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目指すのは効率ではなく効果性の拡大

令和3年3月13日 雨のち曇

九州3days最終日

九州出張3日目、一昨日はみやま市での講演、昨日は薬院のPanasonicリビングショールームのビルの会議室で第17期職人起業塾の第4講の講義を行い、今日は一般社団法人職人起業塾主催の職人のキャリアパス構築の為のワークショップを開催。3日続けて講演、研修、WSを行うと流石に少し消耗した感が否めませんが、それぞれ、それなりに手応えが感じられるとても良い九州巡業になりました。どうしても活動の中心を置いてしまう私の地元、関西だけではなく、九州でも志の高い経営者とのご縁を頂けており、確実に若い職人を採用、そして育成出来る素地が整いつつあるの感じて嬉しく思っています。

根本的解決へのアプローチ

この3日間、話をする対象やテーマは少しずつ違えども、共通して私が訴えて来たのは、「建築業は完工無くして売り上げ無し」の大原則から、以前から業界全体の問題ちして危惧されている職人不足が深刻な影響を与え始める前に若手職人の育成に取り組むべきで、若者に不人気な3K職種、親御さんに泣いて止められる様な職業から建築職人という働き方を脱出させるべく根本的な働き方の改革を推し進めるアプローチが必要だと言うことです。職人さん向けの講演では、決められた内容の作業手順を踏襲するだけではなく、もう一歩踏み込んだ仕事への変容を、実務者向け研修では君達の働き方が業界に未来を決めるのだ!と今まで行って来なかった事へのチャレンジを促しました。経営者向けのWSでは、実務者が未来を見れる道筋を示す人事制度の改革と、その実現の為のサポートを強くお願いしました。

効率ではなく効果を目指せ

今日の人事制度革命のWSで最後にこれだけは胸に刻んで貰いたい。と参加者の皆様にお伝えしたのは、改革を進めて目指すのは決して効率化ではないという事です。私達経営者が目指すべきは、人がひとりいる事の効果性を最大限に高める事であるべきで、できる限り無駄を省き上手く、早く、安くと言ったシェアを取る事で業績を作る大手とは全く逆の価値観を持って、一手間をかけて、美しく、じっくりと時間をかけた分の適正価格を理解してもらえるような仕事に仕事をするべきだということです。効率と効果を同義語のように思われている方もおられるようですが、私としては全く逆の概念だと思っていて、効率を追い求める事は結局表面的な目先の損得に振り回されがちで、効果性を高めるアプローチは、時間がかかっても本質的な価値創造を目指す取り組みだと思っています。

置き去りにされた効果性

事業所の存続に欠かせない最も重要なのはキャッシュフローでありその元になる売り上げです。売り上げとは、どのような業種業態であっても「顧客数×単価×購買頻度」で表すことができ、最もわかりやすく、誰もが売り上げを上げようと思う時に注目するのは顧客数の拡大です。昨今ではすっかりインターネットやSNSの使い方が新規客数獲得の方法論として定着してしまっています。本来、キャッシュフローの観点から見ると、売り上げよりも利益率を決定づける単価の方が重要なファクターですが、常に競合他社との比較にさらされる現在、単価アップは他社にない強みを持つ必要があり、なかなか簡単にはいきません。購買頻度に関しては、同じ顧客から信頼を得て繰り返しの注文をもらうことでライフタイムバリューの獲得ができるのがそもそもの考え方ではありますが、建築業界ではそのサイクルが15年から20年と非常に長いこともあり、目の前の工事をできるだけ短い期間で終わらせて、次々と新しい現場に取り掛かり回転数を上げる事に取り込む事業所が非常に多いです。要するに、効率だけを追い求め、効果性の観点での業務の改善をしてきませんでした。

効率化は幸せを作らない。

近代社会になって産業革命が起こったのを皮切りに、人間は効果性を高め続けてきました。しかし、電動ノコギリを使うようになった大工の稼ぎが昔に比べ高くなっていないように、自動結束機を使うようになった鉄筋工が高い道具を買うぐらいしか儲けの上積みは無いと言うように、アマゾンですぐに本が届くようになったけど、人の読書量が増えることがないように、メールやチャットやLINEなどコミニケーションツールは増えても人と人との絆が深くなったりしないように、効率は結局、表面的には便利で早くて安上がりで良いことばかりに思いますが、人の暮らしを豊かにしたり、幸せにするものではありません。最先端の道具を手段として使う事はもちろん良いことだと思いますが、それを使って本質的な価値向上である効果性を高める取り組みにつなげるべきだと思うのです。効率を求め続けた結果、日本の住宅はロクでもないと海外から批判を受けている現状に陥ったと思っています。

人の可能性を信じること

私達、一般社団法人職人起業塾が行なっているのは、職人をはじめとする実務者向けの研修事業然り、実務者のキャリアプランを構築する人事制度改革のワークショップ然り、現場改革担当顧問として実務者とのコーチング然り、全て効率ではなく効果性を高める為の取り組みです。どれもすぐには結果が出る訳ではなく、地味で地道な取り組みではありますが、大地に種を蒔き、水をやり雑草や害虫を取り除きながら大切に穀物を育てる様に、丁寧に取り組めば必ず成果を手にする事が出来ると信じていますし、実際に成長した人材が活躍してくれる事で大きな効果を上げた事例は既に枚挙にいとまがありません。それは、決して私の功績などでは無く、効率を追い求めるのでは無く人の可能性を信じて人の持つ効果性を高める事が事業所の地力になる事を理解されている経営者の思想と理念、在り方が生み出した結果だと思っています。コモディティ化が進むスピードが速い時代こそ、効率ではなく効果性を高める事に重心を置いた経営判断が必要だと思うのです。

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