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タレンティズムに立脚した組織

話は少し変わりますが、現在、顧問を務めている事業所でビジネスモデルの再構築に取り組んでいます。ビジネスモデルとは乱暴かつ端的に言い換えると「商売の型」であり、事業所の存在価値、そこに所属するメンバーの働く意図と整合しながら持続可能な利益構造を持った方に練り直す取り組みです。

ビジネスモデル:國領二郎の提唱した定義
・誰に、どんな価値を提供するか
・その価値をどのように提供するか
・提供するにあたって必要な経営資源をいかなる誘因のもとに集めるか
・提供した価値に対してどのような収益モデルで対価を得るか

この再構築の取り組みの中で、まず私が行ったのは構成するメンバーの一人ひとりが、どのような意図を持って仕事に向き合っているのか?なんのために働くのか?との根源的な問いかけです。それと同時に、現在の業務内容とのギャップを明らかにし、自分自身の存在価値を自己認識できるような仕事とは、働き方とはどのようなものかを答えてもらいました。そこに出てきた回答は当然、バラバラでまとまりなどありませんが、企業は人なりの原則に立ち返り、一人ずつが納得して、やりがいを持って、顧客に価値提供をしてもらうことこそタレンティズム(才能主義)の発現であり、組織の力を最大化すると考えています。

タレンティズムとキュレーションはワンセット

ただ、個人がそれぞれ好きなことをやるだけでは事業所として成り立ちませんし、組織としてまとまっている意味もありません。大事なことは個々の才能を最大限発揮できる場として機能しながら、組織としての存在意義を見出し、同じ理想、目指す世界観を共有してその実現に向けて協力しあってお互いのパフォーマンスを高め合うことができるかです。その意味では、その事業所ではメンバー個々の仕事に対する思い入れや、それを抱くきっかけになった出来事はそれぞれではありましたが、目指す方向性は間違いなく同じで、理念や理想が全員の公約数として整合していました。
そこで、キュレーションと言われる、それぞれがやりたい仕事、提供したい価値を整理して並べ直すと一本の道が見えてきて、それが事業所としてのビジネスモデルとして成り立つことが明確になりました。
実はこの手法は、一昨年に私が自社内で行ったリブランディングのアプローチの踏襲です。答えの見えない多様性に溢れた現代、個人と組織の両方が存在価値を認め合い、いい意味での相互依存の関係で社会により大きな価値提供を行うにはタレンティズムとキュレーションをセットで行うことが不可欠だと考えています。本当に大きな効果を生み出されるかの検証はこれからですが、人が誰しも持つ大きな可能性を信じる事に立脚した事業構築は必ずこれまでになかった価値を生み出すと信じています。

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