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第5の経営資源

私が経営の勉強を始めたのは、大手ハウスメーカーの下請けの大工の頃、まるで道具のように決められた通りの仕事をするだけでは、いつまで経ってもまともな暮らしができないと気づき、勢いで起業して法人化した20年前に遡ります。その当時は決算書も読めない、キャッシュフローも分からない、事業計画も立てれない、それ以前に、どのように売り上げを作るのか、売り上げの元になる集客の方法さえも知りませんでした。今考えれば、よくそんな状態で会社を立ち上げ、社員を雇用したものだと、恥ずかしいのを通り越して、怖くさえ感じます。

自分でも気づいていなかった経営資源

そんな私が、現場作業を行いながらも必死になって経営の基礎知識を学び、実践と失敗を繰り返して漸く経営を持続させるのに見出したのは原理原則に従った方針と計画、そして行動でした。とはいえ、そもそもただの下請け大工だった私は全くの徒手空拳でなんの経営資源も持っておらず、目の前のことに闇雲に、熱心に、真摯に取り組むしかありませんでした。それでもなんとか20年間事業を続けられているのは、人のご縁に恵まれたとか、時代の波にうまく乗れたとかもあると思いますが、自分でも気づいていなかった経営資源を持っていたのではないかと今になって思うのです。

第五の経営資源

先日も持続可能なビジネスモデルの構築に必要なこととして、5つの経営資源についてのコラムをこのnoteに書きました。一般的な経営資源とは人、金、モノ、情報と言われますが、私はそこに「共感」を付け足して、弱肉強食、開拓して奪い去るフロンティアスピリットに根ざした強欲資本主義から関係資本、文化資本、信頼資本等の人を大切にすることを中心に据えた共感資本主義に世界の価値観がシフトしつつある事例を紹介しつつ、第五の経営資源としました。新型コロナによるパンデミック、それ以前から進行していた急激で圧倒的なテクノロジーの進化で世界は大きな変化を遂げてこれまでの価値観は真逆にひっくり返りました。そのことによって、これまでおざなりになっていた「目に見えないもの」が重要視されるようになり、人と人との関係性の大切さが見直され、良き意図を持った事業に衆目が集まり、応援されて資金が集まるようになりつつあります。今はその過渡期だと私は考えています。

意図こそが力

20年前、私がなんのリソースもないまま起業して、なんとかこれまで経営を続けてこれたのは、間違いなくご縁を頂いた多くの方々の協力と応援です。それまで大手ハウスメーカーの下請け大工として現場作業に勤しんでいて、住まい手の意図が反映されない現場にずっと違和感を感じていました。良いか悪いかさえも考えない、単に決められた作業を早く、簡単にする事ばかりを考える作業員の様な、大工と呼ぶのもおこがましい自分、想いのこもらないモノづくりに段々と嫌気がさして、直接、住まい手の顔が見えて、相手にとって良いこと、喜んでもらえる仕事がしたいと脱下請け、元請け工務店へと変わろうと決意しました。そこには良いことをしたいとの明確な意図がありました。なんの経営資源もありませんでしたが、自分にできる建築の仕事で良いことがしたい、との想いは多分、態度や行動に表れたのでしょうし、それを見たお客様が、一所懸命だけが取り柄の若くて頼りない大工に仕事を頼んでみようと思ってくださったのではないかと、今、当時を振り返ったら思います。そして、それって共感資本ではなかったかとも考えるのです。

人は一人では生きていけない原則

上述したように、コラムで経営資源に5つ目の「共感」を付け足したのは、今の大きな時代の変化を感じて必要だと考えたからです。しかし、本来それは、経営者でなくても誰しもが持っているもので、新しく追加したというよりも、原点回帰ではないかと思うのです。人は誰しも良心を持って生まれてきており、それが消え去ることはありません。情報革命が本格化し、世界が大きく変容した今の時代は誰もが批判的な視点を持てる様になりました。何が本当かが分かりにくい複雑な世の中になりましたが、それは同時に多様性を認め合いながらお互いの議論を重ね、成熟する方向へも進んでいます。多種多様な才能を生かし、協働し、共生するタレンティズム(才能主義)の時代にこそ、誰しもが持っている経営資源である共感する、共感される力を発揮すべきだと思います。人は一人では生きていけない、誰かの助けや協力を得て生きていけるとすれば、事業もまた、その人格、意図に対して手を差し伸べてもらえるようになるべきだと思うのです。

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四方良しの世界の実現を目指しています。


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