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それ、ビジネスモデルの問題です。

コロナ第7波が盛り上がっている真っ最中ですが、東京、ビックサイトに来ています。リフォーム産業フェアにてセミナーの依頼を受けたのと、現在進めている新しい職人育成の高校設立に向けて全国に協業事業者を募る目的で一般社団法人職人起業塾として3年ぶりとなるブースの出展をしています。

誰もが危機感を抱いている職人不足問題

人材EXPOなるコーナーで職人不足の根本的問題解決を提言して、職人を育てる高等学校の仕組みを説明するブースには旧知の全国の建築事業者の方々が次々に訪れてくれて、多くの方に共感頂きました。皆さん共通して工事を受注しても職人不足で着工できない、もしくは工事が進まないと嘆かれて居られて、職人育成の重要性については充分認識をされておられました。しかし、職人になりたい若者がいない現実と、採用しても職人の教育をどのように進めたらいいのかわからないと、話される方が多くおられ、我々の若者のニーズを掘り起こし、伴走型の丁寧な教育、育成を行う事業に対する大きなニーズを感じることができました。シンプルで分かりやすく、成功イメージのつきやすいスキームを組み立てることで建築業界に新たなムーブメントを起こせるような予感たっぷりの出展となりました。

長年解決出来ない5つ問題

セミナーへの登壇では「現場の士気を上げる、マネジメントの決定版」といったようなお題をもらっていたのですが、人材の採用、育成から事業の目的を達成できるようになるまでの構造についてのお話と、その最も重要な人材育成(教育)と人が育つ仕組みづくりについてを中心にお話しさせてもらいました。冒頭にオーディエンスの人たちに聞いてみたのは、建築業界が抱える問題についてです。日本全国どこでも同じ質問をするのですが、帰ってくる答えは大まか同じで、1、若手人材不足。2、職人不足。3、ブラック、グレーな労働環境。4、将来の受注に対する不安。5、事業承継のめどが立たない。の5つに集約されます。長年、同じ問題を抱え続けてきた建築業界ですが、実はこれらの問題は1つに集約されると考えています。それは、ビジネスモデルの問題です。

ノンストック型ビジネスモデル!?

建築請負業と言う業態は、一件あたりの単価は非常に大きなものですが、それを毎年つなぎ合わせて年間の売り上げを作り上げるスタイルの会社がほとんどで、新しい期になるたびに1から売り上げを作っていくことになります。もちろん、受注残や着工残で1年ほど先まで工事の予定を立てられる会社はありますが、それでもその先の売り上げ見込みは外部環境に非常にされやすい事もあり、不透明感を感じ、不安を抱えられている会社がほとんどです。先々の見通しが立たない、目先の売り上げ利益を求める会社に本当の意味で人材の育成はできません。完全法適合の人事制度の策定や運用、それに基づいた採用や教育、特に繁閑が激しい状態では職人を抱え込む雇用や育成は未来への投資であり、未来の売り上げに自信がない会社にはそこに注力するのは難しく、まず収益構造から見直す必要があります。これが問題はビジネスモデルにあると私が申し上げた理由です。本来、地場産業の最たる事業であるはずの建築業界はストック型モデルになって安定的な収益をあげられるようになるべきですが、そうなっていないのが実情です。

大工の人口推移 出典:国土交通省

誰も解決出来なかった職人不足問題

長年に渡って問題視されてきた建築業界の職人不足問題は国交相をはじめ数多くの機関や団体がその改善に取り組んできました。しかし、それらは全て全く功を奏する事なく、職人の減少は年々酷くなり続けてきました。結局、誰もその根本的な問題に目を向ける事なく、表面的な対処に終始して失敗、問題解決に向けたロジックを組み立てられませんでした。大工だけに特化すると、1985年に80万人近くいた大工は2020年には20万人を切り、このままの推移を続けると2030年にはほぼ絶滅してしまうほどの惨状です。ここまでくると職人不足自体が問題なのではなく、その大元になる建築業界の構造、ビジネスモデルの問題なのですが、気づいてか、気づかないのか誰もそれを声高に叫ばれることはありませんでした。一般社団法人職人起業塾の活動は創業以来、職人育成とマーケティング理論、人を育てるための人事制度を一元化して提供してきましたが、ここにきて漸くその重要性に気づかれる経営者が増えてきたように感じています。

新しい時代に対応する新しいビジネスモデル

岸田総理が首相就任時の演説で「新しい資本主義」との単語を口にされました。全国民が投資、資産運用をするようにと、的外れな政策を打ち出されてしまい、残念な感も否めませんが、「市場で解決できない外部性の大きな社会的課題について、この課題をエネルギー源と捉え、新たな成長を図ります。」との就任時の弁は的を得ていたと思っています。その言葉は要するに、事業所は社会の公器であり、事業の目的は世の中の課題や問題の解決に寄与して人に喜ばれるべきとの原理原則への回帰です。ごく当たり前のことではありますが、そんな意識を持って事業を営まれている経営者が少なかったのが建築業界に人がいなくなりつつある根本原因です。職人不足問題の前に、まず地域に根を張り、収益ばかりを囚われる事なく、地域貢献、社会貢献に繋がる事業を本業で取り組めるような構造改革が必要だと思うのです。地域に愛され、認知が広がり、紹介やリピートで必要量の受注が図れるようになれば、販促や宣伝をしなくても持続的に事業を続けられる状態になります。職人育成という未来への投資を行うにはまずその収益構造の転換が必要なのです。

今ならギリで間に合う可能性があるかも

以前のnoteにも書きましたが、問題解決は根本の問題に目を向けないと表面的な対処に終わり、結局同じ問題を繰り返す結果を呼び込みます。職人不足がこのまま進み、5年後に今活躍している50代〜70代の職人が一斉に引退すると全国的に建築業界は立ち行かなくなります。そうなる前に対応しなければなりませんが、根本的問題解決にはそれなりの時間がかかるもの。ビジネスモデルの転換、ガバナンスの整備、その先の職人育成を考えれば今直ぐに取り掛かってギリギリなんとか間に合うタイミングだとお伝えしていますが、真綿で首を締められても、ぬるま湯から茹でられても痛みを感じるまで人は動こうとしないもの。今回の展示会でのブース出展とセミナーの登壇で少しでもそれ気づかれ、アクションを起こされる方が居られたらと思いながら熱く語っています。ちなみに、セミナーでは理解しきれない部分をじっくりと話を聞きたいと言われる方向けに毎週月曜日にオンラインでの事業説明会も行っています。ご興味を持たれた方はお気軽にお申し込みを頂ければと思います。職人問題の根本的な問題解決へのアプローチ、熱くお伝えします!
お申し込みはこちらから!

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